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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第43話 許さない


 迷路みたいな意味のわからない道を壊して壊して壊してようやく地上に出られた。さっきまでいたのはキツネに車で連れてこられた大きな家みたいな建物だったのか。

 私が中を八つ当たりで破壊しまくったので土埃が入り口から出てる。壊しすぎたせいで入り口とも呼べなくなってるかもだけど建物全部が崩れてないだけ良かったね。

 建物を見上げると上の方に銀で模られたマークみたいなものがある。上向きの三角で下の線が緩いカーブになってて、何だろうあれ…切り取られたピザの下三分の一みたいな感じ。


 そんなことに気を取られている場合じゃないのを思い出して慌てて前を向く。今はサーシャちゃんを探すのが先決だ。

 どこに向かったらいいか分からないけど、とりあえず適当な方角に向かって走ろう。肩に担いだマイ君がバッタバッタ揺れるけど許して欲しい。

 静かで薄く暗い知らない道。どれだけ走ってもこんなに揺れてるのに起きないマイ君が心配になってくる。普段は凄く頼れるし私よりずっと大人びてるマイ君だよ?でも元は小さな子供なんだから、今くらいお姉さんな私が心配してもいいよね。


 どのくらい走ったんだろう。暫くして5本の道が繋がる場所に出てきてしまった。

 ど、どうしよう。これどこに進めばいいの?世界はどんどん暗くなって夜が近づいてるのを感じる。

 周りをどれだけ見ても何故か全く人がいない。昼間は奴隷の人も兵隊さんもあんなにいたのに。

 焦りがどんどん募る。私一人でどうしたらいいんだろう。何もできない、私は独りで何もできない。

 急にひどく心細くなった。怒りも焦りも不安も私を動かす原動力にはなってくれなくて、思考も足も全てが固まった。

 私はマイ君が居ないとどこに進んでいいのかわからない。私はマイくんが居ないと何をして良いかもわからない。私は…私は…


「おや?どうしたんだい?」


 どうしたらいいのか何も分からなくなって真っ暗になった私に突然、優しい声がかけられる。声が聞こえるまで全く気配がなかった。

 でも私は何故か驚くこともなくて、声の聞こえた方へゆっくり振り返った。


「マーテル…さん?」


 リスタールで食堂をしていた女の人だ。なんでこんなところにいるんだろう。殆ど喋ったこともないし名前くらいしか知らない。でも、私には他に縋れるものがなかった。


「マーテルさん…あの、あのね、私…」


 そんなまともに言葉も出ない私をみてマーテルさんはただ、優しく微笑んだ。


「おやおやまあまあ、そんな顔して。」


 優しい声が、優しい手が、私を包み込んでくれた。暖かい手のひらが私の頭を撫でてくれる度、なんでこんなにも安心してしまうのか。気が抜けて目の前がどんどんボヤけていく。


「さ、サーシャちゃんが…いなっ、いなくなっ、て…私、守るって、言った…のに…!ま、マイくんも、お、起きなくて…わた、私…」


 うんうんと全部分かっているようにマーテルさんは頷いてくれる。優しい目付きがまるでお母さんみたいに暖かい。

 私は何に縋っているんだろう。私にはお母さんなんていないのに。



「大丈夫、あなたは答えを知ってるさね。」


 答えってなんだろう。分からないけど不思議と少しずつ不安がなくなっていく。

 頭を撫でる手がくすぐったくてあれだけ苦しかった心が不思議なくらい落ち着いていく。


「そこのねぼすけさんももうじき目を覚ますさ。それにさっき凄いスピードで走って行った魔道車なら見かけたよ。」


 前が見えないほどの暗闇に光が差し込んだ気がした。魔道車って…!

 さっきまで自分達が乗せられていた車を思い出す。サーシャちゃんはきっとそれに乗せられていると不思議と確信できた。

 マーテルさんが指差した行き先に目線を合わせると石造りの背の高い建物が見えた。あれがきっとこの国の城なんだ。


「ありがとう、マーテルさん。私、行かなきゃ。」


 不安も苦しさも収まって今はまた怒りが沸々と湧いてくる。そうだ、こんなところでぼんやりメソメソしてる場合じゃない。今この瞬間もサーシャちゃんが1人で大変な目に遭ってるかもしれない。

 そんな私を見てマーテルさんが微笑んだ。


「ほーらもう大丈夫さ。あなたは強い子だ。行くべきところが分かったならそこに向かいなさい。私は何も出来ないが、ちゃんと美味しいご飯作って待ってるからね。」


 怒りとは違う何かが体を駆け巡る。それは暖かくて何にでもなれそうに満ち溢れるような感情だった。

 私はもう一度マーテルさんにお礼を言って背中を向けた。自分の進む方に向いた時、耳飾りがリーンと響いた。


「行ってきます。」


 返事は聞こえなかったけど私は気にしなかった。

 一歩、また一歩と大きく足を踏み締めていく。自分でもかなり速いと思うスピードで私は足を動かす。この一瞬でも手足が疼いて止まらなかった。

 それにしてもマーテルさんにたまたま会えて本当に助かったな。会えなかったらもっと動揺したままでこんなに落ち着けなかった。こんな国にまで買い出しに来てるなんて、マーテルさんも大変だな。

 あーだこーだ考えていると腕の中でマイ君が動いたのを感じて慌てて止まる。


「マイ君!目、覚めた⁈ダイジョブ?どこも痛くない?」


 マイ君を丁寧に地面に下ろして座らせながら体を確認する。そういえばかな〜り酷い持ち運び方しちゃったけど…


「い゛っだ…クッッソ、なんだよおい…」


 初めは頭を痛がる様子に心配だったけど意識もしっかりしてきたし大丈夫そうで安心した。

 あ、やっぱり襲ってきた体の痛みは多分私の運び方の問題ですごめんなさい。

 とりあえず今の状況を手短に説明する。どんどん顔が険しくなって、頭に怒りの筋が浮かんでいくのを見て、なんだか私の方が冷静になってきちゃった。


「ほ〜、この俺にそんな喧嘩を売ってきたのか。そーかそーか。」


 頭に青筋を立てたままマイ君が笑顔になる。うわっ、今までで一番気持ち悪くて、一番…怖い…。

 怒ると笑うの怖いからやめて欲しいけどそんな事言える雰囲気じゃないので私もとりあえず笑っとこ。

 私の方を向いたマイ君が目を開いて止まった。え、何⁈急に黙らないで⁈


「…お前、なんで髪の毛の色戻ってるんだ?」


 へ?と後ろに流していた髪を手に取るといつもの見慣れたオレンジが目に入った。あれ?いつの間に戻ったんだろ。考えても全く思い当たる節が無くて首を傾げる。

 それを聞いた本人は「ま、どうでもいいか。」とあっさりしていて何かを考え込んでる。別に髪の色くらいマイ君がいいならいいか。


「…とりあえず今まで言った作戦やら流れやら全部忘れろ。もういい、めんっどくせえ。」


 はぁ〜、と大きく息を吐きながら頭をボリボリと掻く。作戦を忘れて…いいの?

 さっきから押し込めていた感情が溢れ出すように無性に高揚感が押し寄せる。


「見えるもん全部、何も気にせずにぶっ壊してやれ。俺が許してやるよ。クソが。」


 おお〜!!よっしゃ!!マイ君ならそう言ってくれると思ってたよ!!そんなことなら得意だ!!

 両手の指をポキポキと鳴らしながら準備を整える。今すぐに行くから、もう少しだけ待っててね、サーシャちゃん。

それじゃ…


「レッツゴー」


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