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原作者の異世界降臨~大人気アニメの世界に転生したけど、原作者だから今後の展開は読めます~  作者: 初凪 旭
葛藤

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021.絶望は人を闇に堕とす

 ――意思は魔力であり、魔力は意思である。

 ――魔力を司るとは、意思を司るという事に他ならない。

 ――意思固き者は、魔力も其れに応えるであろう。



 六神教に伝わる聖典は、『原典』と呼ばれる神代言語で書かれた六神の教えが基となっている。

 そして、『原典』の中には、聖典に訳されなかった魔力についての記述が存在する。


 それがこの一節である。


 この世界の魔法は、意思の力で発動する。

 詠唱は、六神と魔神が設計した『魔法を使いやすくする仕組み』であり、意思の力で発動する無詠唱魔法が本来の魔法だ。


 魔力は、意思――人間の思考に呼応する。

 では、もしも他者の魔力を操ることが出来たら?


 ……それこそが、聖典に訳されなかった理由だ。



 俺が生き、原作と同じように進めるなら……。


 ――俺を認識する人間の、その自由意思を歪めればいい。

 俺が生きようとすることは、この世界にとって都合が悪い。

 なら、俺の事を知る人間には『俺が死んだ』という記憶を持ってもらう。


 無力な子供が、魔櫃病で息絶えた、と。

 原作に登場する人物も、登場しない人物も。全ての俺を知る人間に……。

 『幼くして死んだ、オネネヴの弟』という情報を植え付ける。


 俺には、それが実現できる『知識』があるのだ。





 世界が灰色になったような錯覚。

 悶々とした葛藤を乗り越え、俺は完全な原作準拠へと振り切れたのだ。

 原作者としての責任を果たす……観測者となる覚悟を。

 

 とはいえ、記憶を改竄すると言っても、派手な行動をして原作に影響を及ぼしては意味がない。

 それに、イエル・ラギツェヴニ司教とオネゥケプの記憶を改竄することは不可能だ。

 魔神が魔力を暴走させても六神の庇護下に在る人間が無事だったように、『六神の注目』を受けている人間は魔力の干渉を拒絶する。それこそ魔力を司る神ですら干渉できない程に。

 『六神の祝福』は、注目を魔法で再現しただけで厳密には六神の庇護下に入っている訳ではない。注目を受けてない人間はみな記憶を改竄できると考えて良い。


 だから、ラギツェヴニ司教とオネゥケプには『俺が死んだ』という事後報告だけを受け取るようにしなければならない。

 

 これさえ実現できれば、無駄に魔櫃病の再現で苦しむ必要もないし、アイロツィという『原作に登場しない』人物の殻を脱ぎ捨てることが出来る。

 そのあと俺はこの世界で、原作のストーリーが流れる様を見続ければ良い。



 あと2年半。原作で俺が魔櫃病に侵されるまでの期間だ。

 2年半経ち5歳になったら、ラカクの思考を操る。ラギツェヴニ司教と、オネゥケプを家に来ないようにさせる。

 それから半年後に仕上げをして、俺はこの家を出ることにしよう。





 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 半年が経過し、俺は3歳になった。

 オネネヴは、俺の誕生日に木を削って作った人形を贈ってくれた。

 色が抜け、遠く感じるその光景に、何故か気持ちが落ち着かなくなる。

 ただの、原作外の一幕に過ぎないのに。

 

 オネネヴは、あれからあまり魔法を使わなくなった。

 

 オネゥケプが家に来るとき、今までふたりともが魔法の勉強をしていたが、今ではオネゥケプが魔法を使い、オネネヴがそれを防ぐ形式の模擬戦を行っている。

 勿論、怪我をしないようにルザが見張っている。


 ルザも、必要以上に俺と話さない。

 元々目を盗んで話すくらいだったが、それすらもなくなった。

 俺の正体を見抜いて満足したか。もし本格的に話すことがあるなら、それはきっと魔法や魔力の論文の話になるだろう。


 俺はと言えば、自分の体内魔力の操作をほぼ完璧な状態に仕上げることが出来た。

 魔櫃病の再現ならば既に出来る程の実力を得た。





 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 さらに半年が経過した。魔力操作の鍛錬は順調で、体内魔力を外魔力と反応させず体外に放出することが可能となった。

