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第22番 あなたと私、ドッペルドミナント


  お魚さん、歌いましょ

  歌って踊って水の中

  明日もいっぱい笑えるように


  お魚さん、踊りましょ

  歌って踊って水の中

  明日もいっぱい泣けるように


  お魚さん、手を出して

  おてて繋いで水の中

  明日もいっぱい怒れるように


  お魚さん、足出して

  みんなで駆けっこ水の中

  明日もいっぱい誇れるように






「おーい嬢ちゃん達、国の奴らはみんな帰ったぞ。」


 自分の部屋に戻ってイヌ君と話し合い、もとい取っ組み合いをしているとおじさんが声をかけてくれた。

 いや、違うよ!だってイヌ君が〜!と私の言い訳を呆れた笑いで流していく。んぅぇ〜!


「ほらほら嬢ちゃんたちはこっからどうする気だ?」


 何故かおじさんは部屋に入りながらイヌ君を撫で始めた。なんでイヌ君の方もまんざらじゃなさそうな顔なの?犬だから?

 おわ、一瞬で鉤爪を出して頭を狙って来た。ほんと短気なんだから。


「んー、何にも考えてないんだよねぇ。ここから先マイ君にどうするか聞かなきゃな〜。」


 マイ君のこの国での目的も詳しく聞いてないし、私にできることあるのかな。なんかイヌ君がふふんってマウントを取った顔をしてる気がする。絶対気のせいじゃない。私には力じゃ勝てないくせに〜!


「…なぁ嬢ちゃん、口を出しすぎかも知れんが…嬢ちゃんはマイ君とやらと家族なわけではないんだろう?嬢ちゃんがマイ君を信用しとるのはわかるが…血も繋がっとらんやつと家族でもないのに一生一緒とはいかんのではないのかい?人間いつかは自分で立たんといかん日が来るだろう。こんなおっさんの言葉が聞こえにくい年だとは思うが、少し考えた方がいいんでないのかい。」


 うっ、グサッと何かが刺さった気がした。確かに私がマイ君に頼りすぎてるのは事実だ。

 マイ君と出会ってまだ半年も経ってない、本当に偶々出会っただけの他人。それに私はマイ君の事、知らない事ばかり。

 この世界で私はマイ君がいないと何にもできない存在。文句言いつつもこの世界のこと教えてくれて、なんやかんや言いつつも見捨てずに側にいてくれてる。

 本当はまだあんなに小さい子供なのに、最近は今の大人の姿に慣れすぎてそのことを忘れそうになる。どんなにしっかりしてて頼れる人でも赤の他人で子供なのが事実だ。

 なんだか少し寒くなって来た気がするなぁ。あ…、最近が暖かくてすっかり忘れてた。この感覚は久しぶりかも。


私はいつも独りだ。


 今だにイヌ君を撫でていたおじさんの手を音が鳴る程強く振り払ったのはイヌ君自身だった。

 私もおじさんも驚きすぎて声が出ない。そのくらい突然だった。


「…こいつらにはこいつらの関係がある。例えそれが善意でも、他人が他人の繋がりを突つくんじゃねぇよ。」


 あまりの形相にほんの少し背中がゾッとした。初めて出会ったあの日と同じ、低く獣のように唸り声を上げるイヌ君におじさんも少し身を竦ませている。


「あ、ああ。確かに口を挟みすぎた。忘れてくれ。嬢ちゃんがあまりに良い子だからつい心配になってしまったんだ。」


 そ、そんな謝らなくてもいいよ!って慌てて言ったけどおじさんは何度も頭を下げてくれる。

 善意なのはわかってるし、言ってることも正しいとは思ってる!それに私達の関係が他人から見れば意味わかんないのは確かだしね!


 おじさんは謝った後も流石に気まずかったのか部屋からそそくさと出て行った。えー…今のイヌ君と2人は私も気まずいんだけど。イヌ君そっぽ向いたままだし。

 私も部屋から出ていこっかなって考えてた頃にボソッとイヌ君が吐き出す。え?何?


「…気にすんな…マイラスは…多分、お前を見捨てない…。」


 聞き返しきる前にイヌ君に顔面を叩かれたので聞きそびれてしまった。そのまま荒々しく部屋を出ていってしまう。

 ちぇ〜、誰も彼もみんな素直じゃないなぁ。イヌ君なりに気を使ってくれたのはわかってるってば。当分このことをいじれるし、なんならロゼちゃんに話してもいいな。

 ほんのちょっと嬉しかったのは内緒にするけど。


 でも予定と目的を考えとかないといけないのは確かだよね。私のこの国での目的…リュケを自由にしてあげたい、とかかな。あとはマイ君のお手伝い?

 …ダメだこりゃ。どうせ私に脳みそなんてありませんよぉ〜だ。

 全部ど〜でも良くなったので地面で大の字になって寝転ぶ。あー、サーシャちゃんに会いたいな〜。サーシャちゃん寂しがってないかな〜。二日も経ってないのに私は寂しいよ。会いたい会いたい会いたい会いたい〜。

 

 うわっ、急に体がビクっとして目の前が真っ暗になった。それが眠りだと気がついたのは夢の中に入ってからだった。







ここは…どこだろ〜?


