第15話 終わりの先
「…殺す。」
ゆっくりと、湊の視線がこちらを向く。
俺は走り出した。
霧がこちらに動く。
捕まらないように柱を使い逃げる。
解放された牧さんは息はあるようだが意識がない。
俺は必死に逃げる。
「なんだお前は上位者でもないのにコソコソと。俺の楽しみを邪魔しやがって。」
霧が迫ってくる。
霧自体はそこまで速く移動できないのか、コントロールができていない。
俺は追いつかれないようにビルを駆け回る。
湊は片腕がだらりと垂れ下がり、ポタポタと血が流れている。
(よし、このまま俺に意識を向けて牧さんが回復する時間を。)
逃げながらも銃で牽制をする。
防御の瞬間は霧が止まる。
気付いてからは何度か撃ち走りを繰り返す。
「鬱陶しいですね。あなた。」
湊は先ほどとは打って変わって淡々と話す。
不味い。冷静さを取り戻している。
「あなたは美しく殺すに値しませんね。」
霧が収束し湊の前に剣のようになる。
「雑魚を殺すのはこれで十分」
霧の剣が、俺を襲う。
剣状になった途端スピードが上がる。
「くっ!」
躱してはいるが、徐々に切り傷が増えていく。
「あなたの様な雑魚は後ろから串刺しにしてあげますよ」
こいつは外道だ。楽しんでいるんだ。
傷から血が流れ、段々と足も言うことを聞かなくなってきた。
「はぁ。はぁ。」
とうとう足が止まる。
「つまらない。やはり雑魚では美しくない。」
霧の剣が一斉に俺を貫きにかかる。逃げ場はない。
ここまでか。
(透。あなたならできるわ。)
まただ。
最終試験で聞いた声。
世界が止まるほどスローモーションに見える。
霧の剣の軌道がわかる。
最小限の動きで躱す。
「なに!?どうやって。」
湊が驚いている。
「お前のような外道に俺は殺せない!」
「貴様。」
霧の剣が再び俺を襲う。
意識をスローモーションにする。
剣を複雑に動かしている。
全ての軌道が見え、躱す。
「なぜだ!なぜ!!!」
「こうなれば不本意ですが、あなたもこれで…」
剣から霧に変わり俺を包み込む。
俺は一切焦らず、ただ一言。
「終わりだ。」
湊の身体に岩が抱きつく。
「しまった…」
「死ね。湊。」
牧さんが渾身の力を込めて締め上げる。
バキバキと身体が壊れていく。
湊は声も上げられず——崩れ落ちた。
……終わった。
牧さんが絞り出すように叫ぶ。
「やったぞ……舞……」
牧さんが涙を流す。
「やりましたね…牧さん!」
俺の目は流血し頭痛が止まらなかったが
それよりも牧さんの所へ。
「牧さん…大丈夫で……」
——違和感。
背後に気配があった。
牧さんの表情が変わる。
「神城!!!」
俺の手を引っ張り位置を入れ替える
——ドスッ
鈍い音が響く。
何かが突き刺さった。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
「……え?」
振り返ると牧さんの体が、俺の前に。
牧さんの左胸にナイフが刺さった。
「あれ?こっちじゃなかったのに…ま、いっか!」
そこにいた。
さっきまで何もなく誰もいなかったはずの場所に。
「なんだよ……
……誰だよお前……」
「僕?僕は蛇喰!蛇喰狂だよ!
よろしくね?」
次話、本日20:30に投稿します。




