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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第40話 奴隷国家って名前から怖いよね


 マイ君の口ぶりからしてかなり大変な戦いになるかな、って身構えてたんだけど案外簡単に国の中に入れてしまってちょっと拍子抜け。森から白い壁を越えた時みたいに、わやわやするかと思ったのに。

 最初は私達のことをどの兵士さんも不審な顔して見てたんだけど、不思議な模様が書いてある紙をマイくんが見せた途端に急に態度が変わった。

 その上、奥から出てきたちょっと偉そうなおじさんにマイくんが何か耳打ちすると真っ青な顔をしてそのまま門の中に入れられた。ボディチェック的なものとか無いのかな。


 でもきっとこの先からが大変なんだろうな。さらに奥から出てきた偉そうなヘコヘコ低姿勢なおじさんに道を案内される。

 着てる服は豪華で上等そうだけど撫で付けた髪は地肌を隠せてないし、この人私の顎くらいしか背がないや。でも体重は私の倍くらいありそう。背中押したらボールみたいに転がりそうでちょっとやりたくなった。

 おっとダメダメ、余計な事考えてないで気を引き締めないと。何だか妙に静かなサーシャちゃんに目をやる。

 サーシャちゃんは引き渡される奴隷の設定なので薄汚れたフードと手錠に紐、それをマイ君が引っ張っている状態。手錠をかけた時、何だか虚な目をしてて心苦しくてみてられなかった。

 私が見つめていることに気がついたのかサーシャちゃんがこっちに顔を向けた。その顔は表情自体は不安そうだったけど目の奥は強い光が輝いていた。

 そうだよね、サーシャちゃんにはマイくんも私もついてる。絶対に大丈夫だ。だから、私は軽く頷き返してから前に向き直した。


 少し歩いて辿り着いたのは小屋風の建物しかなかった道のりの中で完全に浮いてる豪邸風の建物。

 というかここに来るまでの遠くないはずの道中が気持ち悪くて仕方なかった。この国の人は茶色か灰色な服の人ばかりとたまに兵隊さん風な人。

 そんなすれ違う人全員が私たちが通りきるまで道の端に寄って頭を深く下げていく。その中で三分の一くらいの人は頭を下げるどころか地面に頭を擦り付けるくらい土下座状態で、そうしてる人の首にはみんな奴隷印が刻まれていた。

 凄く気分が悪い。これが奴隷国家グズリア。こんな国に、サーシャちゃんは…


[おい落ち着け、今にも噛みつきそうな顔になってんぞ。]


 頭の中にマイ君の声が響いて体がビクつく。そうだ、落ち着かないと。私達はこの場所からサーシャちゃんを救う為に来たんだ。

 通された部屋の高級そうなソファーに進められるままに腰掛ける。サーシャちゃんは当たり前のようにソファーの後ろで立っている。

 趣味の悪いギンギラな内装の部屋、高そうな模様の入ったティーセットに琥珀色のお茶らしきものをメイドのような人が目の前の卓に置いた。独特な匂いがするお茶だな。

 そのカップを手に取ろうとした瞬間に低い怒号と鈍い音が響いた。驚いて隣を見ると私たちの案内をここまでしてくれたおじさんが急にメイドの女の人を蹴り飛ばしていた。メイドさんはただ地面に臥せっている。その首には当たり前のように緑に光る奴隷印。


「すいませんねぇ、気の利かぬ奴隷で。すぐに酒と何かつまめる物をお持ちいたしますので、ささ、どうぞ気楽になさっててください。後でくつろげる部屋にも案内させますので、少々ここで我慢いただけますかな。その間に私めが上の者に貴方様がお持ちいただきました商品のことを報告いたしますので。」


 それだけ言っておじさんはそそくさと部屋から出て行こうとした。その前に未だに地面に伏せっているメイドさんに今度は拳を振り上げたのが見えた。どす黒い感情が一瞬で湧きあがる。

 ねぇ、何するつもりなの?