自分の体の存在を感じるし意識もある。

ただすっごいあやふやな場所だ。

その場でくるりと回転すると水よりも抵抗の無い感じ。

もし無重力の場所に行ったらこんな感じなのかも知れないね。

行ったことないからわかんないけど。

普通に息もできてるし、なんで私こんなとこにいるんだろう。

その場で何度もクルクル回ってみる。

全然わかんない。


ん?誰か…いる?


私1人だと思ってた空間に誰か居たって急に気がつくの結構ホラーだ。

スッゴイびっくりした。

だってなんの気配も感じなかったんだもん。

誰でもびっくりするよ。

にしても…全然見えない。

私は目が良いから見えなかったことなんて今までないのに、それは輪郭がボヤけてよく見えない。

目を細めてじっと見つめる。

かろうじて分かったのは…女の子…?

もっと近づいててみたらわかるかなっと思って水の中を泳ぐみたいに手を動かしたら、何か大きなものが目の前を横切った。

わっ、また気配を感じなかった。

それは両手で抱えても胴に腕が届かないくらい太く大きい海蛇だ。

でも何でだろう、全く怖くない。

その海蛇は私を囲うように優雅に泳いでその誰か分からないものに牙を向いた。

えー、この状況なんなんだろう。

いっつも私だけ置いてけぼりなのなんとかなんないかな。

ん?話し合い?終わったの?

ふわふわ浮いてる間に謎生物のやりとりは終わったみたいで謎の子は消えてたし海蛇も透明になって消えた。

消えた先にはよく知ってる可愛い可愛いサーシャちゃんがふわふわ浮いてた。


サーシャちゃん!


嬉しくて叫んだけど音にはならなかった。

でもサーシャちゃんには聞こえたみたいで眠りから目覚めるように起き上がる。


お姉さん?


サーシャちゃんの声も音にはならなかったけど何を言ってるのかちゃんと分かった。


うわぁ〜夢の中でもサーシャちゃんに会えるなんて嬉しい!


サーシャちゃんの両手を握ってクルクル回る。サーシャちゃんは初め驚いてたけど一緒にニコニコしてくれた。


お姉さん本物?どうしてお喋りできてるの?


キャッキャと戯れているとサーシャちゃんが不思議そうに聞いてくる。

…ん?サーシャちゃんにも意識がある?あれ、これもしかして夢じゃなくて本物?

サーシャちゃんに本物か聞いたら少し考えた後に、あたしはあたしだよ?と返ってきた。

うん、この返事の仕方は多分本物だ。

えー、なんで会えたのか本当に分からないけど本当に嬉しい!霧みたいな夢の中でも会話ができれば問題無しだね!

あ、そういえばちゃんとマイくん帰って来てる?リュケも一緒に行ったはずなんだけど。

サーシャちゃんはにっこり笑って頷いた。よかった〜。ちゃんと逃げられたみたい!


サーシャちゃん、申し訳ないんだけどマイくんに私達はなんとか誤魔化せたよって伝えてくれる?リュケも心配してると思うし。


サーシャちゃんはキラキラした目でやっぱりお姉さんは強いね!って何かに1人で納得したみたい。

何かマイくんかリュケに聞いてたのかな?私達はもちろん無事だよ〜。


あ、急に意識が覚醒したみたいな感覚。

なんとなくだけど夢が覚めそうなのがわかる。

えー、短い。もうちょっとお話させてくれてもいいのに、とは思ったけど会わせてくれただけでも感謝だよね〜。

誰かわかんないけどありがとう!

もう一度サーシャちゃんに近づいて今度は目一杯頭をなでなでなでなでする。

ちょっと照れてる笑顔がすっごく可愛い。


もうちょっとしたら直接なでなでさせてね。


その言葉にサーシャちゃんは強く頷いて不思議な夢は暗転するように真っ暗になった。



夢の終わりにまた何か映像が見える。

暗い海の底で誰かが泣いてる。

小さな女の子。

ああ、泣かないで、私はここにいるよ。

どうしてそう思ったのか分からないけど、私はその言葉を最後に夢から覚めた。




 はっ!目を覚ましてキョロキョロすれば私の部屋だ。本当に一瞬、体感では2、3分くらいだったんじゃないかな。

 夢だとしてもサーシャちゃんに会えたし、気力MAX!なんで会えたのかわかんないけどこれも神子の力なのかな。神子って凄いね。


 とにかく私もできることをやりたいな。その場で立ってしゃがんで繰り返す。うん!飽きた!!

 結局私にできることなんて少ないなぁ。ゴロゴロ転がることを繰り返してしばらくした頃、入り口に誰かが立ってる気配がした。

 誰?って起き上がりながら見に行くとおじさんがいた。あれ?どうしたの?さっきの言葉なら本当に気にしなくていいんだよ?


 それもあるが…と妙におじさんは口籠った。おじさんの目的は違ったみたいでこちらに向いた時は何か真剣な顔をしていた。


「嬢ちゃん。ここまで嬢ちゃん達を巻き込んじまったことは…確かだ。巻き込んだからにはワシも腹を括らにゃならん。もし今後ワシが国のものに連れてかれた時、嬢ちゃんに一つ言っておきたいことがある。」


 わざわざ言いにくるってなんだろうな。おじさんを部屋に招き入れて私は話を聞くことにした。


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