第12話 相克
階段を駆け上がる。
すでに本部への応援要請を終え、牧さんの元へ走る。
俺の息が上がり、心臓の鼓動はかつてないほど早くなっている。
「はぁはぁ」
俺が行っても足手まといになるだけ。分かってる。
でも見るだけなら、下位の雑魚なら俺でも!
牧さんの役に立つんだ!
階段を登り切った。
どうやらこのビルは各階同じ構造らしい。
広々とした空間が広がっている。
中心に牧さんとあいつが立っている
フィールドはすでに形成されていた。
俺は邪魔にならないように柱に隠れる。
ギリギリ銃の射程が届く範囲だ。
万が一に備え、上がっていた息を整え銃を構えておく。
牧さんと奴の会話が聞こえてくる
「なぜだ、あの時なぜ俺も殺さなかった!!」
「あそこで先輩を殺したらつまらないんですよ…
俺はね…俺は殺し合いをしたいんですよぉ」
あいつは狂気に満ちた笑顔だった。
「湊、お前だけは俺が殺す!!」
牧さんが土の槍を作る。
訓練時に見た礫などとは比にならない。
先端は針のように鋭い。
槍を3本作り、湊へ飛ばす。
すごい速度だったが目標の前で速度が落ちる。
湊の前へ届く頃には、形を保てず砂のように崩れていた。
「先輩の属性、土ですか。俺と相性最悪じゃないですか!」
牧さんの能力は土の操作である。
牧さんの槍が幾度となく砂に変えられる。
相性が悪いのだけはわかった。
「その霧か。」
牧さんはギリッと歯を噛み締める。
「ご名答!霧状の高密度な水を周りに置いて先輩の攻撃が来る前に霧散させてます。どうです?あの時と同じ無力感は?」
意気揚々と能力の説明をしている。
昂っているのがこちらから見ても分かる。
牧さんがふぅ。と一息つき
「お前が水だったのは前々から気づいていたよ、あの時気を失わせたのもお前の水だろう」
「その通りです。さすが牧原先輩ですね。ちなみに奥さんもこの霧で最後を迎えましたよ!」
「どうですか!?圧倒的な絶望は!」
湊の声がフロア中に響く。
——一瞬の静寂。
「よかったよ。お前が変わらず外道のままでいてくれて。」
牧さんが少し笑う。
「は?」
「安心してぶっ殺せる。」
牧さんが再び槍を作る。
今度は少し色が違う。土の色ではない。
硬質な音が鳴る。
「無駄だと。」
ズドンッ!霧を貫通し後ろの壁に刺さる。
やつの頬を掠め、ほんのすこし血が舞う。
霧の一部が赤に染まる。
「え?そんな」
湊は驚いた顔をしている。
「さっきペラペラ話してくれたお礼に俺も教えてやろう。大地の中にある鉱石類のみで形成した。霧でも水でも掛けてみろ。次は命を貫くぞ。」
先ほどの槍が何本も出てくる。
「ふ、ふふふふそうじゃなくてはここからが本当の戦いですね」
湊は頬の傷をなぞり指についた血を舐める。
そう言って、2人の戦いは一層激しさを増す。
俺は2人の動き、戦いに釘付けになる
一時も目を離してはいけない。
そんな気がしたんだ。
——夢中になっていた。
もう1人の視線に、気付かないまま。




