第4話 叩き込まれる日々
「うわっ!」「ぐっ……!」
真四角の、何もない訓練室。
痛々しい音と悲鳴が、公安の訓練場に響き渡る。
「貴様!逃げてばかりでは訓練にならんだろう!」
木刀を振り回しながら追い詰めてくるのは——
俺の教育係兼教官の霧島カナである。
「そんな事いってもお前手加減しねーじゃん!
このままだとまじで死ぬぞ俺!」
「わざわざ時間を割いているんだ。死ぬ気でやれ」
そう言いながら訓練所の中央で三度構えをとる。
構えを取ると言ってもなんの経験もない俺の構えは霧島の見様見真似である。
「やぁぁ!!」
俺は素人ながらに自分から切り掛かる。
両手で思いっきり振っているにも関わらず霧島は片手で赤子を相手にするかのようだった。
「もっと力を込めて早く振れ!!!」
霧島が切り掛かってくる
「うわっ!」
奇跡的に木刀で受け止めているが俺の目は恐怖で瞑っている
「目を逸らすな。敵から逃げるな」
そのまま蹴り飛ばされる。
「ぐへっ!」
冷たい床に寝ころびながら、なんでこんなことになったのかを思い出す
---神城。公安に入れ
「鷹見さん!そんな信用できないやつ入れるんですか!?」
「霧島。公安の現状を見ると少しでも戦力が欲しい。彼は改竄者相手に無理に戦闘をせずとも良い能力がある。こっちの犠牲者も減らせるかもしれない。」
「しかし。」
「もちろん。全部の任務に連れて行けるわけでもないし入るなら正式に訓練を受けてもらわないといけない。」
「なんで俺が入る前提なんですか?俺入るなんて一言も。」
「お前は国家レベルの秘密を知った。それにフィールド内での順位発言は違法能力者として扱われる。
霧島、違法能力者の罰則は?」
「違法能力者は自覚のありなしに関わらず逮捕事情聴取、最悪の場合は死罪もあり得ます、」
「だ、そうだ。それに加えて給料もいい。借金も返せるかもしれんぞ。どうする?神城透?」
鷹見さんの有無を言わさぬ顔で
その目は笑っていなかった。
俺には地獄の閻魔様がこちらを見ているようにしか見えなかった。
「分かりましたよ、入ればいいんでしょう。入れば!!」
「それ以外にお前に選択肢はない。」
その後秘密保持や、契約書を交わし俺は一旦仮入隊という事になった。
「では正式に明日から公安の仮隊員だ。訓練が終了するまでは正隊員としは扱わん。」
「訓練?」
「そうだ。公安は戦闘経験がない物には教育係、まあいわゆる教官をつける事になっている。」
「はぁ。」
「明日からそこにいる霧島が君の最初の教育係兼教官だ」
「「えええ!!!??」」
「霧島。頼んだぞ。」
「鷹見さんが言うなら断れません。神城透。私がやるからには徹底的にやるから明日からは死ぬ覚悟でここに来るんだな。」
終わった。---
——そして今、俺は治療室で天井を見上げている。
「透くーん」
柔らかい優しい呼びかけに応えゆっくりとベットから降りる。
「今週でもう3回目だよー
アキちゃんも手加減しないね」
全身に擦り傷、打撲の身体を見てそう言う。
白宮ひよりさん
公安の医師だ。
ひよりさんの手から白い光を発し触れられた箇所の傷が治っていく。
彼女は治療系能力者。
しかも——世界で唯一らしい。
フィールドを発動しなくても能力が使える点では俺と同じだがお互い特例らしい。
「はい!おしまい!
