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第45話 血剣

空間を割き当主の間から霧島カナが出てくる。


「カナ!父からの押し付けで奥義の修行をして、大変だったでしょう?俺が…僕が守ってあげるからね」


一輝は人格が無茶苦茶になっている。


「一輝。すまなかった。私が未熟なせいでお前にも大変な思いをさせた」


「何を言ってるんだ。カナは俺が守るんだ。俺が!」

今にも飛び掛かりそうだ。


「霧島…お前」

神城の目には信じられないものが映っている。


[66]《SS》


順位がかなり上がっている。

神城はその驚きを、なんとか自分の中だけに留める。


「神城…いや透。ありがとう。私の家にここまで協力してくれて」

神城に優しく微笑む。


「なんてことないよ。決着付けてこいよ」

神城が拳を突き出す。


カナも同じように突き出し拳がぶつかる。


2人はフッと笑う。カナは一心を見る。


「カナ…私は…」

涙が溢れ落ちている。


「父上泣かないでください。3人で新しく暮らしましょう。一輝は私に任せてください」


「カナ…頼む」


「カナ!終わったか?じゃあ俺と来い!」

割り込むように一輝が言う。


「一輝、私が歪めてしまったお前を今一度正す」


もはやこの2人に斬り合いは不要である。


一瞬。一度の居合で全てが決まる。


——間合いを取る一輝。


赤刀(血剣)の能力で感覚が麻痺し恐怖などの感情が一切ない。


「カナ俺が守ってやるから!大人しく来いよ!」


赤刀を鞘に収めながら言う。


「ありがとう。一輝。終わらせる。」


刀を鞘に入れ構える。


道場に静寂が訪れる。


見ている2人にはとても長く、

構え合う2人にはもっと長く感じるほどの静寂。


痺れを切らした一輝が抜く。


——赤刀は今までの最高速に達する。

その速度はもはや音を置き去りする。


刹那。


赤い刃は白刃に呑まれる。


ガンッ!


一心の時と同じような音が鳴り響く。


一輝の首元にはカナの刀が突きつけられている。


持っていたはずの赤刀は道場の壁に深々と突き刺さっている。


折れず一輝の手から弾かれたのだ。


「なんで…殺さない」


「私はお前の姉だ。殺すわけないだろう」


刀を戻し抱擁をするカナ。

子供のように涙を流し、嗚咽する一輝。


「今まですまなかった。一輝。」

「…姉さん。ねえね。僕…」


——ドクン。

一輝が脈を打つ。

消えかけた紋様が全身に濃く広がる。


赤刀はひとりでに一輝の元へ。


「なんだと!」

赤刀を弾くカナ。


「ハハははアハ!僕が俺が俺、が守、守守!」

一輝が赤刀を握る。


紋様が再び薄れていき

「俺が一輝なんだよ!お前らをぶっ殺す!全員だ!!」


赤刀は刀身が割れ裂けて歪な形に変わる。

柄は一輝の手と同化している。


「血だ…もっと…守るため…血がいる!!」


「貴様!何者だ!一輝をどこにやった!」


カナが切先を向ける。


「僕が一輝だよ!血剣だ。一輝だ。違う!違わない。こいつが望んだ力だ!」


一輝の声だが一輝ではない。


「能力に支配…されている…のか?」


神城は即座に一輝を見る


[72](憑)《SS》


何かが憑いている。初めて見る表示に、周りへの説明もできない。


「一輝。どうなっている」

神城の背後で一心も動揺している。


「血が…いるんだよ!お前…よこせ!逃げ…カナ!」


カナに襲いかかる!


歪に広がっている刀身を刀で受けるカナ。


「重い…」


その状態のまま裂けた刀身から枝のように細い刀身が生えカナを襲う。


顔を反らして避けたが何本もの枝が生え即座に離れる。


赤い刃の木のようだ。


「血だ!くれ!」


枝が一気に全方位に伸びる!


カナは刀で向かってくる枝を折る。


神城は波を使おうとするが触れようとした瞬間に嫌な予感がする。


自身の背後には重症の一心。

躱せない…


——ヌルリ…

朧が影から出て、忍者刀で全てを叩き折る。


「あれは…かなり厄介ですね。」


「知ってるんですか…朧さん」


「話を聞いたことがあるだけで見るのは初めてです。」


「私が一輝を止める!」


居合の構え。


カナは放つ。一撃を赤刀の本体へ打ち込む。


ガンッ!と刀と当たる音。


罪の特性を生かしそのまま振り切る前に2撃目を叩き込む。


これも受けられる。


受けるたびに枝が少なくなり紋様は濃くなる。


「ぐう。血が足りぬ。血がぁ。」


三度、居合を放つカナ


今度は能力の斬撃を飛ばす。


受けた赤刀はほとんどの枝を散らす。


「ぬああああ!血が足りぬ!お前達は後回しだ!」


再び枝が全方位に伸びる。

先ほどよりも勢いがないが量が多い。


前が一瞬見えなくなるほどだ。


一輝の足元に何かが光る。


全員が枝を叩き折るとそこに一輝の姿はなかった。


カナは一輝の消えた場所を、ただ見つめていた。

救えたはずの弟を、もう一度失ったような気がした。


——こうして霧島家での騒動は不安を残す結果となった。


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