6話 最終試験前夜
「よく見るんだ!目を背けず!」
石礫が弾丸みたいな速度で飛んでくる。
たまに擦り痛みが走る。初めのうちは痛みで身体が止まり全弾被弾するという悲惨な目に遭っていた。
「くっ!ふっ!」
1ヶ月ほど牧原さんとの能力特訓を行い痛みに慣れつつ前を見て避ける事ができていた。
「よし!ここまでにしよう!お疲れ様神城。」
「ふぅ。被弾は1発。…まだ当たってますね。」
「最初に比べればかなり成長したよ!もう回避訓練は合格だな。」
牧原さんからの合格判定をもらいガッツポーズで喜ぶ。
「ありがとうございます!牧さん!」
「合格祝いに飯でもいくか!」
「行きます!」
公安に入って2ヶ月が過ぎようとしていた。
最初は霧島との近接訓練がメインだったが
入隊訓練
近接訓練
回避訓練
と順調に終わり最終試験を合格すれば晴れて任務に着けるということになっている。
牧原さんは前回の特訓から今の回避訓練合格まで気にかけてくれて、公安では兄貴の様な存在になった。
霧島は遠距離の攻撃に不向きであり回避訓練は牧原さんが立候補してくれたらしい。
「どうだ。神城、最終試験だが心の準備はできてるか?」
湯気の立つラーメンを啜る音が、妙に心地よかった。
「牧さんがこの1ヶ月みっちり特訓してくれたんでいける気がします!」
「ふ。俺は少し手伝っただけだ、本当に努力したのはお前だ自信を持て」
「ありがとうございます!」
早くに両親を失い兄妹も居なかった俺には牧原さんが本当の兄貴の様だった。
「どうして牧さんは俺にこんな良くしてくれるんですか?」
「ん?どうしてか。」
「俺が公安に入った時は風間と一緒だったし、俺にはやる理由があった。でも神城。お前は突然1人で入れられて腐ると思ってた。実際食堂で話した時は公安に入る前の俺の様だった。」
「誰にも何にも頼れず力もない。そんな様子に最初は同情だったが、今は弟の様に思ってる。」
「牧さんが公安に入る前...?」
「そう言えば話したことなかったな。気持ちのいい話ではないしこんな所で話す事じゃない。また今度話すよ。」
そう言いながら箸を持つ手が、わずかに震えていた。
箸が折れんばかりの力がこもっていた様に見えた。
「そ、そうですか。また教えてください。」
「ああ。そんな事より神城の最終試験だがどんなのだろうな。」
「牧さんも知らないんですか?」
「ああ。基本訓練は内容も合否も教官による。だが最終試験だけは鷹見さんが考えて合否基準も不明だ」
「そうなんですか。ちなみに牧さんのはどんなのだったんですか?」
うっ。少し苦しそうな表情で
「あれは悲惨だった。岩鎧を纏ったまま1時間以上攻撃を受け続けた。何度か鎧を解くかギブアップをするかを迫られるんだ。俺は1時間耐え切った。」
「ええ。鷹見さんって鬼なんですか。」
「俺の場合は能力的にも限界値が知りたかったんだろう」
試験を受けてもいないのに少し嫌になってくる。
「わからない事を考えても仕方ない!これ食って今日は寝ろ!」
「そうですね。ごちになります!」
牧原さんと別れ公安の社宅に着きこの2ヶ月を思い出しながら——何も知らずに、俺は眠りについた。
2日後——最終試験が言い渡された。




