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第40話 父の告白

——ズバッ

今度は指が数本飛ぶ。


「ぐ…」

飛んだ指を見て、より痛覚を感じる。


何度目だ。父に斬られるのは。

その度に元に戻る。


初日は夕方から夜まで。

夜になると父が外から引っ張り出してくれる。

そうでもしないとこの部屋からは出られない。


2日目以降は朝から夜まで。


神城に夜会っても挨拶を交わす程度しか気力がない。


もう4日が経とうとしているが、糸口すら掴めない。

「何が…足りないんだ」

自問自答をする。


あの時…刀堂との戦いの時に成功した感覚。

あれこそが居合のはずなんだ。


「カナ。頼れるのは自分と自分の信頼できる者だけだ」


父の言葉が頭に浮かぶ。


頼る?この状況で?どうやって。

3日目には刀を抜けなくなった。

父と構えを続ける時間を過ごしている。


自分を頼る。

私は何ができる?


あの時の感覚を探して何度も失敗している。

頼るべきは本当に感覚なのか?


自分を頼る。

私は私を信じているのか?


「さすがカナちゃんやなー」

「よくやった。霧島。」

「霧島、お前に俺から教えることはない」

「霧島なんでそんなに強いんだよ」


公安の人たちからの言葉を…

私は一度でも肯定したことがあったのか?

私はまだまだ…私なんて…

そんな言葉で自分を卑下してきたのは自分だ。


私は感覚なんかじゃなく私自身の力を

今の力を信じるべきなんだ。


——刀を握る力が緩む。

見合う父の姿をよく見る。


「私が作り出した虚像だったのか」


刹那。


白刃が舞う。

目の前の父が歪み消えていく。


無がパッと晴れていく。

蝋燭の横には父が瞑想をしていた。


「開けたか。」

目を瞑ったままポツリと呟く


父の前に立ち

「はい」

と一言。


父が一瞬笑った気がした。

「ここからが地獄だぞ」


「覚悟の上です」


カナがを会得したのは、7日目の夜であった。

これは霧島流居合術が創始して以来最短である。

このことをカナは知らない。

一心のみが胸のうちに秘めるのであった。


——7日目の夜

今日の霧島はいつもと違い、笑顔だった。

毎晩同じように夜会っても気力がなかった。


「達成したのか?」

「まだ序の口だ」


2人でハイタッチをする。

「やったな!」


「ああ。だがこれからさらに過酷な修行に移る」


「安心しろよ!朧さんもいるし俺は最後までここにいる!」


過酷な修行をしている霧島へエールを送る。

言葉がちょっと恥ずかしくなり少し顔が赤くなる。


「…頼りにしてる」

霧島は少しはにかんで答えた。


その顔が夜の夜景と重なりとても綺麗だった。


「ごほん。」

咳払いにより俺たちは、いつの間にか近づいていた身体を引き離す


「神城くん?婚約者のフリだったよね?」

一心はここぞとばかり圧がすごい

フッと圧が消え


「冗談だよ。カナと仲良くしてやってくれ。これからもっと辛い修行になる。君の力も必要だ」


一心は爽やかな笑顔だ。知らぬ人から見たら剣聖などには到底見えないだろう父親の顔。


「何かできるかわかりませんが終わるまでは責任持って守ります!」

強く答える。


「本当にありがとう。カナはもう寝なさい。明日もある」


「はい。おやすみ父上、神城」


霧島はペタペタと歩き自室へ消える。

俺も部屋に戻ろうとすると

「神城くん。お願いがある」


一心さんに呼び止められ


「カナと君達に危険が及ぶ事があっても私の事を優先するとしたら君は私をどう思う?」


突拍子もない質問だったが一心さんの目は真剣だった。


「カナさんは覚悟の上で来てるはずです。それは俺も同じです。何があってもカナさんは俺が守ります。何かあるときは思い詰めずに人に相談してみるのもいいですよ」

と牧さんのことを思い出しながら生意気に言ってみる。


「そうか。そうだな。ありがとう。君が来てくれて本当によかった。」


一心の頬に一粒の涙がスッと流れる


——9日目

9日目の夜一心さんに呼び出された。


「私たち3人を呼び出すなど何かあったのですか?」


「神城くんに言われて目が覚めたんだ。これからありのままを話す。特にカナにはしっかり聞いて欲しい。」


そう言うと一心さんは語り出す。


「私たち霧島家には長女が産まれると刀に触れさせることを禁止としていた。3代目の時代に長女と長男での後継問題が起きたからだ。」


「カナが生まれて…カナの母である沙織の身体は限界であった。1年後に沙織を亡くし私は当時19。当主になりたてで満足に構ってあげられなかった。そんな沙織の最後の一言は」


