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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第50話 本当に長い話だな


「ねぇねぇ、まーいくん。」


 ずっと拳大の宝石を覗いてるマイくんを後ろから覗くと石の向こうではロゼちゃんがひらひらと手を振ってくれていた。確か通信戯?ってマイくんは言っていたっけ。電話みたいなものなんだろうね。


「花祭りってなぁに?」


 マイ君の説明を聞きながら心がワクワクしていくのを感じる。へ〜、ガイアにはそんなイベントがあるんだね!ロゼちゃんが私にも来てって言ってくれて結構嬉しい。

 お祭りなら楽しそうだし行きたいな〜。向こうの世界でもお祭りは眺めてただけで人混みの中を歩いたこともないんだよね。

 まだロゼちゃんのところから森に帰ってきたばっかりだけど町のみんなとは仲良くなったし、私は毎日だって遊びに行ってもいいくらい!今すぐにでも行っちゃう!


「お前犬と猫に稽古つけてたんじゃないのかよ。」


 おっと。ギクっとしちゃったけど適当に話を逸らそう。いや〜、2人ともちょ〜っと叩いちゃったらついに起き上がらなくなっちゃって。まぁ休憩も大事だしね。うんうん。

 目を細めたマイ君がこっちをじっとり見てる気がするけど笑ってごまかしておいた。だって手合わせして欲しいって言ってきたの向こうからなんだもん!


 そんなことより!マイくんが設置した転移陣?なるもので私たちの住む森とロゼちゃんの場所がつながるようになったんだよね。だから簡単に行き来できるし何か物を送ることもできる。

 でもその魔法陣を使えるのはマイくんとネコちゃんと奴隷だったエルフのお姉さんの3人だけ。他にも練習すればできるようになりそうな人もいるけどかなり難しいことなんだってロゼちゃんに教えてもらった。

 

 そういえばロゼちゃんが魔法使うところを見たことないなって何となく聞いてみたんだよね。ロゼちゃん曰く、昔に色々あった後遺症で魔法に回せる魔力がほとんどないとか何とか。

 難しくてよくわかんないけどロゼちゃんの分はネコちゃんがカバーするからいいんだってすっごく嬉しそうに話してくれたよ。

 ただその後すぐに蜘蛛の森に私たちと一緒に行って稽古つけてもらうように言われた時は膝から崩れてて、申し訳ないけど笑っちゃった。

 でも私に稽古つけろって言われてもなぁ…とりあえず毎日じゃれたり食べ物を取りに行ったりとか一緒にやってるんだけど…こんなのでいいのかな?まぁ、ロゼちゃんがいいっていうからそれでいいんだろうね。

 だから今この森にはそれなりに人がいたりする。私、マイくん、イヌネコんび、もちろんサーシャちゃんと…


「ねぇねぇ、キツネさん。キツネさんってば。キツネさんも食べよ?ねぇー。」


あ、またやってる。

 何故か一緒に帰ることになったのはキツネさん。当の本人はサーシャちゃんの護衛の目的らしく、サーシャちゃんの少し後ろから見守りたいのに妙に懐かれてしつこいくらいに話しかけられている。   

 あのサーシャちゃんがこんなに喋るのも衝撃的だったし、何よりあの可愛いサーシャちゃんを独り占めしているこの事実が心底羨ましい!!  

 悔しくてギリっと睨むとこちらの視線に気がついたキツネさんが困ったような視線を向けてきた。そんな可愛いサーシャちゃんに懐かれてるくせに困ったそぶりなんて贅沢もの!!



 あの日、全部終わって沢山いた奴隷の人たちも送りきって私たちもあとは帰るだけだと思った。でも沢山いた人達を送るのはさすがに大変だったみたいでマイくんは地面に寝転がってるし、サーシャちゃんは不死鳥のセラスィ…ちゃん?くん?この子は男の子?女の子?わかんないけどその子にくるまって寝てる。ちょっとフワフワの羽が気持ちよさそうで羨ましい。

 マイくんも疲れてるみたいだし帰れるのはもう少し後かもな〜。暇すぎて手元の石を積み上げるくらいしかやる事がない。

 実は少し離れた場所からたっくさんの兵隊さんっぽいのとか…なんだろう、メイドさんっていうのかな?使用人さんか。多分このお城で働いているんだろうな、って人達がこっちを伺ってるんだよね。

