第17話 無力
「なんでや、なんでや牧ちゃん。」
霧島に言われて頼んでいた応援が来たのは、全てが終わった後だった。
風間さんが駆けつけ、倒れる牧さんを見た。
「冗談きついで。牧ちゃん。はよ、はよ起き上がってや。」
俺は顔を伏せる。何も言えない。
「かみっちゃん。牧ちゃんは誰にやられたんや。そこに倒れとんのは"立花湊"やろ。牧ちゃんの仇や。こいつか?」
俺は首を横に振る。
「ならどいつやねん!!誰が牧ちゃんを!!おい!!」
風間さんに掴まれ身体が宙に浮く。
「答えろ。神城。」
ドンッ!
残っていたガラスが震えている。
風間さんを中心に風が巻き起こっている。
「……俺が弱かったからです。」
体が吹き飛ぶ。
「なんでや……」
「なんで……俺やないねん……山岳。」
左の頬が痛い。それ以外分からない。
その後の事を覚えていない。
治療はされたはずなのに、頬の痛みと熱さだけが残っていた。
家で1人その熱に触れ涙を流す。
事件の後、牧さんの葬式が行われた。
棺の前に立っても、何も感じなかった。
泣き声だけが、遠くで響いている。
——全部、他人事みたいだった。
行きたくなかった。
霧島が自宅に来て葬儀に連れ出した。
全てがどうでもよくなった。
そもそも俺が公安に入ったのは不可抗力だ。
入ってレクトルに対抗する目的なんてない。
元のコンビニ店員に戻ればいいんだ。
——ガチャ
寮の扉が開く。
再び霧島が来たのかとうんざりした。
「もういいよ。俺に構うなよ。」
「牧が生かした野郎の顔を見に来たが——こんな雑魚の為にあのバカ」
イラっとした。
誰かもわからないやつに、牧さんをバカにされたんだ。
「誰だよあんた。」
「鳴神だ。」
空気が変わる。
「あのバカから聞いてないのか?」
また。
「牧さんの事をバカ呼ばわりすんじゃねえ!」
怒りにまかせ拳を振るう。
ピタッ。
「え?」
指で止められた。
しっかり相手の顔を見る。
身長は俺とあまり変わらない。
気怠そうな目に長い髪。甚平のような物を着ている。
男の横に
《jgt@tmg》
これ……ボスと同じ。
空間が歪む。
一瞬遅れてフィールドが展開される。
順位が表示されない。
「見えるんだろ。見てみろ。」
言う通りに相手の順位を見る。
——[3]
「!!??さ、3位?」
「本当に見えるんだな。面白い。」
気怠そうだった目が、いつのまにか戦闘狂の目に変わっていた。
「お前、俺の事殴ろうとしたよな。返してやるよ。」
能力を使ったはずだった。
見えた拳はすでに俺に当たっていた。
「牧のやろう。勝手に死んでこんな野郎だけ俺に残しやがって」
「…バカ野郎が。」
視界が、真っ暗になる。
——俺は何もできない。
その事実だけが、頭に残った。