 体外で魔力固体にせず、体内魔力を操作できるようになったという事だ。これが、自己認識の拡張である。


 こうして放出した体内魔力は、まるで磁石の様に外魔力を引き寄せる性質がある。

 外魔力を引き寄せ、上手に操作してあげれば……一時的に外魔力が存在しない空間を創ることができる。

 つまり、他人が魔法を使えない空間を創ることができるのだ。


 外魔力を自分の意思で直接動かすことが出来るのは、この世界で魔神だけ。

 疑似的にその再現をしているとしても、この超越した魔力の操作をラギツェヴニ司教に見られたら、ルザがどれだけ隠してくれていたとしても、魔神の関係者と見做されるだろう。

 


 しかし、この1年間でラギツェヴニ司教はエトナヴ家に来ていない。

 理由はわからないが、お陰で伸び伸びと魔力操作の練習をすることが出来た。

 体外に放出した魔力を、体内と同様自在に動かす。それさえできれば、俺の目標は完遂したも同然。

 

 残り1年半。俺なら、きっと出来る。


 




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 体内魔力の外殻は、『自己と外界を隔てる無意識下の自己認識』であり、自己認識を拡張することで体内魔力を体内魔力のまま外に放出できる。

 この外殻は、通常誰しもが持つものであり、外魔力が体内へ入らないようにする役目がある。

 意思によって維持される外殻は、その意思の強さにより強度が異なる。


 端的に言えば、意思が薄弱なほど弱いのだ。

 そして、どんな人間でも強固な意思を保てない瞬間というのは存在する。



 睡眠中、あるいは気絶。

 意識が無い人間は、体内魔力の外殻が曖昧だ。

 無意識下で保たれてはいるが、薄く脆い。


 その状態の他人を、拡張した自己認識による己の体内魔力で侵食。

 これで他人の魔力を操作し、記憶の改竄も可能となる。


 相手の記憶を読み取れる程の万能さはない。操作は一方通行であり、相手の意思がこちらに流れ込むことはない。

 ただ、『アイロツィは魔櫃病に罹患し死亡した』という記憶を流し込めばいいのだ。

 

 

「ねぇアイロツィ君」


「なに?」



 かなり久しぶりに、ルザが話しかけてきた。

 ルザの記憶も操作が出来る対象だ。追加で何かがバレても、最終的に改竄すれば問題ない。

 まぁ、どうやって睡眠中のルザに近付くかが問題だが。



「オネネヴちゃんが魔法使ってるとこ、最近見た?」


「?ぜんぜん見てない」


「そうだよね……最近はめっきりオネゥケプちゃんの無詠唱魔法の練習ばっかりで、オネネヴちゃんはそれに剣で対抗してるだけ……」



 考え込むルザ。

 原作でだって、魔法を使わず剣だけで魔物を切り伏せられていたんだ。

 俺にとっては寧ろ、純粋に剣を振るう今の方が自然である。



「いいや、直接聞いてみよ」


「うん」



 どうぞ、ご勝手に。

 オネネヴが薬師を目指すようになるなら、なんだっていい。



「……ねぇ、何がそんなに気に入らないの?」


「……?なにが?」


「なんか、ずっと不貞腐れてさ」



 不貞腐れる、か。

 そうかもしれない。原作を壊して生き続ける覚悟がなかったから。原作の流れを戻さないといけないから。

 俺が、この世界に転生してしまったから。

 そんな被害者意識を抱いていることは、認めよう。



「いつかわかるかもね」


「話す気はないってことね。まぁいいや。勝手にしたらいいよ」



 何故ルザが怒っているのか、わからない。

 だけど、どうでもよかった。彼女は、原作に登場しないから。



 

「オネネヴちゃん、ちょっといい?」


「ハァ、ハァ……なぁに……?」



 模擬戦を終えて息切れを起こすオネネヴを呼ぶ。

 その様子に少し違和感を覚えた。



「最近魔法を全く使ってないけど、練習やめちゃったの?」



 ルザは直球でそんな質問をぶつける。

 そんな質問に対して、オネゥケプは困ったような顔をして。



「なんかね、まりょくが出せなくなっちゃった」



 その言葉に、俺の心臓が一際大きな音を立てた。

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