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プロローグ
???Side
公爵令嬢、レティシア・マリラズネルは家事ができない。
いや、できないどころの話ではない。
部屋を片付けようとすれば大好きな本で作ったタワーに埋もれ、料理をしようと包丁を握ったならば指が切れ、火を付けたなら真っ黒になり、洗濯をしようとすると泡に埋もれ更にはびしょびしょになるし、刺繍は自分の指を指す健康法だと考え出す始末である。
彼女は社交界でこう呼ばれている
『廃人令嬢』
と。
「……ティ!…レティ!……レティシア!」
そう、この自分の前で本に顔を突っ込み、布団をグダグダにし、更には部屋のあっちこっちに本、本、ノート、学園の教科書、羽ペン、インク壺……は!?
コイツ、また絨毯を汚す気か!?
「おい、レティ!今日という今日は……」
「ふへぇぇぇぇ」
レティの変な寝息は健在だ。
やれやれ、とため息を付いて、レティの部屋を片付ける。
おっと、忘れてた。
レティのサラサラの髪をそっと撫でて、本を取り上げて、布団を被せる。
「お前はどうしよもなく廃人だけど、愛おしい俺の婚約者だ」
「ふへぇぇぇぇ」
アハハハッと、俺は笑った。
もしかしたら、これもレティのおかげなのかもしれない。
俺は、ここに来てからよく笑うようになった。
おやすみ、俺の愛しの婚約者殿。




