7話 限界の一撃
いつもの特殊訓練場が狭く感じる。
今訓練場には俺ともう1人しかいないのに。
もう1人はとんでもない威圧感で仁王立ちしている。
身長は190はありアロハシャツにサンダル、サングラスをかけており、特徴的な狼の様な髪型をしている。
最終試験を言い渡され訓練場で待っていると、この人が後から入ってきた。
「神城。最終試験を開始する。」
鷹見さんの声が聞こえる。別室で見ているのだ。
「試験内容は目の前の男と戦うこと。そいつを倒す。または訓練場からの脱出が合格条件だ」
この人を倒す...?俺よりも身長も体格も大きいこの人を?
そしてなにより俺の目に嫌なほど見えている
《th△pwad》が歪んでいる。
アルファベットってよりバグ?なんなんだこれ
「さて。始めようか。」
大男の一言で最終試験が始まった。
「ガッハッハ!逃げてばかりでは合格できんぞー!」
一目見た時からわかっていたがこの人を倒す事は不可能だ
開始と同時に脱出口まで走ったが大男に止められそこからは攻撃を避けるので精一杯だ。
「よく避けるの〜。もう少しスピードアップするか」
「グハッ」
さっきまでの攻撃よりも速い拳を1発顔面にもらう。
「ガッハッハ!どうする小僧」
正直絶望的だ。相手は全てが俺よりも格上
逃げ道は1つ。そこを守られてたらなす術がない。
俺は特訓を思い出しながら思考を巡らせた。
「うおーー!」
大男に向かっていく
「特攻か。つまらんなー」
狙い通り俺の腹に目掛けパンチを繰り出す。
(避けれる。けどここはあえて…)
横腹に衝撃が走る。
痛みで意識が飛びそうになる。
「あ、やりすぎたか?」
意識を保ち
足を止めずそのまま股下を駆け抜ける
「やるな!」
ヨシっ!いけた!後はそこまで走るだけ...
空気が歪んだ。
フィールドが展開されている。
少し後ろにいたはずの大男が目の前にいる。
少しだけ毛が伸び白くなっている。
爪もかなり伸びて鋭利な刃物の様になっている。
「やるじゃねーか。だがここまでだ。」
伸びた爪でチョッキごと切りさかれる。
「グハッ。」
体に3本の爪傷を負う。
血がポタポタ落ち呼吸が荒くなる。
どうしたら、何かないのか。
前の大男の順位を確認しようとする。
激しい頭痛と目が熱くなる。
今までと違い一瞬しか見えなかった。
《9》
——シングル。
絶望の2文字が浮かぶ。
満身創痍にシングル相手。ほぼ合格の芽はない。
俺の心は折れる寸前だった。
(これで、あのクソみたいな何もない日常に戻るのか。霧島、風間さん牧さんにあんなにお世話になったのに。すいません。みなさん。)
「終わりだな。期待ハズレだったな。」
痛みと頭痛で意識が消えかけた俺に拳が迫ってくる。
その瞬間
俺は脳内で語りかけてきた声を聞いた。
(透——)
世界が、ゆっくりと流れ始める。
音が遠のく。
呼吸がはっきり聞こえる。
すべてが、見える。
俺に向かってくる拳も周りの空気の流れも。
向かってくる拳を片手で流れを変えて受け流す。
姿勢を崩した大男に
力を振り絞りパンチを繰り出す。
拳は、確かに当たった。
ドンッ——と鈍い音が響く。
骨に響くほどの衝撃が、拳から伝わった。
大男の体が、ほんのわずかに揺れる。
「……お」
「やるじゃねえか」
その一瞬を見て、俺は——限界を迎えた。
視界が揺れ。足に力が入らない。
そのまま、膝から崩れ落ちる。
意識を失って出血していたが傷は見た目より浅かったらしい。
すぐに治療室に運ばれてひよりさんによって治療された。
「やっぱり折れなかったな」
「彼にはこの程度で折れてもらっては困ります」
「レクトルがどう動くかな」
「どう動こうが——我々が勝ちますよ」




