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第38話 姉弟

「試合をするなら木刀だ。それ以上は許可しない」


一心さんが道場に向かう前にそう告げ、

「構いませんよ。僕は」

「はい。僕も大丈夫です」


2人が了承してから道場に向かう


俺たちは道着に着替えて向き合う。

霧島家の道場に防具というものは存在しない。

交わるのは木刀と木刀のみ。


「2人とも準備はよいか」

一心さんが審判を務める


「はい!」

「僕もいつでも」

余裕の表情を見せる一輝


「それでは…始め!」

一心さんの右手が振られる


——ダンッ!

地面を蹴ると同時に一輝が迫ってくる

上から振り下ろされる木刀を正面で受ける

鉄の塊が落ちてきたのかと錯覚するほどの重さ

「ぐっ。」

思わず声が出る


「ふーん」

その後も正面、袈裟、返しと様々な角度から木刀が襲ってくる。

その全てを弾き、受け止め、躱す。


徐々に刀に込められる力が強くなっている。


「意外とやりますね」

またしても正面から向かってくる


木刀を受け鍔迫り合いに。


「あなた本当にカナの事好きなんですか?」

刀越しに聞いてくる


「そうだが。悪いか」


「いや、ちょっと弱すぎて相応しくないなって」

一瞬、狂気に満ちた笑顔を見せる


——ザワッ!

嫌な予感。後ろへ飛び距離を取る


引かなきゃやられてた。

「本当によく見えてるんですね」


一輝は刀を鞘に収めるように木刀をしまう。

居合の構えだ。


(これはまずい。能力を使うか…?)

能力を使うにはフィールドを形成しなくてはならないが一輝と一彦にはバレる。

今できる限りの心眼で…


——時が止まる。


ピクリ


一輝の指に力が入るのが見えた


その瞬間俺は後ろへ下がる


その刹那俺の首があった場所を木刀が通る


「なんと」「嘘だろ…」

見ていた者は驚きを隠せない。

霧島家の居合を躱したのだ。しかも部外者が。


「あなたがカナの横に…目障りですね」

一輝の目に狂気が走る


空気が歪む。

一瞬遅れてフィールドが形成される。


一輝がフィールドを形成し、居合の構えをとった。

(好都合だ)

俺は能力を発動する。


[72]《SS》

(ダブルか)


一輝の凄まじい殺気。

その矛先は俺だ。


「上位でもない…なぜカナはお前を…」

まさに居合を放とうとした、その瞬間——


「そこまでだ!」

一心さんが試合を止めに入る。

慌てて一彦も一輝を止める。


「カナの横にいていいのは僕だけだ」

一輝は止められながら視線を俺の方に向け言う。

そのまま一彦と一心さんに連れられ道場を出ていく。


「まさか、本当に登録してたなんて…」

上位者はお互いの順位は見えないが、フィールドの形成でその人が能力者かわかる。


「しかも、72位だった」


「72⁉︎ 高すぎないか?それほどの財力などこの家にないはず…」

「そうなんだよ。なにかあるぞ…」

2人で話をしていると


「すまなかった。神城くん」

一輝を外に出し、戻ってきた一心さんが頭を下げる。


「いえ、僕も修行の一環になりますし。勉強になりました」


「そう言ってくれて助かる。一輝は昔からカナの事になるとああなんだ。最近は会わせていなかったからマシになっていると思ったがよりひどくなってるな」


次期当主である一輝があの調子なので当代の一心さんも頭に手を当てている。


「神城。父には秘密にしておいてくれ。頼む」

耳元で霧島が俺に呟く。

コクリとうなずく。


「大丈夫ですよ!そのうち姉離れしてくれますよ」


「そうだといいんだが…」

やれやれといった感じだ。


これで霧島を家に入れることはできた。

このまま本部に帰ることも出来たが

——一輝のあの目。そして順位。

霧島が心配になり残ることを決めた。


朧さんに伝えると、どこにでも入れるから問題ない。と言われ次の日から道場を、ひとつ借りて修行をする事になった。


——(なんなんだ。なんなんだ。あいつは!)

天才剣士であり霧島家の次期当主の霧島一輝は心で の中でぼやく。

(僕の方が強く、身長も高い、顔も勝ってる。何がいけないんだ!)

心の底で思っていることをぶちまけたいが抑えこむ。


「一輝。なにをしとる。フィールドまで作りおって、わしの順位も見られたかも知らんのだ!」

一彦は一輝に怒鳴るが本人は上の空である


「おい!聞いてるのか!!」


「…すいません。つい」


「全く…そんなにあの女が大事なのか。大体あいつは…」


——一彦の喉元に切先。

「う、うぐ」

(こやつ…いつ抜いたんだ。わしでも見切れんかった…)


「それ以上は…やめてください」

「すまなかった!それを下せ!」

スッと刀を鞘に戻す。


「今回の件は申し訳ありませんでした。カナはしばらくこの家に居ると聞きました。しばらくは会うのは控えます。」


そのまま自室へと向かう一輝。


「どいつもこいつも。そもそもあの女は何をしに本家へ帰ってきたのだ!……まさか……」


一彦は顎に手を当て考える。

焦った顔でそのまま自室へと向かう。


——霧島家それぞれの思惑が動き出す。

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