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第65話 嵐の後

部屋には凄まじい轟音が鳴り響く。

武器が宙を舞い、風とぶつかり、地面に落ちる。

風間は戦いを楽しんでいた。


「ハハハ!こんなおもろかったんやな!自由にやるんは!」

笑いながら風の武器をアルマに飛ばし続ける。


「くそ、なんなんだこいつは」

飛んでくる風の武器を、刺さっている武器を飛ばし相殺する。

始めの数手はアルマが攻勢に立っていたものの、10手を過ぎたあたりからアルマが劣勢に立たされている。


「この重さならどうだ」

アルマは武器の中でも最も重量のあるハルバートを2本風間に向け飛ばす。


「重けりゃええってもんちゃうで!」

風間の風の武器がアルマのハルバートへ向かう。

当たっては消え、また当たる。

迫り来るハルバートへ10回ほど風を当て、勢いを完全に殺す。


勢いを失い地面に転がるハルバート。

アルマは再びハルバートを引き寄せ自身の周りに浮かせておく。

アルマの能力は武器の操作であると風間は考えた。

なので距離を取り接近戦を避けて球数での勝負に持ち込む。


アルマはデウスからの情報で風間凌は決め手に欠け、相手の能力を測るために小技での牽制が多く慎重な男と聞いていた。

しかし目の前に現れた風間は別人であった。

常に全開で能力をぶつけ、戦いながら笑う狂人だった。


「デウスめ。情報と違うじゃないか」

適当な武器を飛ばしながらアルマはぼやく。


「自由になったからな!」

飛んでくる武器の倍ほどの風の武器、風刃をアルマへ飛ばす。


「全く。めんどうだな」


ポケットに入れていた手を出し、近くの刀を握るアルマ。

向かってくる風刃を全て斬り割く。

右手に刀、アルマの背後に、槍、ハルバート、剣、刀、が浮かぶ。


「こっちの方が早いな。やっぱり」


刀を握る手を見つめ握り直す。

風間へ目をやり、駆ける。


「接近戦はダメだろう」


「あかん!来んなよ!」


焦る風間が放った風刃と、風の武器はほとんど外れる。

当たる軌道のものは、アルマに切り裂かれる。

その勢いのまま、アルマは斬りかかる。


「もらった!」

「なにをや!」


アルマの剣が止まる。

風間の手には、風の剣が握られていた。

鍔迫り合いになり、お互いの顔が近づく。


「もろたんはこっちやで!」


風間は武器を破裂させ、アルマは突風により後方に飛ばされる。

間髪入れず風間は風の武器を飛ばす。

先ほど放っていた、風刃と武器が弧を描きアルマの背後を襲う。


「キリがないな本当に」


正面と背後からの攻撃を宙に浮かせていた武器を回し弾く。


「なんやと!?やるな自分」


「一気に終わらせてやろう」


浮いていた武器を地面におろし、持っていた刀を手放す。

部屋の奥に飾られていた3本の剣、2個の鉄球が浮かび上がりアルマの元へ。

3本の剣は両刃のロングソードで、1本はアルマの手に握られ、残りの2本は鉄球とともに宙に浮かぶ。


「たいそうに飾られてたけど、使うてええんか?」


「俺が鍛えた剣をいつ使おうが俺の勝手だろう」


鉄球はとてつもない速度で、風間へ向かう。

風間は風による撃墜は、間に合わないと感じ風の障壁を作る。


「そんな薄い風で何を防げるのだ」


鉄球は容易く障壁を破る。

破られるのは分かっていた風間は、風を纏い鉄球を躱す。


「何でできてんねんその球ぁ!」


躱した先へ追いかけてくる球に風刃を飛ばす。

少し勢いが弱まった。

何発もの風刃を放ち、ようやく目の前で止まる。

鉄球はアルマの元へ戻っていく。


「なんなんやお前のその弾!硬すぎるやろ」


「これは俺の生み出した斬鉄から作った武器たちだ」


アルマの能力は自身が生み出した特殊な鉄(斬鉄)を操る能力である。武器などの無機物は、鉄粉を付けるだけで操作が可能である。

斬鉄の粉が付いているだけの武器は一度操れるのみだ。

しかし斬鉄の純度100%の武器に関しては何度でも操れ、速度、重さも自由自在なのである。

そしてなにより、純度が高いものを操る時ほど体力を消費せずに操作できる。


「これを出した時点でお前に勝ち目はない」


アルマの周りを飛ぶ剣と鉄球。


「やってみなわからんやろ」


風間は暴風雨の如く、風刃、風の剣、槍、弾、竜巻をアルマに向け放っていく。

アルマは動くことなく、2本の剣と2つの鉄球のみで風間の放った全てを叩き落とす。


「まじか」


風間の額にたらりと汗が伝う。


「次はこちらからいくぞ」


アルマの剣と鉄球が風間へ向かう。

鉄球は風刃で勢いを殺し、剣は風の剣で受けるが、一度受けただけで風の剣は消されてしまう。

そしてアルマ本体が剣戟を浴びせてくる。


「くそ!」


風間は徐々に押されはじめる。

受けるたびに傷が増えていく。

剣に斬られ、鉄球が掠り、肉を抉る。

風間はみるみるうちに傷だらけになり、血を垂らす。


「10手も持たなかったな」


3本の剣の切っ先をこちらに向け、風間へ言い放つ。


「俺は負けられへんねん」


風間は胸の前で両の手を合わせる。

周りに吹き荒れていた風が、全て止まる。

完全なる無風。少し空気が重くなる。


「何をする気か知らんが、すぐに殺す」


剣が風間へ向かって放たれる。

心臓を狙った剣は風間が纏っていた風に少し逸らされ左肩へ、もう一本は右腹部へ深々と刺さる。


「グフッ。」

風間の口から血が出る。


「嵐の後は静かやで」


風間は両手を少しずつ開く。風の球体。

一瞬で大きくなり風間とアルマを包む。


「なんだこれは」


持っている剣で斬ろうとするが弾かれる。


2人を包む風の球体の中でアルマは違和感を覚える。


「!?」


風間がニヤリと笑う。

アルマは何かを言おうとしたが、口だけが動いて声は出なかった。

球体の中から、空気の流れが消える。

いや、空気そのものが薄くなっていく。

アルマの口が、酸素を求めて開閉する。

アルマは地面に倒れ気を失う。

倒れ込んだのを確認してから、球体を解く。


「はぁはぁはぁ。ギリギリやった」


アルマが倒れたことで風間に刺さっていた剣は重さをなくし、抜け落ちる。

そこから血が溢れる。

「このままやと、すぐ牧ちゃんのところやなぁ」

ふとポケットに手を入れると、何かに当たる。

ひよりが作戦前に全員に支給していたものだ。

「傷があるときに迷わず使ってください言うてたな」

小さなボトルに少し入っている緑の液体。

それを剣が刺さっていた箇所に掛ける。


みるみると傷が塞がっていく。

2箇所の傷を塞ぎ、風間はそのまま仰向けに倒れる。


「牧ちゃん、そっちに行くんはまだ先になりそうやわ」

天に向けてポツリと呟く。

凌はまだまだそっちにいろ!と牧が自分を叩いてる姿を想像し、風間は少し目を瞑る。




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