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原作者の異世界降臨~大人気アニメの世界に転生したけど、原作者だから今後の展開は読めます~  作者: 初凪 旭
葛藤

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20/26

020.グレイズ

「六神の注目が魔力に及ぼす影響とその理由を知ってる?」


「しらない」


「知ってるね。動揺しすぎ。はい、深呼吸」


「……」



 無理だ。相手が上手すぎる。

 何故バレているのかすらわからない。

 対策のしようがない。



「あ、もしかして、もしかして……!」


「……なに」


「ふふっ……」



 何か、とんでもないことを思いついたような顔で、ルザは笑っている。

 その嗜虐的な笑みは、あの時のルザを思い出させた。

 もしかして、なんだ。俺の正体に気付いたのか。



「……アウル・レドネカ」



 瞬間、思わず表情が凍り付く。

 しまった、そう思った時には遅かった。顔に出してしまった。

 このタイミングで……原作設定が存在する人物の名前が出てくるとは思わなかったから。


 

 アウル・レドネカは、原作に於いてアイロツィ同様名前しか出てこない陰の薄い人物だ。

 だが、『水の神の注目』を受け、人々を救う水魔法の使い方を広める人物でもある。

 『水魔法による魔法陣の再現と多重魔法起動に関する仮説』。彼が学生時代に書いた論文は、かの『天才魔法師』によって再現性が認められ、彼自身の名前も広く知られるようになる。


 それは、この世界に於いては未来の出来事。

 何故、彼の名前がルザから出てくるのか……。



「やっぱり、知ってるんだ……!」


「……」


「ふふっ、確定?確定だよね、わかっちゃった」


「……」



 凄惨な笑みで、俺の手を取るルザ。



「アイロツィ君、未来を知ってるんでしょ」


「……え」


「そうだよね!あんな革新的な論文書いておいて、再現性が認められないからって雑に王立図書館に収められるなんて!未来では絶対評価されてると思ったんだよ!えー、誰かな再現したの。私もできなかったし、水の枢機卿様とか?いやー、でもあの人詠唱至上っぽいところあるからなぁ?もしかして、まだ有名じゃない人だったり?あり得る!」


「……あの」


「なに?未来、知らないの?」


「うん、しらない」


「……ふ、ふふっ、ふふふ!嘘吐いた!やっぱりそうだ!未来を知ってる!」



 これからこの世界に起こる出来事を知っている。だから、未来を知らないというのは嘘だ。

 未来でアウル・レドネカの書いた論文が有名になることもまた、知っている。

 だが、切り抜かれたのはその部分だ。俺が『魔力の全て』を知っていることまでは……気付かれていない。



「はー、面白。じゃああれか、魔力の動かし方を感覚でやってるっていうのも嘘だね」


「……」


「やっぱり。未来で論文にでもなったんだ。辻褄が合うね~!ってことはもしかして、未来でも私ほど流暢に詠唱出来る人を知らない?ふふ、そうだよね、自信あるもん」


「……」


「いやー、魔神の注目受けてるよりもよっぽど危険だね、アイロツィ君」


「……なんで」


「だって、未来のこと知ってるならさ。処刑じゃなくて、死ぬまで情報吐かされるんじゃない?」



 思い至らなかった。未来に起きる大事件や災害も、俺は知っている。

 知っているということがバレれば、拷問なりされるかもしれない。この国にも暗部はあるのだから。


 その可能性に、背筋が凍り付く。

 ルザという一人の無名の脇役が、今俺の命を脅かしているのだ。

 俺の命だけじゃない。このことが広く広まれば、原作が大きく崩壊する。

 俺が未来の出来事を語り、その事件が防がれる。


 その時点で、エルトセムの物語は終了だ。



「そんな、怖がらないの」


「っ」



 知らず、目の淵に涙が溜まっていた。

 そんな俺の額を、ルザは優しく人差し指で突く。



「約束したでしょ?全部黙ってあげるって」


「……」


「あー、あと。研究に付き合ってっていうの、あれ無しね?」


「……なんで?」



 思いもよらぬ提案。願ってもないことだが、それは約束を反故にするということだろうか?



「勘違いしないでね。君の正体は黙っててあげる。その代わり……私の研究の、答え合わせになってね」


「こたえ、あわせ……?」


「そ。私は研究の過程が好きだから、答えを知ってる君に協力してもらうのは癪に障るの。けど、実現の難しい仮説が立った時。ちょっとだけヒントが欲しいな」



 どこまでも、自分のことしか考えていなさそうな顔をして。

 ルザは、俺に悪魔のような提案をしてきたのだった。

 ……いや。考えようによってはいけるか。



「るざ、もうひとつやくそくしてほしい」


「なに?」


「それでしったこと、だれにもいわないで」


「……ふっ、ふふ。大丈夫」



 心底面白そうに笑うルザ。



「私、意外と自分のことしか考えてないから」



 彼女は、当然のようにそう約束してくれた。









 



 ……心が歪み、壊れる音がする。

 

 もしも彼女が未来を知る為に積極的になる人物であったなら、俺の人生はここで終わりを告げていたかもしれない。

 それだけではない。この領地を、この国を、この物語を。そして、この世界の未来を全て改変していたかもしれない。

 運が良かっただけだ。ルザが、過程にこそ美学を感じる人物だったからこそ、間一髪で事なきを得ている。


 ラギツェヴニ司教に魔力操作を気付かれ、ラカクを警戒させ、ルザには未来を知ることまで気取られた。

 詰めが甘い。俺が自分の意思で決めた『原作改変』である、魔櫃病の克服までの期間、その半分も経過していないのに。


 だが、起きてしまったことは取り消せない。

 展開に行き詰まればバックスペースで無かったことにできる物語なんて、現実には存在しない。

 

 だからこそ……。

 これからは思い通りに事を運ぶために。

 魔力の操作を、極めるのだ。

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