第34話 それでも前へ
——エゴ達が消えてから数分後
「無事か、お前ら」
公安の雷が本部に帰還する。
「真さん!」
「鳴神……やらました。[Spes]を……」
鷹見さんは下を向き手に力がこもり震えている。
「あいつらまで出てきて俺らもいなかった。仕方ねぇだろう」
俯く鷹見さんの肩を叩く。
「すみません…」
その数分後には2課に連れられて鬼塚さんが帰還する。
鷹見さんから鬼塚さんへ状況が伝えられる。
「鷹見…大丈夫だ。[Spes]を奪われただけだ。まだ戦える」
そう言い、鷹見さんを抱きしめる。
数瞬そうしていると、
「さてブリーディングルームで今回の報告をしますよ」
スッと鷹見さんが通常通りに戻る。
俺は膝の上で眠る霧島をひよりさんに任せブリーディングルームへ向かう。
「おい、一回負けたらしいな」
前にいる真さんからの視線が痺れるほど痛い。
「はい…すいません…」
「お前の油断だ。心眼が出来たなら1度目で勝てたはずだ」
「はい。」
「だが、お前は生きてる。弟子としては合格だ」
「……はい。」
俺は部屋に向かいながら、少し泣いていた。
ブリーディングルームは損害をほぼ受けておらず戦闘前と同じように3課から順に座る。
全体の人数が少なく、大半が傷を負い、包帯を巻いていた。
今回の戦闘がいかに苛烈を極めたかを物語っていた。
「みんな、まずはよく生き残ってくれた!ありがとう!」
鬼塚さんは全員に向けて、深く頭を下げた。
「残念な事に第2支部は壊滅、第3支部に関しては建物の全壊、崩落時の重症者多数、本部は死傷者80名以上。そのうち重症者も多数。と、熾烈を極めた厳しい戦いになった。」
……静寂の中、至る所から鼻を啜る音が聞こえる。
「こうなったのは私の責任である。これからもこういうことは起きるだろう。
だが!私は何が起きても仲間の全てを背負いレクトルを潰すことをここに誓う!」
少しの静寂の後
「…私に賛同し、付いてきてくれる者には敬意を。離れる者には感謝を、それぞれ贈りたい……」
続く静寂に俺は声を上げようとし真さんに止められる。
——その直後背後から
「第2課、第3部隊小隊長、山本であります!!」
席を立ち敬礼をする
「うむ。」
「私の第3部隊は小隊長である私を除き3名を目の前で失いました!…しかし!私は!私は…もう。部下が死ぬのは耐えられません…。」
涙で嗚咽し、言葉に詰まる山本隊員。
「山本隊員。ありがとう。勇気のある君に私から最大の感謝を。本当にありがとう。」
「……うぐっ。…ありがとうございました!!」
深々とお辞儀をし部屋を出る。
その後も何人かが立ちあがり、頭を下げ、部屋を去る。
「だ、大丈夫なんでしょうか」
真さんに耳元で囁く、
前を向いたまま真さんは
「黙って見てろ」
——直後もう1人男が立つ。
「第3課、処理部、村上です!」
綺麗な敬礼を鬼塚さんに向ける
「うむ。」
鬼塚さんは敬礼を返し、手を下ろす。
「我々処理班はもっとも不遇で苦しい部です!今回も我々の被害が最も多いと思われます。自分の同期もほとんどいません!」
「しかし!レクトルによる支配により自分の身近な人たちが苦しむ姿を見ないために!私はここで!本部長に着いて行きます!」
「ありがとう。村上隊員。その選択に最大の敬意を。」
最初に出て行った数人以外がその瞬間に立ち上がり鬼塚さんに敬礼をする。
鬼塚さんは全員の顔をしっかり一瞥し一人一人に返すように敬礼をした。
「みんな、ありがとう。これからもよろしく頼む。本日は以上。解散!」
全員が一斉に部屋から出ていく。
残っていた1課の俺と真さんとひよりさんは、座ったままだった。
数日後回復した風間さんと霧島を含め1課全員での会議が開かれる。
「さて。みんなまずはよく生き残った。感謝を。状況と今後については鷹見から」
「はい。まず我々の現状についてです。
2課3課は大ダメージを受けていますのでしばらく元の動きまで戻るには時間がかかるでしょう。そして霧島、風間はすぐには戦線復帰が厳しい。我々もしばらくは休息が必要でしょう。」
「そしてレクトルについてですが、[Spes]を奪取した彼らが何をするか分かりません。警戒は必要ですがすぐにどうということはないでしょう。今後はレクトルの本拠地の捜索が、我々の目標になります。その為には巡回も少しずつ戻していき情報収集、特に真には遠征に行ってもらう事になります」
「それはいいが、このままだとまた負けるぞ」
真さんは体の前で腕を組み難しい顔をしている
「ええ。我々は少数精鋭。奴らに遅れをとるわけにはいきません。資産については"あの方"に話していますがすぐには厳しいでしょう。」
「なので各々には強くなるために訓練を積んでもらいます。特に風間、霧島、神城。3名にはもっと強くなってもらわないといけない。」
「まじで面目ないです。」
包帯に巻かれた風間さんは顔の前で手を合わせる
「未熟ですいません。」
切り傷の跡が残る霧島は、下を向く。
「もっと…強く。」
俺は拳に力を込める。強くなりたいと、心の底は思った。
「それぞれに師匠を用意しました。彼らから少しでも学び強くなってください。」
——ガチャリ。
会議室の扉が開くやいなや
「やだぁ!真ちゃん!お・ひ・さ!」
先頭の屈強な男性?が真さんへタックルする。
ガン!
顔面を蹴り飛ばす
ほぼフルスイングの蹴りを受けても、その男はびくともしない。
ハグされる直前に、
空間が歪む。
一瞬遅れてフィールドが展開される。
——バリバリバリ
紫の雷に襲われて痺れる男。
「今日、も、一段と、愛が、重いわね。真ちゃん」
——この師匠だけはやだな。と思った瞬間だった。