アキちゃんにはもう少し手加減してあげてって言わないと透くんが毎日ここに来ちゃうわね」
「いつもありがとうございます。」
「全然!入隊してほぼ毎日通う子なんて牧くんと風間くん以来だわ。」
「牧さんと風間さん?」
「そ!金髪のチャラい子と真面目でがっしりしたコンビの子よ!」
「あ、初めて本部に来た時見かけました。あの人たちが。?」
「そうよ!あの子たちも最初は....」
ガラガラとドアが勢いよく開く
「ひっよりさ〜ん♩怪我人連れてきました〜」
噂の男が入ってきた
少し遅れてガタイの良い牧原さんも入ってきた。
「すいません。ひよりさん。訓練中に凌が。」
「待て待て牧ちゃん、俺がやらんかったら牧ちゃんがボコボコにしてたやろ」
今にも開戦しそうだ
割って優しい声が入る
「はいはい。そこまで。怪我人をベットに寝かせて
透くんは、これで大丈夫ね!あんまり常連になっちゃだめよー?」
「ありがとうございました」
そそくさと逃げるように治療室から出る。
「あいつこの前入隊した確か。神、。なんとか」
「神城だ。神城透。上司が直接尋問してから入隊だから相当何かあるって噂になってる。」
「そうそう。神城や、毎日アキちゃんにボコボコにされてるんやろ?辞めるんちゃうの?俺やったら毎日アキちゃんにボコボコにされるなんでご褒美やけどな〜」
「霧島も教育係は初めてだからどうすればいいかわからないんだろう。俺たちも初めは新人を辞めさせそうになってただろ。」
「俺は優しくしてたけどな〜」
「雑談はここまでにして早く仕事に戻りなさい〜。治療はやっておくから」
よろしく〜と軽い風間と丁寧にお辞儀をし、よろしくお願いしますと2者2様で治療室を後にする
「あの子達も昔は真さんにボッコボコにされてたのに成長したわね〜。と、お仕事お仕事っと!」
本部の中には食堂もある
基本的に公安はそこで食事を取るのだが時間は様々でお昼に多い時もあれば夕方に多い時もある。
「あいよ!お待ち!」
食堂のおばちゃんから配膳をもらう。
「新人くん!そんな顔してないでそれ食って元気出して!」
「ありがとうございます。」
軽く会釈をして座席に座る。
この食堂はかなり広く50人以上は入れるサイズだ
公安にもたくさんの課があり多くの人が働いている。
俺が配属された公安特殊対策本部第1課はレクトルや、違法システム登録者への武力行使などといったものが専門だ。
「神城くん。やろ?隣ええかな??」
目の前に金髪のチャラ男風間さんがいた
「どうぞ。」
「何ようや?って顔やな〜自分」
「すまない。神城。凌はすぐみんなと距離を詰めたがるんだ。」
遅れて牧原さんがやってくる。
2人は第1課の先輩に当たる。
風間凌
牧原山岳
2人とも第1課のエース級でありダブルだ
霧島の先輩でもある。
「どうだ?神城、公安には慣れたか?」
「まぁ。はい。少しだけ。」
「そうか。ここはたくさんの人がいるが1課は少ないからな。俺たちにもなんでも聞いてくれて構わないぞ。」
「ありがとうございます。」
「なんや、自分??毎日毎日アキちゃんとアツーーーいレッスンしとるくせになんでそんな元気ないねん」
風間さんの声は食堂中に聞こえるくらい大きかった
「ちょ!!やめてくださいよ!
そんなのしてないです一方的にボコボコにされてるだけです!!」
俺は注目の的になり顔が赤くなっている。
「ははっ!自分ええ声出るやん?ここで声出せるやつならまだまだ大丈夫やな〜」
「すまないな。神城これでもこいつなりに励ましてるんだ。」
どこが?と思いながら顔に出さずに反応する。
「それより神城、訓練はどうなんだ?凌の言ってた用に毎日治療室に行くほど厳しいんだろ?」
「俺が弱いだけなんすよ。3週間以上経つのにまだ霧島に一擦りもしてないし。あいつ容赦ないし。そもそも戦闘なんて一回もやったことなかった奴に対しての当たり方じゃないんですよ!!それにあいつ!」
「「アハハハ」」
2人して大笑いし
「かみっちゃん、君意外と本音出せるじゃん。」
「そうだぞ。3週間もボコボコにされて文句が出せるのはかなり良い。本当に絶望してるやつは下を向くだけだからな。」
——確かに。
公安に入る前より少しだけ、
生きるのが楽しくなっていた。
「神城。霧島に1発やり返したいか?」
牧原さんが、ほんの少しだけ悪い顔をした。
「かみっちゃん1撃喰らわせようや」
もっと悪い顔の風間さん
「そりゃ、やってやりたいですけど。どうやって?」
「この後空いてるか?」
コクリと頷くと
「よっしゃ!じゃあ偉大な先輩2人がかみっちゃんのために人肌脱いだろか!」
3人で訓練場に向かっていく。




