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第52話 最強の盾

——皇邸


「はぁはぁはぁ」


丸岡は年老いた身体に鞭を打ち、走る。

後ろから来る戦闘員の足音が徐々に大きくなる。


覚悟を決めた主人と護衛。自分も何か出来ないかと考え、1人でも相手の数を減らすために行動に出た。


皇に仕え早15年。

当初40後半だった丸岡は60を超えている。

そんな丸岡がレクトルの戦闘員から逃げることは簡単ではない。

それを分かっていても行動せずにはいられなかった。


「待て!ジジイ!」


後ろから野蛮な声が聞こえるが一切を無視して懸命に走る。

部屋から部屋へ、廊下の曲がり角、抜け道。自身の頭にある全てを駆使して皇邸を駆ける。


逃げ始めて3分ほどが経った。先ほどまで聞こえていた足音と声もなくなり、敵は丸岡を見失ったようだった。


「はぁはぁ。巻きましたね…」


膝と腰が悲鳴を上げ両膝に手をつく。

一呼吸置き、自身の位置を把握する。


2階広間からは遠ざかった。

あちらのフィールドからは出ているはずなのに、連絡を取れない。


「さっき追ってきたやつが…邪魔をしているんですか…」


先ほど追いかけてきた戦闘員がフィールド外への電波を遮断している事に気がつく。

丸岡も能力を発動し、皇邸のフィギュアで戦闘員がどこにいるのかを見る。


「まずいですね…」


やつは追いかけるのを諦め玄関付近にて待機していた。


完全に通信圏外から抜けるには、玄関を抑えているあの男を突破するしかない。


「行くしかありませんね」


心臓の鼓動を落ち着かせ、玄関の方へ急ぐ。

能力を発動させながら待ち伏せにバレないように近づく。

フィールドが消えたら応援を呼べる。丸岡の手には、銅像が持っていた銅の槍が握られていた。


玄関は門が開いたままになっていた。

戦闘員はジャミングの能力を発動しつつ事前に渡された地図で玄関を抑えていた。


「あのジジイ。絶対逃さねえぞ」


丸岡は手元の小さな装飾品を、戦闘員の背後へ投げる。


——コツン。

後ろから聞こえたわずか音に反応する。


「誰だ!!」


後ろには何もない。

気のせいかと前を向く。


「な!?」


目の前に丸岡が槍を持って襲いかかって来る。


——カンッ!!

戦闘員は丸岡の槍を体を捻り間一髪の所で躱す。

地面に当たり槍は丸岡の手から離れる。


「このジジイ!」


丸岡へ殴りかかる戦闘員。

豪快な一発で丸岡は後方へ吹き飛ぶ。


「危なかったぜ。ジジイこれで応援は呼べないな」


戦闘員は先ほどの槍を手に取り、

丸岡へ一歩ずつ近づく。


「私もここまでですか…皇様、玄武様、申し訳ございません」


丸岡は目を瞑り、2人へ謝る。


「死ね!ジジイ!」


銅の槍が丸岡に迫る。

(ここまでか…)


——ドンッ!!!カランカラン。


(…なんの音だ…私は生きている?)


ゆっくり目を開ける。そこには白銀の獅子が居た。


「丸岡さん!間に合ってよかった!!」


「鬼塚様!なぜ!?」


自身は応援要請をしていない。なぜここに鬼塚がいるのか理解ができない。


「前に送ってくれた暗号、あったでしょう!あれを解読したら今日襲撃って分かって走って来ました!本当に間に合って良かったです!成十郎さんと玄武は?」


丸岡は込み上げる感情を抑え込み、報告する。


「皇様、玄武様は2階広間にてレクトルと交戦中です。道順はこれで!」


丸岡が皇邸のフィギュアを渡す。そこには道順までが描かれている。


「よろしくお願いします。鬼塚様」


丸岡は涙を流し懇願している。


「任してください!玄武はこの程度で破られませんよ!」


鬼塚は白銀の鬣を靡かせ駆ける。最速で皇邸を。


——2階広間


玄武は一歩も動いていない。

自身の硬質化。そして4枚の盾による自動防衛。

それが玄武の能力である。


「死ねぇ!皇!」


玄武を飛び越えソルスが皇へ迫る。


——ガキンッ!!

ソルスと皇の間に盾が現れる。


「なんだこれ!」


盾に弾かれ距離を取るソルス。


「この盾があのおっさんの能力か」

「自身の硬化と盾での防御。どちらも容易に突破はできませんね」


ソルスと天樹は話す。


「玄武。すまない」

「なにを。私は貴方を守る為だけに存在する盾です」


玄武は皇を守るために4枚の盾全てを皇に付けている。

普段ならば盾で守り自身で攻撃をする。

しかし今はそうではない。

自身の硬質化は硬さによって動きに制限がかかる。


よって最高硬度でいる今は一歩も動けないのである。


「おっさんよ。あんたそーなってる時は動けねーんだろ?」

「貴様ら如き…皇様には触れさせん」


確信を突かれるが玄武は動かない。


「そーかよ。全力でやってやるぜ天樹お前も惜しむなよ!」


「当然ですが。私も主人から全力を尽くせと言われております。」


ソルスは自身の赤刀を前に構える。

天樹のレイピアはランスへと姿を変える。

天樹自身にも鎧が身につけられている。


「耐えられるかな?おっさん!」


天樹が最高速度で玄武ではなく皇に襲いかかる。

それに続くように赤刀は枝を無数に分け全方位から皇を襲う。


「貴様ら…!皇様伏せてください」


皇は咄嗟に伏せる。

そこに硬化を解き玄武が覆い被さる。

盾が4枚で全方向の攻撃を受ける。


——ガンガンガン!!


赤刀の枝が盾に当たり折れていく。

3枚の盾は赤刀を完璧に防ぎ切っている。


——ポタ…ポタ…


玄武の脇腹から血が垂れる。

正面の天樹のランスは盾を破り、硬化中だった玄武の脇腹を貫いた。


「はぁはぁ。無事ですか、皇様。」

「玄武!お前…」


「ハハハ!最強の盾、破れたりだな!退け!天樹!」


ソルスは居合の構えを取り天樹を後退させる。


「はぁはぁ。大丈夫です。私が守ります。」


再び硬化し、盾が3枚重ねられソルスへ向けられる。


「光栄だな!いくぞ!」


——瞬間。ソルスの赤刃が、玄武の盾に吸い込まれる。

玄武の盾は2枚が破られ、3枚目でソルスの刀は止まる。


「硬えな!だがいいのか?俺にこんなに使って」


「はっ!」


後退したはずの天樹が再び最高速で皇へ迫る。

硬化を解くが間に合わない…


「皇様!!」

「玄武!!」


——刹那。

玄武の目に白銀の何かが映る。

白銀の獅子は天樹をランスごと吹き飛ばす!


「玄武!大丈夫か?」


「…当たり前だ。」


「嘘つけよ!結構ギリギリだったじゃねぇか!」


玄武の目が少しだけ潤んでいた。


「鬼塚…君」

「公安から応援に参りました!無事で良かったです!成十郎さん!」


久方振りに皇邸にて最強の矛と盾が揃う。

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