第55話 風間凌
——公安本部長室
「ソルスに、天樹。レクトルの幹部も着々と増え、力をつけているということですね」
椅子に腰掛け、鷹見が頭を抱えながら呟く。
「それに狙いは皇様であった。本当に間に合ってよかったです」
「間一髪だった。玄武一人では限界がある。そこで北見と風間を付けようと思っている」
ハッと驚き鬼塚を見る鷹見。
「それではこちらも守りが薄くなります。神城が狙われる可能性を、我々はまだ捨て切れてません」
「分かっている。しかしこちらには俺もお前もいる。あちらには北見に行ってもらうのが1番だ。それに風間の修行に玄武はかなり合うと思う」
またしても頭を抱える。
しばらく考えた後にため息をつき、
「分かりました。2人には明日から皇様の護衛に回っていただきましょう。どのみち真からアジトの情報が降りてこない限り我々から動くことはできませんしね」
「そうだな」
その後、北見、風間の2名が本部長室に呼び出される。
「豪ちゃん、改めてどうしたの?凌ちゃん修行の件?」
北見は座ると同時に話し出す。
「確かに、ちょっと苦戦してるわ!でも私がもっと強くしてあげるから安心し…」
鬼塚は北見の前に手の平を突き出し、喋るのを止める。
「違うんだ。聞いてくれ」
鬼塚は2人に霧島家のこと、皇邸でのことを話した。
その上で依然狙われる可能性のある皇邸での護衛を任せたいと伝えると
「まぁ!あの皇様のお家に行けるの?私たちはぜひ行きたいわ!ね?凌ちゃん!」
北見は風間の背中を叩きながら同意を求めている。
「はは。そ、そうですね!是非!豪さん」
風間は笑いながら頷く。目は笑っていない。
「ありがとう!2人とも!向こうの護衛は1名だけだ。そいつは俺の元同僚だ」
「玄武ちゃんかー。もしかしたら凌ちゃんの修行も付き合ってくれるかもよ?」
「ほんまですか?それは楽しみです!」
こうして2人の皇邸への派遣が決まった。
——皇邸
「今日からこちらでお世話になります。北見です」
「同じく風間です。よろしくお願いします」
「はいはい。鬼塚様から聞いてますよ。私この家の管理を任されております丸岡と申します。分からないことがあれば私に聞いてください。そして、こちらが」
「鉄堂だ。よろしく頼む」
「久しぶりなのに冷たいじゃない玄武ちゃん」
「北見、相変わらずだな」
「それでは早速主様にご連絡致します」
サッと後ろへ下がり、内線を掛ける。
見た目の年齢からは想像できない動きだ。
「鉄堂さん!俺の修行見て欲しいんです!」
「私からもお願いするわ玄武ちゃん。私じゃこの子の力を引き出せてないのよね…」
悲壮感の溢れる顔だが玄武は嘘と見抜いている。
「俺は修行をつけれるような人間ではない。手合わせならいつでもできるが」
「なら手合わせを!」
「皇様への挨拶が終わればな」
「よろしくお願いします!」
風間は焦る。
神城、霧島の成長を聞き、自身の不甲斐なさに怒りを感じているからだ。
(俺は何やってんや!あいつらは常に成長しとる。俺も!牧のために自分のために。)
皇への挨拶が終わり、地下の訓練場へ行く。
皇が玄武のために作らせた訓練場である。
玄武と向き合う風間。
「遠慮なく来い」
玄武は構える。
空間が歪む。
一瞬遅れてフィールドが展開される。
「行きます!」
玄武の前に盾が並ぶ。
風刃を放つ。
玄武は盾を飛ばす。
1枚の盾が全ての風刃を弾く。
すかさず竜巻を発動させ四方八方からの風刃。
その全てを4枚の盾に防がれ、玄武は竜巻を裂くように盾を竜巻に刺す。
風の流れが止まり竜巻は消えてなくなる。
「さすがに…つよい」
「これが全力か?」
風を纏う。
疾風の如く加速する。
盾の隙間を縫うように近づき、右拳を放つ。
パシッ!!
最速で出したはずの拳は玄武の左手に掴まれている。
「んな、アホな…」
「速さは認める。だが軽いな」
掴んだまま風間の身体ごと回し、ぶん投げる。
空中で風のクッションを作り減速し激突を免れる。
「風間…と言ったな。お前の一番はなんだ」
「1番…?速さ…ですかね」
「真に勝てるのか?」
「それは…勝てへんと思います」
「ならお前の1番はなんだ」
「俺の1番……」
沈黙が続く。
「それを見つけたら、また手合わせをしよう。俺はいつでも待ってる」
「護衛は俺と北見でもしばらくは大丈夫だろう、お前は自分のことを考えろ」
「分かりました…」
(それって実質護衛にはいらんってことやん…。俺何ができんねん…)
「この部屋は自由に使え。何かあれば俺か丸岡殿へ言え」
玄武はそう言い残し部屋を出ていく。
1人残った風間。
目から熱いものが流れ落ちる。
「俺…どうしたらええかな…牧」
今は亡き親友へ問う風間。
答えは永遠に返ってこない。




