第16話 届かなかった手
「牧さん!牧さん!しっかり!」
なんでだよ。なんで。
「大丈夫か……神城。」
血が、止まらない。
ナイフを抜く?
違う……先にあいつを。
——ガシッ!
牧さんに腕を掴まれる。
「神城……俺はもう助からないだろう。」
最後の力を振り絞って話す。
胸からは血が溢れて床に溜まる。
「…仇…」
「取れた……」
「ありがとう…神…城。」
牧さんの声に力がなくなっていく。
牧さんの身体から、ガクッと力が抜ける。
「もうその人助かりませんよ?」
蛇喰が目の前に現れ、不快な笑顔を向けてくる。
まただ。いないはずの場所から出てくる。
「お前はぶっ殺す!!」
「怖!でも上位者じゃないのに粋がっちゃダメですよ!」
意識を、スローモーションの世界に沈める。
2本のナイフが飛んできていた。
ナイフを躱し距離を詰める。
引き金を引く。
——カチッ。
「クソッ!」
銃を投げ捨てる。
そのまま前に進む。
距離を詰めるたびにナイフが飛んでくる
「やりますねぇ!」
スパッ。
ナイフが頬を掠め血が舞う。
そんなもので止まってられない。
頭が割れそうだ。
目も開けているだけで痛い。
だが閉じるわけにはいかない
捉えた。俺の持つナイフの間合い。
「フフフ。必死になってていいですね〜」
消えた!?そこにいたはずなのに。
目を凝らしても、どこにいるのか分からない。
「フフフ。どうですか見えないってのは怖いでしょう。」
クソ。見えない。
こういう時は思い出せ。
——回避の訓練中
目を瞑る。
「いいか。神城。お前が目指す最高の回避を教えるぞ。」
顔のあたりに風を感じた。
「目を開けてみろ」
「うわ!」
目の前に牧さんの手が広がっていた
「人間、目で追うには限界がある。周りの空気や音を読んで躱す。これが究極の回避法であり、究極のカウンターになる。」
「俺の教官からの受け売りだけどな!俺も試したが難しすぎて何にも分からなかった!」
笑いながら説明してくれる。
「神城。目以外で感じるんだ。俺には出来なかったけどお前には出来そうな気がするんだよな。真さんの言ってた事が。お前なら。」
牧さんとの訓練を思い出す。
——今がその時。
目を瞑る。
いつ来るか分からない。
長く感じる。本当はもういないのでは。
と邪念を振り払う。
空気が動く。わかる。
蛇喰が攻撃を仕掛ける瞬間が。
スッ。空気が揺らぐ。
「そこだ!!!」
空気の流れを感じ、蛇喰のいる場所へナイフを突く。
何もなかった場所に蛇喰が現れ笑顔で尋ねる。
「グフッ。なぜわかったんでしょう。」
ナイフは深々と蛇喰の肩に刺さっている。
「姿は消せても空気の流れまでは消せない。」
「牧さんの仇打たせてもらうぞ!」
目の前に白い髪の男が現れる。
「狂。お父様が。戻って来いって。」
そいつは俺と蛇喰の前に一瞬で現れた。
「まだまだ楽しめますよ!!邪魔しないでくださいエゴ!!」
「ダメ。もう援軍きてる。帰るよ。」
なんだ…あいつ。
…足が動かない。
「ニセモノ。」
白い髪の少年は俺に向かって言う。
「仕方ありませんね〜。じゃあまた会いましょう!透くん♩」
「待て!!」
手を伸ばした。
——届かない。
次の瞬間、
2人の姿は消えていた。
静寂。
「……くそっ」
拳を握る。
足元には、血。
「牧さん……」
もう、返事はない。
——もう、遅い。
明日からは通常通り18時30分に更新予定です。