あれ?おじさんが急にビクッと体を跳ねさせて尻もちをついた。周りをキョロキョロ見てたけどすぐに立ちあがってちょこまかと出ていく。

 殴られるのを覚悟してた風のメイドさんも何が起きたかわかんないみたいでポカンとした顔だ。

 よくわかんないんだけど何だかこっちまで気が抜けちゃってドス黒く染まった感情が一瞬で落ち着いちゃった。

 はぁ…と隣からため息が聞こえて振り向く。マイ君が呆れた顔してる??


[殺気を出すなと言ってんだろ。全く、おっさんが鈍い奴だったからいいもののお前が目を付けられたらどうすんだ。」


 何も無いようなすました顔をしているのに魔法で頭に響く声はやれやれといった感じだ。マイ君器用だね。

 というか、殺気?私そんな物出してないよ?

と疑問を頭に浮かべたらなんかマイ君の顔が引き攣った。あれ?何で???

 まあいいや。とりあえず出してもらったお茶でも飲も…え?何?

 延ばした手を止めるようにマイ君に掴まれた。


[飲まない方がいい。おそらくだが何か混ぜられてる。]


 ギョッとしてお茶をまじまじと見つめる。匂いはちょっと変わってるけど見た目は普通だよ?何でそんなことわかったの?


[俺ならそうするからだ。あの男がわざわざ自分の足で誰にも言わずに俺たちを己の家に案内したのは神子を取り戻した、っていう大き過ぎる手柄を自分だけの物にしたいんだろう。]


 へー、流石マイ君は頭がキレるなぁ。そんなの考えてもみなかったや。

 隣を見ると優雅な仕草でマイ君がカップを傾けたところだった。

 な⁈は⁈んぅえ⁈いい、いい今飲むなって言ったところだよね⁈


[飲んでねーよ。口つけたふりで中身は捨ててる。一応中身は舐めてみたがこの独特な甘みはカガナの根だな。ただの睡眠薬だ。まぁ、眠らせてから何をする気なのかは知らんが。通常は茶なんて味の薄いもんに入れたら知ってる奴ならすぐにわかる。だから酒に入れさせてるんだろう。]


 だったらお茶下げればいいのに、と思ったけどどっちにしろ気がついたし一緒か。

 ふぅん、睡眠薬か〜。ちょっと気になったのでぺろっと舐めてみた。

 んぶっ、香りとは違って味はなんかマッズい。クスリみたいな甘さがする。これ睡眠薬なんて気が付かなくても吐き出してた気がするや。

 んげぇーってやってたら何だか体がぽかぽかしてきた。それに頭もちょっとふわふわする気が…?

 頭の中でマイ君になんか体熱くなってきたって言ったら慌てるように水を渡してくれた。なんでって思ったけどとにかく飲めと言われるので飲む。んー、ちょっと落ち着いたかも。

 そんなことしてる間にさっきのメイドさんがお酒と焼き菓子みたいなのが乗ったお皿を持ってきた。色とりどりで美味しそうではあるんだけど…


[これも全部混じってるぞ。]


 ですよねぇ…そんなに私達を眠らせたいのかな。食べ物にこんなことして勿体無いなぁ。

 マイ君はお構いなしに口元に運んでは消していく。多分マジックボックスの中に入れてるんだろうな。実際には食べてないのは分かってるんだけど…いいなぁ、お腹すいたなぁ…ってぼんやりしてたらマイ君が干し肉くれた。ありがたくいただこう。

 後ろのサーシャちゃんには干し果物あげてた。サーシャちゃんばっか立たせてて申し訳ないなぁ。


 どれだけ待ったんだろう。2時間くらい?料理とかも出てきたけどどれもお薬入ってたみたいで全部マイ君がマジックボックスに突っ込む。

 ずっと立たされてるサーシャちゃんが凄く心配だったけどそこは抜かりないマイ君。認識阻害とかなんとかをかけてくれたみたいでマイ君の出した椅子の上に座ってるけど何も言われない。よかったよかった。


