第33話 強奪
「何人来ても、勝てませんよ」
鷹見の前にはトランプがスプレッドされている。
言葉ではそう言いつつも、鷹見は少し焦る。
(風間くんがやられたということ。そして1対2で[Spes]を守るとなると厳しいですね)
「エゴ、あなたは私や彼よりも任務を優先してください」
「わかった。」
サンクトはホルダーから本を取り出す。
1ページを捲るとエゴが光の屈折により徐々に見えなくなる——
♤7
消えるエゴに水の両刃剣が迫る。
「させませんよ」
2ページを捲る。
現れた竜巻に水の剣は阻まれる。
竜巻を見ると同時にもう1枚引く。
♧8
鷹見は先ほど装填を済ませた銃を放つ。
——バンバンッ!
一度の引き金で2回の銃声音。
弾丸は同時に2つ出る。
チッ!
弾丸がサンクトの肩と腕を掠める。
「バカな!?」
当たるはずのない弾丸が掠め、困惑する。
竜巻の流れが弱い所を貫通していた。
(なにかカラクリがありますね。)
サンクトの竜巻が止むと、エゴは完全に姿を消す。
(残りは3枚何を引くか)
鷹見は相手の出方を伺う。
「彼女はどこに行かれたのですかね」
「神が彼女を隠しました。見つからないでしょう」
サンクトの能力も十分にわからない。
あの少女も消えている。
先にサンクトを落としますか。
——♡J
鷹見に溶け込む。
サンクトがページを捲るより早く
鷹見が迫る!
——ドンッ!
サンクトは警棒での攻撃を本で受け止める。
そのまま警棒で叩き込む。
受けきれず鈍い音が響く。
30秒。
接近戦が続き鷹見は引き際に銃弾をお見舞いする
サンクトの本に穴が空く。
本は光に包まれ修復していく。
サンクトの能力は他の能力を見る。もしくは受ける事でコピーしページに貯める。
風間との戦いでほとんどページ数は残されていなかった。
鷹見はその性質を見抜いていた。
(先にサンクトを落とす)
——♧A、♡2
警棒に溶け込む。
刀身は伸び、レイピアに変わる。
トランプがホルダーに戻る。
——サンクトの汗がポタリと地面に落ちる。
鷹見はサンクトに迫る!
苦し紛れに光弾と風刃を飛ばすが当たるはずもない。
「まずは1人。」
レイピアがサンクトを貫通する。
——バリバリッ!
と高電圧が流れ、サンクトの意識を奪う。
膝から崩れ落ちる。
鷹見は周囲を見渡しエゴを探す。
「そこか!」
[Spes]の前で空間を開くエゴ。
「任務。完了。」
空間の中に消える。
あれに入られると探知は出来ないだろう。
「……やられましたね、
私を殺りに来ると思ったんですが……」
その後すぐに
「鷹見さん!無事ですか!」
神城が地下に降りてきた。
「良いところに来ました。神城くん」
何が何だかわからない神城。
「先ほどエゴなる白髪の子が[Spes]を強奪しました、あなたの目で彼女を探せますか?」
部屋の中央を指差す。
「…やってみます」
心眼を使う。
「空間が途切れてる。あ、でもあとは見える」
空間の行き先が見える。
「上です!上に向かってます」
「急ぎましょう!!」
鷹見と神城はサンクトを3課に任せ、上に向かう。
「奴らの目的は[Spes]だったんですか?」
「そうです。おそらくあの少女の空間を渡る能力で持ち帰る気なのでしょう」
「あいつ、なんか見覚えがあるんですよね」
「そうでしょうね」
「え?何か知ってるんですか」
「その話は後にしましょう。ひとまずは追いかけます。何階ですか?」
「地下2階です!」
——地下2階
鋼同士がぶつかる音。散る火花。
広大な訓練場にただ2人。
刀堂は楽しくて楽しくて仕方がなかった。
現代の剣聖の娘とやり合えているこの状況を。
「まだまだ!やれるよな!霧島ぁー!」
さらに強く踏み込む。
霧島の手には1本の刀。