「カナを頼みます」


「その一言に私はなんてことをしていたのだと我に帰り当時盛り上がってきた道場よりもカナを優先した。カナは小さい頃から刀が好きだった。掟も関係なく私はカナを継がせるつもりだった。

しかしその頃から父は私を家で孤立させ始めた」


「私は当時から剣聖と持て囃されていたが未熟だった。常にカナを守る力も育てる力も持ち合わせていなかったんだ。父の言いなりに再婚し、一輝が生まれた。カナへの接触は最低限。しかも監視付きだ。父はカナに剣術を辞めさせるように言ってきたがそれだけはと懇願した」


「実際カナは私から見ても才能に溢れていた。父も恐れていたのだろう。私は少ない時間で剣術を見せ厳しい父であるように見せつけたんだ。黙っていて本当にすまなかった」


霧島の顔は驚愕に染まり、涙が瞳から溢れそうになる。


「なぜ…なぜ今そのような話を…されるのですか」


震える声で霧島が言う。


「カナが出ていき5年。一輝は鏡まで習得した。父にとって私は用済みになった。だから最後にカナに私の全てを伝え死ぬつもりだった。巻き込みたくはなかった。しかし……カナと過ごすにつれてまだ…もっと一緒に居たい。そう思ってしまったのだ」


「………っ」

霧島は涙で言葉が出ない。


「誠に勝手な願いで申し訳ない。カナ、そして神城くん朧さんにも迷惑をかける。だが、この因縁だけは切って、そして願わくばカナと…共に暮らしたいんだ。こんな…こんな不甲斐ない父を許してくれ。カナ」


畳につくほど深々と頭をさげ手には力が籠る


「頭を上げてください。父上…私のこと…守ってくれた父上が不甲斐ないなど…絶対にないです…」

「私も…父上と共に生きたいです…」


「ありがとう…ありがとう…カナ。」

2人は抱擁を交わし涙を流す。


俺と朧さんはしばらくの間蚊帳の外であった。


2人は泣き止むと、

「神城くんも朧さんも迷惑をかける」


一心さんが俺たちに頭を下げる。


「頭を上げてください。僕はそのためにここに来てるんです!朧さんもいれば絶対大丈夫です!」

「主から神城くんの護衛も指示されてるので必然的にそうなりますね」


一心さんは僕らの手を握り

「ありがとう。本当にありがとう」

と頭を下げる。


——10日目

一輝はカナに会うのを控えるためレクトルのアジトで訓練をしていた。


霧島家からここまでは3日ほどかかる。

気を紛らわすにはちょうどいい。

1週間ほど修練をし心を落ち着かす。


アジトには誰もおらず誰にも邪魔されなかった。


「ふぅ」

一息つき休憩に入る。

すると一彦からの連絡が入る。


「一輝!なにをしておる!あの女…奥義を習得しよったぞ。」

「…なんですって?」

持っていたドリンクが手から落ちる。


「早く戻ってこい!一心を止め叩き落とすなら今しかない!」

「カナが…奥義を…」

落ち着いていた心に火がつく。


「僕が止めます。父を止めカナを守るのは僕と証明します」


すぐに支度しアジトを出る!最速で家に帰るために。


——同時刻。

電話を切り、一彦は焦る。

まさか一輝がそんな遠くにいるとは思っていなかった。

焦りつつも

「まだ始だ。あと3日で何が出来る。少し早くできても鏡は不可能だ。」

と言い3日後に向けて作戦を練る。


「それよりもあと3日でこの家は再びワシのものだ」

一彦は1人で笑う。

そんな時が来ないとはつゆ知らず。


——霧島家の因縁をかけた戦いが始まる。



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