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第47話 風になる

——修行開始日。


「さぁて、凌ちゃん!今日から徹底的にやるわよ!」


「よ、よろしくお願いします…」


張り切っている北見に、風間はすでに嫌気が差していた。

(何でこんな人に教わらなくちゃいけないんだ)


「凌ちゃん、まずはどのくらいできるのか見たいわ。かかってきなさい!」


両手を前に広げ、いつでも来いと煽る。


「全力で行きますよ?」


「モチロン」

パチリとウインクを送る北見


空間が歪む。

一瞬遅れてフィールドが展開される。


「うおーー!」


風の竜巻が北見を囲む。

中では何個もの風刃が北見へ向かう。


「ふぅん。さすがにやるわね」

北見は飛んでくる風刃を拳で受ける。


「無傷…やと」


風刃を受けたはずの北見の拳に傷はない。


「もっと本気でおいでなさい」


「くそっ!」


——数分後

「はぁはぁはぁ」

膝に手をつき呼吸が上がっている風間


「凌ちゃんの大体の実力は分かったわ」


北見の身体に数箇所の擦り傷。

実力の差は歴然だった。


「そもそも元素系、遠距離系の凌ちゃんは身体系、近距離系には弱いのよ。相性次第では格上も相手に出来るけどもう少し工夫が欲しいわね」


「工夫ですか?」


「そうね…やはり風系は纏うのが1番強く1番難しいと言われているわ」


不思議そうな表情になる風間。


「纏うなら俺でも…」


そう呟きながら風を纏う。


「違う違う。それは纏ってるとは言わないわ。もっと根本的に風になるのよ」


「風に…なる?」

訳のわからない様子の風間。


「元素系の最強はその元素になること。特に真ちゃんがわかりやすいわ」


「確かに。真さんは雷そのもの…あれになれって言うんですか?」


「あれは特別よ。でもあれを参考にしてあなたなりに風そのものになってみなさい」


「なるほど…やったります!ありがとうございます!」


「それと…あなた近距離が弱すぎるから私が特別に見てあげるわね!」


「近距離…?」

背筋がゾクっとなる風間


「そうよぉ。毎日。みっちりとね⭐︎」

風間にとっての地獄の日々が始まる。


——そして現在。

俺は修行を見学していたが、風間さんがかわいそうになってきた。


「まだまだ甘いわね凌ちゃん!」

「うげぇ!」

近距離での格闘。以前にも増して動きが速い。

風間さんの身体には風が纏われている。

何度かの応酬の後、北見さんは風間さんの拳を受けたまま、ハグをする。


「離せ!」

身体の風を弾けさせ北見さんの手を振り払う。


「ちょっと刺激的になってきたわね」

北見さんは笑っていた。

その笑顔が、俺には何より怖かった。


「前も言ったでしょ!もっと風を感じて、表現しなさい!そもそも風はもっと軽く自由なものよ」


「分かってるんですがどうしても纏うってなると、風になるってのがわからなくて…」


「そうねぇ。確かに纏うって言い方が良くないのかしらね、どう思う?透くん」


意図してない振られ方で驚いたが、冷静に返す。


「真さんは雷になっていました。風間さんも風になるイメージが1番良いのではないのかなと…」


「そうやんな…風になるイメージ…」

悩む風間さんに北見さんが

「まあ、それは凌ちゃんのセンス次第よね!格闘戦はだいぶマシになってきてるわよ」


「そらこんだけ抱きつかれたら…」

「なにか?」

北見さんの鋭い視線が風間さんに向けられる。


すぐ笑顔になり


「続きやりましょうか」


修行の時間いっぱい風間さんは掴まれ、投げられ、関節を極められ続けていた。


風間さんの近接戦は俺から見ても相当なものになっていた。


修行後、俺たち2人は食堂に来た。


「近距離もいけるようなったけど、やっぱ能力で風にならな前みたいに負けてまう。それだけはあかん」

頭を抱えて悩む風間さん。


「かみっちゃんの修行はどうなん?」


「僕も近接をメインでやってます。朧さんに型を教わりながらボコボコにされてます」


「お互い大変やなぁ」

二人で笑いながら話す。


「でも…ふと牧ちゃんのこと考えたらもっと頑張らなあかんなってなるんよな」

「わかります。僕もあの時の悔しさを、一度だって忘れたことはないです…」


一瞬の沈黙の後。


「かみっちゃんあん時はすまんかったな突き飛ばして…」

「気にしてません。僕は無力だったのは事実なので…」

「それを言うなら俺もやで…」


「俺らで…システム壊して、もう2度と牧ちゃんみたいな被害者出さへんようにしような…」

「はい…僕らでみんなで戦いましょう」


——この日、俺は少しだけ風間さんと打ち解けられた気がした。


——レクトル本部。

地下転移室。


光と共に男がその場に現れる。

「はぁはぁはぁ」


霧島一輝は赤刀に呑まれ、人格が破綻していた。


「あの野郎ども…絶対にゆるさねぇ」


「おや、転移石を使った形跡があったので来てみたらソルスでしたか」

白衣を着た博士がエゴを連れてやってくる。


「あぁ。借りた隊員もやられちまった。すまないなデウス」


「彼らは補充の効く人員なので全く問題ないですよ。それより…その姿は…」


ソルスの刀は右手に癒着し、刀は枝のように分かれている。


「あ、気付いたらこうなってた。俺は血剣。こいつの能力だがこいつが弱いんで乗っ取ってやったって訳だ」


「能力が本人を乗っ取る…面白いですね!ソルス是非研究をさせてください!能力を解いたら本人に戻るのですか」

博士は興味津々だ。


「あ?俺はそのままだよ。刀としての力は消えるけどな。この一輝ってやつは意思が弱くて、今は中で眠ってるよ」


「素晴らしい。能力が人を乗っ取れるしかも解除後もそのままとは…」

博士は腕を組み考える。


「もういいか?疲れてる。眠らせてくれ」


「後日また研究をさせてくださいね。それとこれを」

石を手渡す

「こいつ何個もあんのか」


「幹部にしか渡せませんし、数に限りはありますのでなるべく使わないようにお願いしますね」


「わかってる。じゃあな」


転移室を後にするソルス。


「本当に興味深い…能力というのは、つくつぐ不思議な者ですね。ねぇ。望」


「望。誰。エゴしらない。」


「あなたのお母さんですよ…エゴ」


「お母さん…」



「さぁ。研究の続きだよエゴ」

先に転移室から出て行く博士。


遅れてエゴも出ていく。

(君のお母様は元気ですか?)

鷹見の言葉を思い出し

エゴの胸が少しざわつくが先を急ぐ。




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