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原作者の異世界降臨~大人気アニメの世界に転生したけど、原作者だから今後の展開は読めます~  作者: 初凪 旭
葛藤

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016.オネネヴ、7歳の誕生日

 俺が魔力を動かしていることは、ラギツェヴニ司教に知られていることは覚悟していた。一度知られたのに途中で辞める方が不自然かと考え、気にせず魔力を動かすことを習慣にしてきた。

 そしてそのことが父であるラカクに伝わっているであろうことも、また俺は予測していた。


 どうしてオネネヴたちが魔法を学んでいるのに、ラカクが俺を見ていた気がしたのか。その理由こそが、ルザの言っていた『魔神の注目』という言葉に繋がる。


 この世界に於いて、魔神自体は嫌悪される対象ではない。六神教の聖典には『魔神が暴走した末に、六神によって封印された』とされているが、暴走する前はこの世界を創造した神の一柱でもあるのだ。

 六神はそれぞれの属性を司っているが、魔神は魔力を司っている。魔神は封印されるようなことをしてしまったが、元々暴走してしまった原因は人間たちにあるから、これから先はそうならないように……というのが、六神教の教えである。

 

 魔神の暴走はこの世界に甚大な被害を齎した。

 世界に満ちる『外魔力』を性質変化させ、生物の体内魔力との境を曖昧にさせる。


 結果、六神の庇護下に居た者以外、体内に魔力を持つ生物は死滅した。

 体内魔力の外殻である自己認識を崩され、肉体は魔力と共に外魔力に溶け合い消失する。

 六神教歴が始まる以前の、『魔神大戦』の開幕。


 封印された現在の魔神は、魔力を司る神であり魔力の源にはなっているが、六神とは違い意思が存在しない。

 故に、魔神は嫌悪されていない。現代の人間にとって魔力は世界の法則の一種である。


 

 だが、魔神を信奉する者や、魔神の解放を望む者は異なる。

 彼ら彼女らは『魔神教徒』とされており、ここアゼラエラ王国において『魔神教徒』は処刑対象である。

 六神は実在し、魔神の封印もまた実在する。もし魔神教徒が魔神の封印を解いてしまえば、今度こそ人間は絶滅してしまうかもしれない。事実がどうあれ、だからこそ魔神教徒は嫌悪される。



「……うぅ」



 眠れない夜。思わず、弱々しい声が漏れる。

 ラギツェヴニ司教が魔力の確認をするのに使う魔法で、六神の注目が判別できる理由は知っている。それもまた俺が設定したからだ。

 そして、魔神が魔力を司る設定もまた、すべて前世で俺が設定したこと。


 だというのに。


 六神の注目を受けていないのに、魔力を操作している人間が。

 魔神の関係者だと見られる可能性を、俺は考慮していなかった。

 自分で決めたこと。自分で行ったこと。

 全て、自業自得だ。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 およそ2ヶ月が過ぎた頃。

 今日、オネネヴが7歳の誕生日を迎えた。

 

 この世界でも誕生日を祝う文化は存在する。オネネヴが初等学院に通い始めてから最初の誕生日会である。

 とはいえ、貴族のイメージらしく盛大に祝うという訳では無い。王都の中央貴族や王族であれば、他貴族を招いた誕生日パーティをすることもあるだろうが、ここは辺境貴族領。一番近い貴族を招いても、到着まで1週間以上掛かるのだ。


 そのため、世話になっている師や友人を招く程度である。オネネヴが現状誕生日会に招く程の友人はオネゥケプだけらしい。

 正直、学院でもっと交友関係を広めていると思っていたので意外だ。


 今日の誕生日会に出席しているのは、主催のエトナヴ家、友人のオネゥケプ一家。使用人一同、そして魔法の先生であるルザ。あと知らない髭面の男性が立っているが、ルザと話していることから恐らく彼女の父親だと思われる。



 あれからルザが俺に対して、話しかけてくることはあれど、脅してくるようなことはなかった。

 俺はこれからも魔櫃病の再現と回復が出来る程に魔力操作を極め、神官の目を欺かなければならない。

 それもラギツェヴニ司教に診られる可能性がある。何度も家に来ているのだから、そのぐらいの奇縁があっても不思議ではない。


 しかし、俺には理論がある。

 例え原作の人間関係が変わろうと、この世界の法則は変わらない。

 だからこそ、俺は魔櫃病再現の道筋を立てているのだ。




 

「オネネヴ、おめでとう。これあげる」


「オネゥケプ!ありがと!……これ、なに?」


「剣の持つところにまく、すべりどめ」


「ありがとう!たいせつにする!」


「ん。よかった」


 

 オネゥケプがオネネヴに対して贈り物をしている。

 微笑ましい一幕である。機能的でありながら、毎日のように剣を振るオネネヴの事を考えた贈り物。

 そしてそれを間近で見られる幸運に感謝しなければ。


 

「オネネヴちゃん、これは私と私の父からね」


「えっ、いいの?これ……おとうさま?」


「訓練用だ。問題ない」


「うれしい……ありがとうっ!」



 ルザが手渡したのは、鉄製の剣であった。見た目は本物そっくりだが、ラカクが訓練用と言ったので刃は潰されているのだろう。

 何度見ても、オネネヴに対する罪悪感が消えない。この贈り物の意味も、これから先俺が潰すのだ。

 生涯消えることはないだろう。そうして苦しみ続けることもまた、俺の責任なのだから。

 

 表情に出さないように決心する。

 変に表情に出すとすぐ気付かれてしまうから、2ヶ月前より演技力も向上しているはずだ。

 主にルザのせいである。

 

 

「ハハハ!嬢ちゃんが聖騎士になる時は俺がちゃんとした剣を打ってやる!楽しみにしときな!」


「お父さん、声が大きい」


「ルザせんせいのおとうさん、ありがとうございます!」


 

 ルザの父親は豪快に笑う。ルザは鍛冶屋の一人娘だそうなので、この男性が訓練用の剣を作ったのだろう。

 もじゃもじゃの髭に、槌を振るう腕は太く男らしい。だが、その豪快な態度は人の好さを感じさせる。……ルザの本性を知らなければ、素直に良い人だと認定できたのだが。

 

 


 他にもオネゥケプの両親からパンを、使用人一同からハンカチを、ラカクとジレフからは深緑色の可愛らしいリボンを贈られていた。

 現時点でオネネヴの髪の長さは肩甲骨よりも下まであるが、原作の設定では肩の上までしかない上、リボンで髪を纏めているキャラクターデザインの資料も存在しない。


 これは……原作改変の影響というよりも、なんだかんだ娘として可愛くあってほしいという気持ちからプレゼントしたように思える。

 将来的に髪を短く切り揃え、貰ったリボンも使われなくなるのだろう。


 その証拠にリボンを貰った時が一番微妙な表情をしていた。

 まだまだ子供。その表情はとても素直なのである。

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