 実は私が殴ったり蹴ったり無茶苦茶したせいでお城半分くらい崩れてたりして。全部ぶっ壊すつもりだったけどネズミさん曰くこのお城には魔法障壁?みたいなのが張ってあるみたいでその分頑丈なんだってさ。

 確かに最初殴った時ピリッとしたもんな〜。多分あれのことだよね。あの魔法障壁も奴隷のみんなを使って張っていたっていうんだから腹立っちゃうよ全く。

 プリプリしながら地面をガシガシと突いて穴を掘っていると薄く響く低い音が地面を這うように広がった。

 え?何??あまりに突然で咄嗟に身構えたけど広がるような音なので発生先が掴みにくい。周りのみんなは音に気がついてないのか急に立ち上がった私を変な目で見てる。と言ってもマイ君とサーシャちゃんは寝てるし、キツネさんはボンヤリしてるし、こっちを見たのはネズミのおっちゃんだけなんだけど。


「やっと来たか。」


 寝てたはずのマイ君から声が聞こえてビクッとしちゃった。マイ君にはこれがなんなのかわかっているみたいで億劫そうに体を起こした。

 もう一度、今度はもっと大きい音が地面を震わすように響く。その音はさすがにみんなに聞こえたみたい。何故かネズミさんは青ざめた顔、キツネさんは変わらず地面に座り込んで空な顔。眠っていたはずのサーシャちゃんまで目を開けて不安そうな顔でこちらを見た。そのままセラスィちゃんとこっちに来たので頭を撫でておく。


「お前らちょっと離れていてくれ。」


 1人だけ全部分かった顔をしているマイくんが何か大きな紫の宝石と変な模様が刻まれた四方に二メートルはありそうな大きな石板みたいなのをマジックボックスから出した。

 それを地面に置いた途端にまたあのボゥっとした音が響いて石板が眩しいくらいに光る。瞬きをしたほんの一瞬、5人の人影が光の中から現れた。

 あっけにとられているこちらはお構いなしにマイくんがその人影に片膝を付いた形で頭を下げている。


 「ご苦労であったな。」


 五人のうち真ん中にいる一際に眩しいオーラみたいなものが出ている女性。その人が一言発しただけで世界が全部音を忘れた気がした。

 金の髪は美しく艶があり、ふんわりと背中まで広がっている。体の線を強調するような紅いドレスは煌びやかなのに品があって凄く美しい。何より薄いヴェールに包まれた目元が神秘さを強調させていて妙な迫力を生んでいた。

 はじめて会う人だけどこの人がとんでもなく位の高い人なことは誰が見ても明らかだ。

 気がつけば周りのみんな、陰に隠れていたお城の人たちも全員出て来て頭を下げていて、中には軽く震えて突っ伏している人すらいる。

 それだけの気迫を持つこの人は迷いなく私の前まで来ると誰よりも優雅に、深く、頭を下げた。


「長らく…心よりお待ちしておりました。神子様。」


 その敬意は私の横でしがみついている幼い少女に捧げられていた。


「此度は我らが不遜のより、長らく神子様にあるまじき事態をお招きいたしましたこと。ガイア国際連邦取締役代表、リスタール国124代目国王グラリオサ・リスタールが謝罪を述べさせていただきたくございます。誠に申し訳ございませんでした。」


 堂々とした立ち振る舞いなのに心の底からの謝罪がサーシャちゃんに注がれている。

 当の本人のサーシャちゃんは困惑した表情をしていたけれど少しの間を空けて、おずおずと目の前の女の人に手を伸ばした。


「あ、あたしは…確かに苦しくて…悲しくて、つ、辛いこともいっぱいあったけど…あのね、あたし、それでも、お友達もできたし…マイラスにも、おねぇさんにも、セラスィにも会えたの。だから、あの…嫌なことばかりじゃ、なかったんだよ?だからね、あのね…あたしは大丈夫だよ。」


 そんなことを精一杯話すサーシャちゃんの手を、目の前の国王様はうやうやしく手にした。


「神子様のその寛大すぎるお言葉…まさしくガイアの神子にふさわしい。どうかこの私に口づけさせていただく無礼をお許しいただきたい。」


 それだけ言うと最高級の宝石を手にしているようにその小さな手の甲に優しくキスを落とした。

 私からすればあまりに違う世界の出来事なことに声すら出せなかった。もしかしてだけど…サーシャちゃんって可愛いだけじゃなくて…すごい子…だった?