同じく踏み込み鍔迫り合いに。
刀堂は楽しんでいた。
この数分で成長していく霧島を。
最初は2刀でも押されていた刀が、1つになってから鍔迫り合いになるように。
お互いが弾き後方に飛び間合いを取る。
(どんどん研ぎ澄まされてやがる…こいつは本物だ)
霧島の頭は湖の水面のように静かだった。
刀堂の刀がよく見える。力も良く入る。
一刀にしたのも両手で握った方が良いと思ったからである。
今なら…できるかもしれない。
そう思うと鞘を顕現し刀を納める。
父が昔1度だけ見せてくれた霧島家の居合術。
霧島の圧で刀堂の全細胞が震えた。
(こいつはやべぇ。)
刀堂は上段に構え間合いをはかる。
半歩ずつすり足で近づく。
3歩目。
——霧島が居合を放つ。
刀堂はあまりにも魅入っていた。
ここまで美しいのかと。
同時に刀堂の身体から鮮血が舞う。
斬られた本人は喜びに満ち溢れる。
(これが剣聖の技か)
「…うっ。」
先に霧島が膝をつく。
普段よりも疲労感を感じ刀が手から消える。
「まだ…立っているのか…」
目の前の大男からは血が溢れている。
表情は喜びの笑顔。
「……霧島カナ…最高の斬り合いだったぜ…」
——バタン。
血が広がる。
「やったのか…みんなは…」
霧島はその場に倒れ込む。
意識が消えかける。
——その時。
「——グラディ。やられたの。」
少女の声がする。
霧島は踏ん張り、起き上がり声の方を見る。
そこには[Spes]を持つ白髪の子がいる。
「貴様!なぜそれを!」
声を上げるが身体は満足に動かない
這うように近づこうとする
「他のみんなはどうした!まさか…」
「早く。開かないと。グラディ。起きたら手伝って。」
少女は座り込み目を瞑る。
「答えろ!貴様!」
「——こっちです!ここにあいつが!」
その声が聞こえ霧島は安堵と喜びを感じる。
「いました!よくやってくれました神城くん!」
2人を確認できた霧島は緊張の糸が切れ、眠るように崩れていく。
「霧島ぁ!」
倒れる寸前に神城に支えられる。
「生きてて…よかった」
「お前こそ!大丈夫か!」
「すこし…眠らせてくれ。」
神城の腕の中で霧島は意識を失う。
「エゴ、それを返してもらうますよ」
トランプをスプレッドし始める。
鷹見が目の前に来ても、エゴは反応せず集中する。
大規模に移動する際はかなりの集中力がいる。
♤5
エゴと[Spes]に土塊が迫る。
「あっちからすぐこっち来いって、ほんと人使い荒いんですけど〜」
エゴの前に金髪のギャル。異様な気配を感じる。
髪をくるくるさせながらもう一つの手にはぬいぐるみ
——ズンッ。
ぬいぐるみが巨大化した。
「やっちゃえ」
向かってくる土塊を弾く。
「グラディもいんじゃん」
ぬいぐるみはグラディを拾い上げ、3人を覆うように被さる。
「逃しませんよ!」
♡10
鷹見が加速する!
♤8、♧3
拳銃に炎を纏わせ、放つ。
ぬいぐるみに穴が空き、綿が燃えていく。
「あー!やったな!うちのくーちゃんによくも!」
ぬいぐるみが自ら炎を払い消し、穴の空いた箇所に手を当てると塞がる。
「なんてね!」
ぬいぐるみの間からベロを出してくるギャル。
「プルケ。ありがとう。時間。」
エゴが空間を切り裂く。
「ほんと!感謝しなさいよ!」
「逃しませんよ!」
♧A
レイピアで迫る。
ぬいぐるみの隙間を縫いエゴを狙う。
カンッ!
——下から斬馬刀に弾かれる。
「やらせはせん」
追撃を図るも、ぬいぐるみに飛ばされる。
「じゃあね〜」「霧島カナ…次は勝つ」
3人と[Spes]は、空間の中へ消えていく。
「……私がいながら、失態ですね」
公安は[Spes]を奪われ
レクトルは3人を失う。
こうして本部急襲は、両者に傷を残して幕を閉じた。




