とあるメイドは驚く
メリッサSide
麗らかな日差しが差し込む、とあるお屋敷。
使用人たちは皆楽しそうに談笑しながらそれぞれの仕事をする。
実に平和な時間が穏やかに流れている。
……はずだった。
「ひんぎゃああぁぁぁぁぁああ」
使用人たちは皆、一度手を止めてとある部屋を見つめる。
ある者はクスクスと笑い、ある者はため息を漏らし、ある者は眉間を抑え、ある者は青ざめ、あるものは胃薬を仰ぐ。ある新入りのメイドは、ビクッと肩を揺らした。
その様子に前を歩くベテランメイドはクスクスと笑う。
「あっ、あの、叫び声…お嬢様のお部屋から、ですよね?大丈夫なのでしょうか…」
ベテランメイドは更に笑う。
新入りメイドは首を傾げる。
「気にしなくていいわ。いつもの事だから。貴方もそのうち慣れるわよ。それに…」
ベテランメイドは一度息を吸い、ふんわりとした笑顔で言葉を放った。
その表情は、子を思う母のような、陽だまりのような温かい表情だった。
「あんな珍妙な叫び声を上げるのは、小さな頃から変わらなくて嬉しいのよ。普段の仕事廃人な姿からは想像つかないけれどね」
新入りメイドはつられて暖かく笑った。
そうか、お嬢様は…私の御主人様は、素晴らしいお方なんだな。
ベテランメイド…アンナ様は、お嬢様のお母様代わりのような存在だったそうだ。
まぁ、仕事廃人と聞こえたが、耳が悪くなっているのかもしれない。
だって、社交界で見るお嬢様はいつも美しかったから。
そんな私の理想のお嬢様が音を立てて崩れ去るのは、もう少し先の出来事であった。
春が、来る。
そんな気がした。