「これよりあなた様に働きました無礼の落とし前を我らでつけさせていただきたく思います。どうか…我らの判断につきまして、ガイア様の加護がございますように。」


 小さな少女には似合わぬ重たい言葉を捧げると女の人は背筋を伸ばしてくるりと背を向けた。


「これよりグズリア国87代目国王、グルコア・グズリアを第三大陸連法国交法違反に基づき沙汰を下す。連れて参れ。」


 国王様と一緒に来ていたお供の人がすぐ近くまで連れてきていた1人の男の人を目の前に投げ捨てた。話の流れからしてこの人がこの国の王様っていう人なんだろうね。目の前のリスタール国王様とは違って全く覇気がないや。

 …なんで真っピンクの服…これパジャマ?正直凄くダサいんだけど…

 あえ⁈何これ!

瞬きした間に自分の立っていたはずの場所が壊れた城地から台座を取り囲む観覧席のような場所になっていた。これはあれだ、裁判される場所。罪人が立つ部屋の真ん中には真っピンクのグズリア国王が立たされている。


「グズリア国王、何か言いたいことはあるか?」


 体の奥底に響くような声に背筋が冷たくなる。息すらするのが苦しいほど空気が重たい。今になってマイくんに聞いた話を少しだけ思い出した。

 現在のリスタール国王は前国王が後継者にさせた国取合戦を実力で抑えて国王の座に着くと、たった数年で地まで落ちてたリスタール国の価値を取り戻した。そして第三大陸のその他の国々からもリスタール国の権威を取り戻しつつある。

 史上最も王に相応しい王と呼ばれる女性。目の前で凛として見据えるこの女性がその国王なんだ。

 こんなに人の圧を感じるのははじめてで身震いをする。それはサーシャちゃんも同じなのか私の服を握る手が強くなっていく。


「よ、余は何をしたのだ?今日は一体何が起きておるのだ?カルカンはなぜここにいないのだ?なぜ余は裁判にかけられておるのだ?余は今から何をされるのだ?」


 これだけピリピリした空気が見えていないのか大きい体を必死に揺らして大粒の汗を流しながらグズリア王が喚いてる。

 もしかしてこの人、何も知らないの?国王様なのに、一つの国を壊して、沢山の人を殺して、沢山の人を不幸にして、それで何も知らないなんてことがあるの…?


「神子様の友という方よ、今は裁きの時である。怒りは尤もであるが少しばかり押さえていただきたい。」


 ハッと力が抜けた。こちらには目もくれず鋭い声が私を刺した。そうだ、もうサーシャちゃんは取り戻したんだ。今更怒ってもこの人には多分伝わらない。あとはもうこの人たちに任せるしかないんだ。


「そなたは己がこの国の王であることは知らぬのか?」


 リスタール国王様、静かに話をしているだけなのに一言一言が重くて冷たい。

 もしかして…この王様も怒ってるのかもしれない。いや、王様だけじゃ無いか。さっきから肌を刺すようなこの空気はここにいる人たちみんなの怒りなんだ。


「この大陸に名を置く国々は全てにおいて例外なく、神子様の独占を固く禁じ、神子様が生まれた国で幼き時は保護をし、神子様が身を置かれる場所は神子様自身に委ねるべく。貴様はガイアにて国を収める立場でありながらこの協定を知らぬと申す気ではあるまいな?」


 王様の重たい言葉にやっと自分の立場に気がついたのかグズリア王は何も言わずに涙目のまま体を震わせている。


「その上、国交上のガイア連邦では全ての国が不可侵である。貴様らグズリア国はその禁を破りカナロム国を亡き者にした。このことについて弁明はあるか?」


 そのことについても何も言わない。口はパクパクと動いているけど声にならないみたい。


「無言もまた肯定とみなし、貴様を国交法違反としてグズリア国王の権利を剥奪する。このことに意義あるものはいるか。」


 今更だけど上壁部分にスクリーンみたいなものが三つあって、豪華そうな服を着たおじさんたちがこちらに目を向けてた。

 なんか服が凄い高そうだし偉そうだし、どっかの国の王様なのかな。連邦なんちゃらって言ってたしここらの国々はなんか繋がってたりするんだろうか。


 コーーンと深い音が国王様のところから薄く広く響く。手に持った大きな杖で地面を叩いたのか。


「では一同の総意とし、グズリア国王グルコアの王位を剥奪する。尚、重罪を犯した貴様は蜘蛛の森に追放の刑に処す。この国をはじめ、ガイアに連なる全ての国に二度と足を踏み入れることは禁ずる。」


