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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第53話 毎日が巡って廻って楽しくて


 いやぁ、ここ数日は本当に怒涛のようだったね!そもそもサーシャちゃんが落ちてきたあの日から目まぐるしいくらいいろんなことがあったよ。

 全部終わってロゼちゃんのところでようやく落ち着けるかなって思った頃、マイくんがある人を連れてきた。

 サーシャちゃんの目の前に投げ捨てたその人を見てサーシャちゃんと目を合わせた。


「こ、この人どうしたの?」


 目の前に投げ捨てられたのはリンデルさんもといキツネさんだった。最後に見た時同様、妙に虚な目をしている。確かあの後にリスタールの人たちに連れて行かれてた気がするんだけど。


「拾ったから連れて来た。」


 ひ、拾ったって…その一言で終えるには説明が足りないよ…。マイくんたま〜に面倒くさがりだと思うんだよねぇ。


「こいつはサーシャを助けるのに失敗してその責任を感じて壊れた。なのでお咎め無し、なんて屁理屈でどっかの誰かに押し付けられたんだよ。ま、どんなやつだろうと人材としては使えるからな。こいつをどうするかは、サーシャが決めろ。」


 煮ても焼いても良いぞとだけ言ってマイくんはどこかに消えた。ちょ、ちょっと…

 目の前で座り込むリンデルさんは初めの頃とは違いヒゲも生えて髪もボサボサ、おでこの傷も顎を殴ったのも治りきってないし、ヤツれた顔でどこを見ているのかわからない瞳は正直言って痛々しかった。

 

 サーシャちゃんがどうするのか気になってとりあえず見守ってみる。観察するようにじっとキツネさんの目を覗き込んでいたと思ったらガシッと顔を小さい両手で挟み込んだ。そのまま目を見つめてニコッと笑いかける。


「キツネさん、キツネさんはあたしをあの人のところに連れて行く時も優しかった。あたしを地面に下ろした時、「すまない」って謝ってくれた。あたしが目を覚ましてること、あの人に言わないでくれた。だからあたし怒ってないよ。キツネさんも大変だったんでしょ?だからあたしは大丈夫だから、キツネさんも大丈夫だよ。」


 そう言ってサーシャちゃんは優しくおでことおでこをくっつけた。まるで母が子にやる愛情表現のように、大丈夫、大丈夫、と何度も繰り返す。それまで何の反応もなかったキツネさんは震えながら大粒の涙を流した。


「あ、あぁ…すまない…わ、私は、あなたの…あなた様に、あ、あぁ、あぁぁぁぁ…」


 サーシャちゃんが挟んだ両手を上から包むようにキツネさんは項垂れて泣き始めた。この人に何があってあんなことをしたのか知らないし知る気もないけど、サーシャちゃんが許したなら私に言えることは何もない。せいぜい同じことをキツネさんがやったらまた全力で殴るくらいなものだ。


 その後でマイくんに聞いたんだけど、キツネさんは変な宗教に半分洗脳状態にされていたらしい。失った人を、もう一度取り戻せるなんていう宗教。

 私がサーシャちゃんを探している時に見た教会、それとキツネさんと戦っているときに落ちてきたネックレス。あの三角の下を楕円にしたようなあの形。あれがその宗教のマークのなのだと教えてくれた。

 この国に愛しい人とのもう一度を求める人が何人いると思っているんだろう。そう思うと何だか気分の悪くなる話だな。

 キツネさんが取り戻したかった人は…そこまで考えてしまうのは無粋だろうか。自分を曲げてまで取り戻したい記憶は誰にも触れて欲しくないもののはずだ。だって、私がそうだから。

 その宗教は実際の解体に追い込まれたらしいけどマイくんはどこか腑に堕ちない様子で口籠もっていた。私は詳しく…いや、私が考えても仕方ないか。この宗教は世界中にあるって言ってたしもし今後出会っても私は関わらないようにしたい。


