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第37話 霧島家

和服の使用人に通された茶室。

すこし手狭な部屋の真ん中に炉がポツリとある。

姿勢を正し、霧島と並んで正座をして待つ。


しばらくして、

「御当主様がお越しです」

するりと襖が開く。


「お待たせして申し訳ない」

1週間と少し前に会議室で見た霧島の師匠だ。

まさか父親だったなんて。


霧島が座ったまま頭を下げるので合わせる。

「プライベートですし、楽になってください。」

そう言われて俺は足を崩す。

霧島の父親も俺たちの対面に座る。


「君が…神城くんですか」


「初めまして。カナの父、霧島家15代当主霧島一心(きりしまいっしん)と申します」

改めて深々と頭を下げられる。


「神城透です」

慌てて挨拶を返す


俺はなぜこんなことになっているのかまだ理解していなかった。


——遡ること3日前。

各自が修行を始めて1週間。

霧島が俺の修行場に来て家に来て欲しいと言われたのがきっかけなことは覚えている。


「なんで、俺が霧島の実家に!?」

修行を一時中断し食堂で話を聞く


「私の師匠を見ただろう」

霧島は少し恥ずかしそうに話す


「ああ、厳格そうだけど優しそうな人だったな。あの人が何かあるのか?」


少し間をおいて


「私の父なのだ」

「父親!?師匠が?」

誰もいない食堂に響く


「そうだ。まさかあちら側から来ると思っていなくて。」


「どういうことなんだ?」


ここで初めて、霧島の家系と、女性としての扱いを知った。

そしてその上で父が師匠として来たのだ。

混乱するのもわかる。


「なるほどな、そこからなんで俺を実家にってなるんだ?」


「理由は3つだ。1つ目は奥義の伝授。それは実家のある部屋での修行でしか取得できない」


「なるほどな。2つ目は?」

「2つ目は霧島家での私の立ち位置だ。当主の実子だが跡取りではないし家を出た身。それがのこのこと何の理由もなく帰れない。」


「確かに。一理あるな。3つ目は?」

「私に万が一があった場合、婚約者という立場なら霧島家に入れるそれが3つ目だ」


「万が一って、実家だろ?そんなことあるのか?」


「霧島家なら…あり得る。特に一輝と、一彦祖父様は何をしてくるかわからない」


「家族ってそんな感じなのか」


数秒の沈黙

「いや…か?」

霧島がわかりやすく落ち込む


「嫌じゃないけど俺でいいのか?」

「いいんだ!神城が!」

なぜか食い気味に被せてくる。


「わ、わかったよ。んで何日くらいいなきゃいけないんだ?」


「神城がくるのは1日で構わない。緊急事態の時以外は連絡しないつもりだ」


「わかった。何かあったらすぐに連絡しろよ助けに行くから」


「…あ、ああ。ありがとう——」


そんなやりとりがあり今茶室で一心さんと向き合っている。


茶室には俺と霧島、一心さん、そして使用人がいた。

一心さんは使用人に下がるように伝えて3人のみになる

「神城くん。本当にありがとう」

また深々とお辞儀をされる


「私たち家族の問題に付き合わせて本当にすまない、私に出来ることがあるならいつでも言ってくれ」


「そんな、俺は霧島を…カナさんを手伝ってるだけですから」

下の名前で呼ぶのは少し照れくさいがこの家には霧島しかいないので必然だ。


「ありがとう。では少し霧島家を案内しカナと修行に入りますので行きましょうか。透くん」


外には霧島家の人がたくさんいるため、婚約者として振る舞わねばならない。

先頭に一心さん。俺たちは手を繋ぎ、後ろを歩く。

一心さんにそうしたほうが婚約者のようで好ましいと言われたからである。


「こんにちは」


「あら!カナさん!この度はおめでとうございます!」


庭の手入れをしてるおばさんに言われる。

2人でお辞儀を返し霧島は優しく手を振っている。

実家にも仲の良い人はいるようだ。


「これはカナ、おめでとう」

少し小柄な60歳は優に超えてそうな御仁に声をかけられる


「お祖父様ありがとうございます」

空気がピリついている。これが霧島の言ってた祖父かとよく見ると


《S》


登録者にしか見えないステータスが見える。

内心で驚きながら顔に出ないように取り繕う。


「婚約者の神城透です。よろしくお願いします」


深々とお辞儀をする。


お祖父様と呼ばれていた一彦かずひこを見る。

身長こそ低いが芯がまっすぐにあり顔などは皺でいっぱいだが手だけは信じられないほど分厚かった。


「おお、よろしく婚約者くん」


「でも残念や。一輝は今いないから紹介したかったのに」


「一輝には今度紹介させてもらう。今日は今いる…」


「ただいま戻りました!」

玄関の方で少し元気な声が聞こえる


「お!一輝帰って来たんちゃうか?一輝!」

老体は飛び跳ねるように玄関に向かう


「神城…気をつけろ。何があっても誘いに乗るな」

耳元で囁く。

「それって…どういう…」

ドタバタと足音を立てこちらに向かってくる。


「一輝!お前の姉さんのカナが婚約者連れて来てるで」


連れてこられた彼はまだ幼い。髪は短髪な黒髪で一重のキリリとした目にカミソリのような眉。弟というより剣士という方がしっくりくる。

腰には、布で包まれた棒状のものが差してある。

そして一輝にも


《SS》


(おいおいどうなってるんだ)

霧島家はシステムの登録に反対派だ。と霧島から聞かされていたのに何人かは登録している。しかも祖父と弟に関してはかなり上位だ。

(なにか、あるな。)


「カナ…結婚するの?」


「あぁ。その挨拶で来たんだ」


「そうなんだ。おめでとう!」

霧島家の人達はこの時代には珍しく、ほぼ全員が帯刀してる

外に出る時は外しているようだが、帰るなり帯刀をする一輝は、左腰にある脇差を触りながら、少し下を向く。


「じゃあ婚約者がどんな人か試合させてよ!やっぱ弱いやつじゃカナの横には似合わない!」

笑顔だが目は一切笑っていない


「その必要はない。もうすでにお父様に許可は頂いている」


「ふーん。ね!婚約者さん!名前は?」


「神城透と申します。よろしくお願いします」


「カナの横にいたいなら僕と試合してよ!じゃないと僕は認めないよ。カナの横にいていいのは僕だけなのに!」


(なんだこいつは。シスコンなのか?)


「一輝!透くんは普通の家の人なのだ!そういうことはやめなさい」

一心さんも少し声を上げる


「まあまあ、御当主ええやないの。一輝も本気でやり合おうって言ってる訳じゃあるまいし…」


一彦は不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ている。


「し、しかし」

一心さんが困り顔でこちらを覗く


「やりましょう」

一心さんと隣にいた霧島が驚愕の顔をしている。


「へぇ。度胸はあるんだ」

一輝は少し不服そうだ。


「おい!なんで!」

霧島が寄ってきて少し小声で言う


「確かめてみる」


「何をだ」


「反対派の家で、弟と祖父だけ順位が見えてる。俺が確かめてみる」


霧島は驚きに唇を噛む。


「…無茶はするな」


「分かってるよ。確かめるだけだ」


そう言い霧島家道場へと共に進む。

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