 その言葉を聞いたグズリア元国王は大声で泣き出した。文字通りわんわん泣いてる。ちょっと可哀想になってきたかも。

 多分だけど…この人、子供なんだ。子供のまま何もわからずに国王としてめちゃくちゃに使われてたんだろうな。やったことは別としても凄く哀れな人。誰か1人くらいちゃんと教えてあげた人はいなかったのかな。

 コホンと小さな咳払いが聞こえた。それはリスタール国王でヴェールで見えない目元がなんだか悲しそうな気がした。


「…グズリア国が奴隷の産出に力を入れようと、人に対する考えの違いを育もうと、我らは同じ王の立場として何も言わなかった。それはなぜかわかるか?グルコア。我ら王が目指すべきものは国民が安心して暮らせる世界だ。前国王が間違えた我が国リスタールが言えた口ではないが…グルコアよ、お前は間違えたのだ。知らぬでは許されない立場の貴様は知らぬ解らぬのままではいけなかったのだ。神子に手を出すことはこの大陸全ての命あるものを危険に晒すことと同意。この言葉が、貴様に届くことを1人の人間として…ただのグラリオサとして…願わせてもらう。」


 今までの迫力のある話しかたではなく優しく諭すような語り方。わんわん泣いていたグルコアもスンスンと鼻を啜りながら、それでも解らないのか嫌々と力無く首を横に振っていた。

 この人もちゃんとした人の所でちゃんとした王様の勉強みたいなものを受けていればきっとこの国は違うものになっていたんだろうな。こんな気持ち悪い国は二度と出来ないで欲しいと思う。


「国王の追放によりグズリア国はこれよりガイア国際連邦の預かるところとする。またグズリア国より次の王に相応しきものが出た場合は即刻にそのものに国を明け渡すこととする。このことに意義はあるか。」


 スンスンとグルコアが鼻を啜る音以外はなんの音も聞こえない。つまり今までのグズリア国は実質なくなって、リスタール国の一部になるみたいな感じでいいのかな?

 でも次の国王にふさわしいものが現れたら即刻開け渡すとか言ってるし…んー、国のことはよく分かんないや。とにかく私からすればサーシャちゃんみたいな子供が泣かなくていい世界を願うだけなんだけどな。


 今度はコンコンと短く2回地面をリスタール国王様が叩く。これで終わりなのかな?

 …あれ?でもこのグズリアの国王様は許せないけど…一番悪いのってサーシャちゃんのことをどうにかしようとしてた赤い服のあのおじさんだよね?カルカンだっけ、あの人には何もないの?


 絶望してるのか呆然と立ち尽くすグズリア王は2回の音を合図に引きずるように連れて行かれて、入れ替わるように違う人が入ってきた。あー、確かリスタール国王様の後ろに居た御付きの人だ。何か真っ青な顔でリスタール国王様に耳打ちしてる。

 ん?なんだかザワザワしてきた。国王様と御付きの人たち、あれ、なんでマイ君までそこにいるんだろう。

 数分何かを真剣な顔で話し合っていた後に凄い慌てた様子でマイ君が出て行った。その様子を見て会場の騒めきが更に大きくなる。

 この建物内には数えるくらいしか人がいないのにザワザワの声は何百人もいるみたいだ。見えない人が大勢いるみたいでちょ〜っと気持ちが悪い。

 マイ君が出て行ってからすぐに今度は3回リスタール国王様が杖を叩いた。


「静粛に。今しがたもう1人の断罪されるべき人間の死亡が確認された。罪人の名はカルカン。グズリア国の宰相にして神子に手をかけた最も裁かれるべき人間。裁きを下す前に命を消してしまったこと、私たちの附則にいたしますことを心より謝罪いたします。原因は追って調査させていただきたく後日必ずご報告いたします。此度はこのような形になってしまいましたがこれを持ってガイア大陸国連邦代表リスタール国国王グラリオサ・リスタールの名を持って閉廷といたします。」


 一瞬にして部屋が消えて騒めきもなくなった。ほんの瞬きをした間に目の前はまた瓦礫に囲まれた城地に戻っていた。

 今のも魔法なのかな。とにかくすごかったなぁ。あまりに現実味の無い出来事でずっと夢の中に居たって言われても信じちゃいそうだ。

 そういえばこっちの景色に戻ってもマイ君の姿は見えない。もしかしてマイ君は私たちの知らないところでこのリスタール国王様と繋がりでも持ってるのかな。


 今更だけどマイくんって本当に謎な人だよね。元の姿は子供なのに多分中身は凄く長く生きてるし、よくわからない人脈もあればマイくん自身もすごく強い。でもどこか子供っぽさが抜けてなくて、なんだか危なっかしくて…優しくて、近くにいると居心地がいい。