「お姉さんどうしたの?」


 考えることに夢中になっていて真下からサーシャちゃんが覗いていたことに気が付かなかった。キツネさんは一歩引いたところからこちらを見ている。よかった、がらんどうだった瞳に光が戻ってるや。なんでもないよ、とサーシャちゃんの頭を撫でておいた。


「サーシャちゃんはもういいの?」


 コクンと頷いたサーシャちゃんは少し得意げな顔で言った。


「キツネさんは今日からあたしだけの騎士になってもらうの。」


 ふーん、騎士かぁ。いいね、カッコイイ…騎士⁈ばっと顔を上げるとたった今聞いたような顔をしたキツネさんがブンブンと手と顔を横に振っている。


「だってマイラスがあたしが決めて良いって言ったもん。あたしまだ弱いしセラスィも上手く呼び出せない。ずっとお姉さんとマイラスと一緒にいるわけにはいかないでしょ?だからあたしのことを守ってもらうの。」


 良い案でしょ!と言わんばかりの顔が可愛いけど、カワイイけど!サーシャちゃんの護衛くらい私がいくらでもやるよ?

 でもサーシャちゃんは首を縦に振らなかった。


「あたし、強くなりたいの。でもね、そのためには多分お姉さんに頼ってばかりじゃダメなの。お姉さん、優しいから。多分あたしは頼っちゃう。それはダメなの。」


 これはキッパリとした拒絶だ。私には少なくともそう感じた。ショックだった。すっごいショックだった。私に懐いてると思ってた猫ちゃんが実は隣の家の飼い猫だったみたいな、とにかくショックだった。

 ショックで声も出せずに膝から崩れた私に少しもじもじしたサーシャちゃんが耳打ちしてきた。


「で、でもね、たまにで良いから…その…一緒に、寝てくれる?」


 もっちろ〜ん!!とあまりの可愛さにすぐさま復活した私はサーシャちゃんを撫で撫でする。もしかしたらサーシャちゃんって魔性の女?でも可愛いから何でもよしだね!

 後には完全に置いて行かれたキツネさんのみが残されていた。とりあえず目線だけでサーシャちゃんの可愛さを自慢しておいた。


_______________



「違う違う、そこはもう少し厚く縫わないと破れるわよ!」


 おばさまがたの圧に押されながらチクチクと針を進める。もう何本あの世に行ったのかわからないけど針が死ぬたびにマイ君が大量に準備した針を渡されるので大人しく縫うしかなかった。私が発狂するたびに楽しそうにするのだけはやめてくれないかなぁ…


 ロゼちゃんにお祭りに招待されてから意気揚々と街に向かえば、私に待っていたのはマダムたちの強烈な歓迎だった。

 ガイアの花祭りに使うスカートは自分で縫わないといけないらしく、最初に基礎になる布地に何枚も何枚も小さな布を縫い付けていく。みんなそれぞれの色に染めた布を持っていてみんなで少しずつ交換して自分のスカートを彩り豊かなものにするみたい。

 私は自分の染めた布なんてないけど会う人会う人みんなが布をくれるので正直もう勘弁してほしい。縫っても縫っても縫っても縫ってもぬってもヌッテモ…頭おかしくなりそう…

 少し離れた場所で同じように作業しているサーシャちゃんは…カナエちゃんだっけ?ここで仲良くなったショートカットの可愛い女の子と、金髪の小さなツノの生えた可愛い魔族の子、テリルちゃんの3人で楽しそうに縫いあいっこしている。正直羨ましい。私は…こんなに苦労してるのに…


 あ、そうそう、キツネさんは護衛の名目で同じ場所にいるんだけど沢山の女性に囲まれてタジタジになってるのが見える。うんうん、どうしよ、楽しそうにするマイ君の気持ちがすっごいわかる。

 でもまあ、少しやつれてるしまだ傷跡もあるけど身なりもきちんとしたし顔色も悪くない。そこだけは良かったんじゃない?


