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第59話 分断

——木々に囲まれ、奥には日の光も差し込まない樹海の奥深く。そこは自ら命を断つ者が頻繁に訪れると言われ、迷ったら最後、亡者に引き込まれる。

そんな樹海に、俺たち公安は来ていた。


「本当にこんな所にアジトがあるんですか」


木々を掻き分け獣道を踏み締め、真さんを追いかける。


「黙って付いてこい」


樹海をずいずいと進む真さん。

先頭には真さんが、その後ろに俺がついていく。

俺は後ろの皆ができる限り歩きやすいように、道を広げる。


少し後ろを鬼塚さん、カナ、北見さん、ひよりさん、風間さん、鷹見さんの順で歩いている。


——公安会議室


「真が見つけてきてくれた情報によるとここから離れたある樹海の中にアジトがあるらしいです。罠である以上戦力を分散するのは悪手です。目立ちますが、固まって行動しましょう」


「私が殿で結界を張りつつ移動します。真、神城くんは先頭で案内をお願いします。あとは白宮さんを守る形で配置をしてください」


「私が横に行くわひよりちゃん」

「蓮司さん!よろしくお願いします」


「さて、あとはその時に応じて言いますが、何があってもいいように各自に無線、GPSを所持してもらいます。特に転移石のようなものがレクトルに存在しているようなので転移には注意してください」


——本部での会話を思い出しながら樹海を切り拓く。

真さんは木々を最小限に躱しながら真っ直ぐ進むため、俺がそのたびに枝や葉を取り除く。そうして30分ほど歩いた時、真さんが止まる。


「あそこだ」


真さんが指差した。

俺の目には念入りに隠されたハッチが見える。


「着いた?」


後ろから追いついたひよりさんが顔を覗かせる。

最後尾の鷹見さんまでが着いていた。


「そうみたいです」

「鷹見どうするんだ」

真さんが鋭く鷹見さんへ問う。


「まずは真、神城くん、風間くんで入っていただき、何もなければ私達も入ります」


「分かった」「了解」「了解っす」


まずはハッチを開け、真さんが素早く突入する。

その後に俺と風間さんも続く。

ハッチは階段ではなく滑り台のようになっており体を飛び込ませ滑り降りる。


しばらく滑り降りた。

目の前には公安のブリーフィングルームと同じかそれ以上の広間。

中央には石碑のようなものがある。

俺の目に敵は見当たらない。

真さんが風間さんに合図を送り、みんなが降りてくる。


「広いわね〜ここ」


ひよりさんは好奇心いっぱいに周りを見渡す。


「ひよりさんあんま遠く行かんといてください!」

風間さんはひよりさんのお守りをしている。

ひよりさんには朧さんも付いているがみんなには伏せている。


他のメンバーで中央の石碑を囲む。


「なんて書いてあるんだ?鷹見」

豪さんが鷹見さんへ問いかける。


「これは…」

鷹見さんは石碑を見て書いてある文字を読む。


——"It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change."


「最も強い者が生き残るのではない。最も賢い者でもない。変化に最も適応できる者が生き残る……」

「黒瀬博士が好きだったダーウィンの進化論。間違いなさそうですね」


「進化論ね。崇拝してたのかしら?」

北見さんは両手を前で組みながら質問する。


「そういう訳ではありません。ただ変化を恐れる現代を嫌ってはいましたね。自分の野望のために人間の脳を変化させるくらいですから…」


「ここから先は俺にはわからないぞ」


真さんが全員に向けて言う。

鷹見さん以外が前で腕を組み、悩んでいる。


「その心配はなさそうですね」


ガコッ。と石碑が開く。

中には部屋の地図のようなものがあり、

大きな部屋の正面、左右に矢印が伸び一定の位置に円がある。


「三方向へ分かれろ、ということですか」


鷹見さんが顎に手をやりながら編成を考える。



「やっぱり罠だったか」

と真さんが言う。


「そのようです。そのうえで私たちを分断しようという考えのようですね」


「本当に分かれちゃうの?罠なんでしょ!?」

ひよりさんが心配そうな顔で全員に問いかける。


「入り口はもう塞がれているでしょう。前に進むしか我々に道はなさそうですね」


鷹見さんが考えた結果

正面に鬼塚さんと北見さんと風間さん。

右にひよりさんと真さん。

左に俺とカナと鷹見さん。

の配置になる。


それぞれが分かれ円の位置に着く。

足元に魔法陣のようなものが現れる。


「みんな!絶対に死ぬな!全員無事に本部へ帰還すること!これは本部長命令だ!」


豪さんが全員に向けて放つ。


「「「了解!」」」


返事と共に全員光の中へ消えていった。


次に目を開けると、俺たち三人は道場のような場所へ出る。


「ここは…アジトの中なのか?」


周りを見渡していると正面の空間に亀裂が走る。


「なんだ!?」

俺とカナは臨戦体勢を取る。


目の前に現れたのは霧島一輝、そしてもう一人は皇邸襲撃で報告にあった使用人のようだ。


「カナ。迎えにきたよ!僕が守ってあげるからね!」

優しく語りかける。能力に呑まれる前の一輝のようだった。


「一輝。戻ったのか…?」

カナは希望を抱き、問いかける。


「そうだよ!僕が当主になって…」

下を向く一輝。


「どうした!?一輝?大丈夫か!?」


「クックック。ハハハハハ!滑稽だな!!カナぁ!」

再び前を向いた時には顔には紋様が浮かんでいる。


「貴様ぁ!!一輝を返せ!」


激昂するカナ。


空間が歪み。

一瞬遅れてフィールドが展開される。


「弱いこいつが悪いんだよ!ここでお前を殺して完全にこいつの心を壊す!」


赤刀が姿を現す。赤黒く禍々しい。


「ソルス。私は眼鏡の方の相手をすれば良いのですね?」


横の使用人が一輝に話しかける。


「あぁ。あの小さいのはデウスのお気に入りだからメガネをお前にやるよ」

「やると言われましてもあなたのように戦闘狂ではないのですが…主の命ですからね」


やれやれと言いながら手にレイピアを握る。


「神城くん。どうやらあなたは戦闘対象ではないようですね」


鷹見さんの前で、カードが静かにスプレッドする。


もう一度空間が歪み、そこからエゴが出てくる。

「お前、こっち。」

「来ないと、他の仲間。死ぬ。」


「他の仲間…?」


そこには、別の部屋に飛ばされた鬼塚さん達、真さん達の姿が映っていた。

それぞれの前には、すでに敵が立っている。


「こいつら。分断して。一人一人。殺す。」


「卑怯な…。」

唇を噛み締める。

「…分かった。行くよ」

「こっち」


新しく開いた空間の奥に[Spes]が見える。

奥から母さんの声が聞こえた気がした。


「神城くん。罠です。私たちが彼らを倒すまで待ってください」

「そうだ!透。一人で行くな!」


鷹見さんとカナの制止を振り切り、


「俺が、俺にしかできないことを終わらせてきます」


覚悟を決め、エゴの空間に入る。


——世界の命運をかけた戦いが今始まる。


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