 私この世界に来て二ヶ月も経ってないんだよね。日数的に確か…六十日も経ってないはず。まだまだ何にも知らないんだよね。私もグズリア元国王のこと、何にも言えないんだな。

 そう思うとなんだか妙に心細くなった気がした。私もまだ1人ぼっちなのかもしれない。

そんな私の手に小さな温かいものが触れた。


「お姉さん、大丈夫?疲れちゃったの?」


 下を見ると緑のクルクルとした大きな目が心配そうにこちらを覗いていた。大丈夫だよ、ってサーシャちゃんの頭を撫でる。こんなにナイーブさんになるなんてちょっと私らしくなかったかもね。マイくんもサーシャちゃんもいる。ロゼちゃんだっているしほんの少ししか遊べなかったけどユエだって友達だ。

 少なくとも施設にいた時よりずっとずっと独りなんかじゃない。


「神子様、少しよろしいでしょうか。」


 自分のことを考えていて近くまで国王様が来ていたことに気が付かなかった。自分の身長とあまり変わらないはずなのに凄く圧を感じる。でもさっきの裁判の時と違ってどこか優しそうだ。

 その国王様は私に小さく会釈するとサーシャちゃんの目線に合わせて膝をついた。


「神子様にはまだ難しいお話かもしれませんがどうか聞いていただけると光栄です。神子様には現在、いるべき国がございません。本来は生まれ育った土地で家族と共に健やかに育たれることをお手伝いさせていただくことが全ての国の使命にございます。しかし悲しきことに現在はその選択が無くなってしまっております。神子様が望まれようと望まれなくとも、我が国リスタールは全てを持ってあなた様を支援いたします。それを踏まえ、あなた様の気持ちをお聞かせ願いたい。神子様は、これからどうしたいと思っておりますか?」


 口元しか見えないけど、この国王様は多分とってもいい王様なことは確かで、それ以上にとても、凄く優しい人なんだ。

 何よりサーシャちゃんを1人の子供として見てくれてる。サーシャちゃんのこと、ただの幼い女の子として見てくれる人がいること。さっきの最低な赤い服のおじさんの後だからかな。すごく嬉しいや。

 サーシャちゃんはもじもじと何か俯いて考えた後にぎゅっと私の手を握ったまま私を見上げた。


「あのね…あたしはまだ自分が神子なんだってよく分からなくて…。自分が普通じゃないっていうのがよくわかんない。でも自分がいたから周りの人が大変な思いをしたことはわかってるの。」


 サーシャちゃんは一生懸命話しながらも私から目を逸らさなかった。見上げる新緑の瞳が朝露に濡れたようで輝いて見えるや。_(:3 」∠)_


「あたし、お姉さんとマイラスが許してくれるなら…まだ2人と居たい。お姉さんはずっとあたしを守ってくれた。あたしに大丈夫って言ってくれた。あたしは…すごく嬉しかったの。それにマイラスはあたしに生き方を、誰にもあたしを渡さなくて良くて、みんなをもう失くさなくていい、そんな強くなる生き方を教えてくれるって約束したの。だから…あたしは2人といたい。それでも…いいですか?」


 なあああああああ、かわいい!!!サーシャちゃんかわいいよ!!!必死にそれでもどこか不安そうに話すその姿がいじらしくて可愛くて爆散するかと思った。


「もっちろん!!私の方こそサーシャちゃんと離れたくないよ!!」


 なでなでを通り越してぐちゃぐちゃにサーシャちゃんを揉みまくる。腕の中のサーシャちゃんは少し赤い顔でそれでも嬉しそうだ。


「かしこまりました。不躾な質問をいたしましたことを謝罪いたします。貴女様にはもう居るべき場所があったのですね。」


 国王様はゆっくり立ち上がると優しく微笑んだ。


「もうひとつお耳に入れたいことがございます。」


 サーシャちゃんはその話を聞いて大きく目を開けてボロボロと泣き出した。大きな声で私にしがみついて泣いた。サーシャちゃんが流す初めての喜びの涙だった。


「お兄様とお姉様が見つかりました。お二人ともお元気です。」

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