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第54話 クストス

——レクトル本部

貴賓室。


「どうなったんだ」

「もうそろそろ終わってるはずですよ」


ヒソヒソと話す金剛寺我聞と久我山怜司。


「成功してたらいいんだが」

「天樹は20位ほどですよ。いくら玄武がいたとて失敗するはずがありません。」

小声で話す2人の少し離れた場所に、インヴィクが腰掛けている。


「…」


2人に興味がないのか、何を話していても無反応だった。

逆にこの反応に我聞と怜司は恐れを抱いている。


3人が待つ貴賓室の扉が開く。


「あれは無理だ!絶対!」


ソルスは大声で文句を垂らしながら入ってくる。


「かなり厳しかったですね…」


天樹もその後に続く。


「天樹!どうだった?」

我聞が席を立ち我先にと聞いてくる。


「申し訳ございません。我聞様。我々では暗殺は叶いませんでした」


「そ、そうか」

我聞は肩をガクッと落とし席に沈み込む。


「玄武だけならなんとかなったんだけどなー」


ソルスが呟くと、


「玄武以外がいたのですか!?」

怜司が食い付く。


「ああ。公安に嗅ぎつけられてた。多分事前に潜入したやつの暗号だろ」


「え、あ、暗号…」

怜司はギクリと身体を強張らせる。


事前に潜入させ、念入りに進めた方が良いと進言したのは、怜司と我聞の2人だった。


「公安の鬼塚のおっさんが応援に来てボコボコにされたぜ全く」


ソルスは2人の顔を見ながら話す。


「そ、そうか。よく無事に戻って来れたな!」


我聞の額には大粒の汗が垂れる。


「いやー、天樹がいて本当に助かった」


「おお!天樹が役に立ったのですね!それはよかったです!」


食い気味に被せるように怜司が話す。


「さて、これで任務は終了だ。しっかり報酬は頼むぜ?お二方」


「そ、それは、成功したらと言う約束で」

「そうですよ、一旦このまま持ち帰らせて…」


「あ?何甘ったれたこと言ってんだ?」


「…デウスと話をさせてくれ」

我聞は絞り出すように提案する。


「デウスはしばらく研究室から出られない。この件の判断は私に一任されている」


沈黙を貫いていたインヴィクの発言により、逃げ場を失う我聞と怜司。


「さぁて、どうすんだ?払えんのか?」


「今は!皇の資産を買い付けばかりで厳しい!またすぐに稼ぐ!その時で勘弁してくれ!」


「そうです!また投資ですぐに払えるようになります」


「そいつは聞けねぇ相談だな。なあインヴィク」


深く腰掛けていたインヴィクが肘掛けに手を突き立ち上がる。


「そうだな。せめて何か担保を置いて行ってもらわないと」


ソルスとインヴィクの視線は天樹へ。


我聞は下唇を噛む。

すぐに出せる金はない。だが断れば…この場にはインヴィクもいる。

それに、金を稼ぐ間だけなら…


「あ、天樹か?払えるまで天樹を貸そう」

「我聞!そんなことをしては我々の護衛は」


遮るようにインヴィクが割り込む。


「なるほど、彼ほどの人材を貸して頂けるのであれば文句はない。護衛も続けてもらって構わない。しかし我々から要請があった際には、戦闘に参加してもらう。これでいかがかな?」


「わ、わかった。戦闘の際は天樹を貸そう」


「交渉成立だな」


「頼めるか。天樹」

「主人の命令は絶対ですので」


この日、天樹四郎あまぎしろうはレクトルに名を連ねることになる。

のちに与えられる称号は、クストス。


我聞と怜司は天樹を連れ、泣く泣くレクトルを後にした。


部屋に遅れてデウスが入る。


「作戦通りになったね」


「全部がデウスの言う通りになったな…」

「相変わらず末恐ろしいな。あなたは」


「フフフ。獲物は冷静に狡猾に捕らえないとね」


「これで戦力も金も確保できた。しかもソルスが鉄堂玄武の血液データも取ってきてくれた。研究は次の段階に移れる」


「ま、俺は血で強くなれるからいいんだけどよ。インヴィクも血くれよ」


「断る」


「釣れねーな。ま、いいけどよ。デウスこの後研究室に行けばいいんだろ?」


「はい。赤刀と血のデータの研究をしたいので、よろしくお願いします」


レクトルも着々と戦力を増強していく。

——来る闘いに向けて。


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