「ほらほら手が止まってるよ!」


 ふぇぇ〜、おばさま方の中でも1番キリッとしてる女性、コトさん。50半ばくらいの人で私の胸くらいしか身長はないのに圧がすごいし私が休むのをすぐに察知する。もう勘弁してください〜。


「ほら、かなり良いのができたじゃないか!」


 体感的に丸三日くらい縫い続けた気がする。本当は丸一日。体もバキバキ音がなりそうだ。あ、これが肩こり?

 いやぁ、でも頑張っただけあってすっごい良いのができたかもしれない。みんながくれる布は赤とかオレンジとかが多かったので明るい雰囲気のスカートになった。カラフルで可愛いミノムシみたい。あんまり可愛く聞こえないかもだけど本当に可愛良いんだよ?

 気に入りすぎて正直肌身離したくないけどマイ君には見せたかったのでスキップしながら見せに行った。

 じゃーーん!って広げて凄いでしょー!って言ったら「完成したのか」ってそっけなかった。なんでどこか残念そうなの?もしかして私の発狂がもう聞けないからとかじゃないよね?ね?


 その後に私はサーシャちゃんを含めたちびっこに混じっておばさま方に回るための足の動きを教えてもらうことにした。

 片足を軸にしてバレエのダンサーみたいに体の反動を使って回る。同じ場所を見つめると目が回るから視界を体を回す向きとは逆に動かしつつ素早く戻すか、難しければ顔を固定、それも無理なら危ないけど目をつぶれとのことです。うーん、私は目が回ったことがないからそれは大丈夫かな。


 横を見れば何人かの小さい子たちがくるくる回ってる。あ、よく見れば男の子とか男の人もいるや。話を聞けば男の人もお祭りに参加OKなんだって。ただ男の人はお祭りの間に鳴らし続けるダガっていう太鼓みたいなのとチャツっていう手のひらサイズのシンバルみたいな楽器をやる担当の人たちが多いみたい。へー、マイ君も楽器やるのかな。後で聞いてみよっと。


 それにしてもちっちゃい子がくるくる回ってるのは可愛いな〜。よちよちの子もいるしよろけて転んじゃう子もいる。あぁ〜、癒される〜。

 おっと、可愛い子を観察してる場合じゃなかった。私も回る練習しないと。ぶつかったりしちゃうと危ないから少し離れた人のいない場所…あ、町を囲む崖の上にでも行こうか。

 崖上まで駆け上がるようなジャンプで登る。ほんの少しでっぱりがある中でも広そうな場所を見つけてそこで回ってみる。えーと、片足を軸にしてこうステップを…靴邪魔だから裸足でやろっと。


 最初は3回くらいでバランスを崩しっちゃったけど何度かやるうちにコツが掴めてきた。くるんくるんと軽快に回る。景色が変わって空の青だけが目立って、それが妙に心地よくて、私はくるくる回った。

 どれだけ回っていたのか時間の感覚も無くなって、それでも風になったみたいにテンポ良く回っていたら体がガクンと揺れてバランスが崩れた。


「おい!!ったく何してんだよてめーは!」


 あれ?何この状況。何故か私は空中でマイ君に抱えられている状況だった。あ、ちょ、あの…流石にみんな見てる前ではお姫様抱っこは恥ずかしいかも…。

 マイ君に思いっきり頭叩かれた。ウェッ…⁈痛い…なんでぇ?

 下にいた子供たちにキャーキャー言われつつマイ君に地面に下ろされた。顔が熱いのはもう気のせいに出来ないんだけど。

 マイ君は私を下ろすとまた頭を叩いてすぐにどこかに消えた。あの、説明が欲しいです…。


 その後に鬼の形相のおばさま達にうけた説教から推測するに、私の回る勢いが凄すぎてそこらに中に小さな小石が降ってきてたらしい。

 あー…確かに崖だった部分がえぐれるように形が変わってる。それであんな高いところにいる私をどうにかできそうなマイ君があわてて呼ばれたのか…。

 呼ばれたところでちょうど私が踏み外して落ちてきたならそりゃぁ苦言の一つも言いたくなるよねぇ。後で謝っておこっと。


 私はその後おばさま達の目の前でちょうど良いスピードというものをみっちり覚えさせられた。ふぇぇ…

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