第30話 鬼神
——第3支部
真の到着より少し遅れて鬼塚現着。
白銀の髪が通常に戻っていく。
「なんてことだ…間に合わなかったか」
瓦礫だけの第3支部
奥に1人の大男が立っている
鬼塚より身長も体格も少し小さい。
だが存在感が鬼塚の警戒レベルをマックスにする
「やっときたか。待ちくたびれたぞ」
こちらに振り向くと同時に
空間が歪む。
一瞬遅れてフィールドが展開される。
「俺はデモンだ。お前が鬼塚だな」
デモンは一歩ずつ近づく。
合わせるように鬼塚も近づいていく。
「俺が鬼塚豪だ。デモンなぜこんなことをする」
鬼塚の髪は白く爪が徐々に伸びる
「ワハハ!破壊するのに理由などない!俺は貴様を相手にするのが目的だ」
鬼塚は目的に若干の違和感を感じるが悲惨な光景に怒りが込み上げる。
どちらかがあと一歩出せば、届く距離。
お互いの顔を見合わせて改めて言う。
「楽しませてくれよ鬼塚」
「お前は許さない」
お互いの右拳が、予備動作なく繰り出される。
防御をせず拳が左頬を直撃する。デモンが少し怯む。
その勢いのまま、鬼塚は乱打する。
「なぜそこまで殺しを楽しめる!この異常者どもめ!」
デモンは防御を一切しないまま
「なぜ…それほどの…力が…ありながら…人を…救う」
乱打をもろに喰らいながら言葉を返す
鬼塚は殴りながら違和感を感じる
デモンの背後の黒いモヤが、膨れ上がる。
感じた時にはデモンの1.5倍ほどの大きさになっていた。
思わず一瞬乱打を止めてしまう。
デモンは、ほんの一瞬の隙を見逃さない。
鬼塚の手を左手で掴み、逃げられないようにする。
「倍にして返してやる」
黒いモヤがデモンの右手に収束する。とてつもない力だ。
——まずい!!
直感が鬼塚を動かす
完全な白狼になりデモンの拘束を抜け横に飛ぶ
インパクトの瞬間
遅れた右足が黒いモヤをかすめる
「グワッ!」
鬼塚はかすめた右足を触るが
右脚に感覚がない。
後ろを見ると放たれた黒いモヤが全てを破壊していた。
「ワハハ!よく避けたな!」
腕をぶん回しながら楽しそうに
背後にあった黒いモヤは消えている。
鬼塚は感覚のない右脚を捨て3足での姿勢を取る
試すかのように地面を蹴りデモンへ突っ込む。
デモンの能力を確認すべく攻撃を仕掛ける
「速いな!いいぞ鬼塚!こい!」
打撃によるダメージは見られない。
ならば——
伸びた鋭い爪ですれ違いざまに掻っ切る。
スパッと切れた傷跡から鮮血が舞う。
切り付けるたびに背後のモヤを確認する。
予想通り傷を負う度に膨れ上がる。
先ほどと同じほどになった所で、一旦攻撃を止める。
「傷を負えば負うほどそれが大きくなるんだな」
確認をするように問う。
「正解だ!俺は受けたダメージを返すことができる、返しても受けたものは回復しないがな!ワハハ!」
「デモン!お前は楽しんでいると言っていたがここを攻撃した理由は何だ!」
鬼塚は、もう一つの確認をするために会話を挟む
「知らん!上からの指示だ!お前と鳴神と闘えとな!」
「俺と…真を。本当の狙いはまさか」
「2人とものこのこ出てきてくれて助かったぞ」
「足止め…——本命は本部かッ!!」
「気づいても遅い!もう十分時間は稼いだ」
鬼塚のアテは外れた。時間が経ってもモヤは小さくならない。
「これで終わらせてやる」
右手を構え黒いモヤを収束し始める。
鬼塚は戸惑う。自分なら確実に避けられると思っているのにデモンが構えを取っているからである。
「いいのか?避けて」
——まさか!?
後ろを確認する。
非戦闘員が瓦礫から姿を現す。
「お前ら逃げろ!!」
何人かいた非戦闘員は気づいて後ろに走る。
間に合わない。
——こうなれば。
前を向きデモンへ駆ける!
白銀の狼は空中で姿を変える。
先ほどとは違い、身体は赤黒く染まり、額には2本の角が生える。
「鬼神。」
デモンが黒いモヤを解き放つ。
鬼塚はそれに合わせ、全力で迎え撃つ。
黒と赤が空間を歪ませる。
衝撃により瓦礫は吹き飛び、
後ろにいた非戦闘員は必死にしがみついている。
「うぉぉぉ!!」
「がぁぁぁぁ!!」
黒が次第に小さくなる。
鬼塚が押し切る!
鬼塚の赤拳をデモンの顔面に叩き込む。
だが、デモンは笑いながら額で受け止めている。
鬼神の一撃に、黒いモヤが一気に膨れ上がる。
(ここで倒さねば!!)
鬼塚は少し焦り倒しにかかる。
デモンは笑いながらノーガードで全てを受け切る。
そして、先ほどの2倍ほどに膨れ上がったモヤはデモンの血管や筋を裂いている。
それを右腕に集中させる。
「鬼神闘気」
鬼塚も先ほどより赤々しいオーラを腕に溜める。
赤と黒が2度目のぶつかりを見せる。
先ほどよりも凄まじい衝撃が周囲を襲う。
もはや立っていられない。
「うぉーーー!」
「がぁーーー!」
お互いが咆哮をあげ力を振り絞る。
大きすぎる黒が弾ける!
弾けたのはデモンの力だった。
「グワーーー!」
鬼塚は変身を解きデモンの元へ。
「さすがだな。楽しかったぞ」
デモンは右腕が吹き飛んでいた。
流れ落ちる血の量からもはや助けることはできない。
「お前らが少しでも正しく力を使えれば…」
「力と支配がこの世を作ってる。ぶっ壊したかったんだこの世界を」
もはやいつ事切れてもおかしくないデモンは話す
「レクトルは本気で世界を支配するつもりだ。精々頑張れよ鬼塚。」
——デモンは力が抜けがくりと下を向く。
「デモン…強敵だった。」
「うおー!本部長がやってくれた!倒したんだ!」
先ほどの非戦闘員である。
皆が雄叫びや、歓声を上げている。
よく見るとほとんどの隊員が生存していた。
(デモン…お前は。)
その言葉を心の中に留め、死闘を繰り広げた相手へ、
最大限の敬意と祈りを捧げる。
第3支部は建物の破壊のみ、後処理は生き残った支部長らに任せる。
鬼塚は今出せる最高速で本部に戻る。
「みんな…どうか無事でいてくれ」