「これはこれは、大した物も出せませんが少しばかりは満足していただけましたでしょうか?」


 やることがなさすぎてぐでぇんとソファにもたれかかってたあたりで最初のおじさんが帰ってきた。机の上のお皿を見てニコニコニヤニヤしてる。うわぁ、うさんくさぁい。


「上に商品のことが伝わるまでもうしばらく掛かりますのでどうぞ別のお部屋で寛ぎ下さい。良い部屋を準備させていただきました。」


 ニコニコを崩すことなくマイ君が持つサーシャちゃんの手綱に手を伸ばしてきたけどマイ君も流れるように笑顔で拒否する。


「こちらは我々にとっても大事な商品。あなた様のように頼れる子爵様でもお渡しはできません。」


 へぇ、流石マイ君。有無を言わせない喋り方で押し退けた。あ、おじさんもちょこっと顔の筋肉が痙攣したけどすぐに戻った。みんな凄いね〜。


 そんなこんなで案内されたのはまたギラギラな部屋。趣味悪いと思っちゃうのは私が庶民感覚だからだろうか。

 でもそんなにまっ金々な縁のベッドにごちゃごちゃと花?の刺繍がしてある布団じゃ安眠できなさそう。


 それではごゆっくり〜とおじさんが出て行った途端、笑顔の消えたマイ君が部屋に何か水色みたいな光の膜を広げた。


「あ゛〜〜ーーーーっ!!!鬱陶しい!!!気持ち悪りぃジジイがよぉ!!!」


 こっちがビクッとするくらいの大きな声でベッドに飛び込むように寝転ぶマイ君。え?そ、そんなに大きな声出して大丈夫?


「部屋に完全防音の魔法張ったから大丈夫だ。それに向こうからこちらに干渉することも出来ないようになってる。サーシャも今のうちに寛いどけ。」


 横を見ると手錠してたはずのサーシャちゃんの手が自由になってた。いつの間に。

 とりあえず私もベッドに腰掛けると隣にくっつくようにサーシャちゃんも座って来た。少し緊張が溶けたのかホッとした顔になってる。

 何だか嬉しかったので頭をなでなでしとこう。かわいいな〜もう〜。


「今からの流れとして、おそらくあちらさんは俺らが眠りにつくのを待ってる状況だろう。その間にサーシャを横取りする気だ。何の警戒もなく飯を食ってここまでのこのこ着いてきた頭の弱いやつらだと油断しているはずだ。そこを突く。あいつらが手を出してくればこっちの勝ちも同然だ。若さだけが取り柄の頭の弱い商人だとたかを括ったんだろうが…くっくっくっく、俺らを舐めて逆に食われないといいな。」


 うっわ…ドン引きするくらいのすっごい悪人顔で笑ってる…。普通に怖いのでサーシャちゃんが見ないように目を隠しておいた。何だか教育に悪そうだったし。


「この調子なら想像より何倍も早く相手の懐に潜れそうだ。いいか、何事も自信なさげにしていれば相手には舐められる。わからない事があっても自信ありげにしていろ。そんで明確な答えは言うな。何かあれば『聡明なあなた様にはわかるでしょう』と微笑みながら言うんだ。馬鹿な奴らほど自分は誰よりも賢いと自負している。ここらのオツムの弱い貴族にはそれで充分だ。だが頭のいい奴にはやるな。逆に食われるぞ。」


 はえ〜、勉強になるな〜。ベッドの上でうぞうぞしながら喋っているとは思えないほど頭が良さそうな内容だ。

 んー、でもごめん、何言ってるかわかんないし難しくてできる気しないや。


「カガリの根の睡眠薬は即効性はないがその分効きはいい。もうそろそろ俺らが眠ったと思っているはずだ。もう少しすれば動き始めるだろうよ。相手が俺らの寝込みを確認して部屋に入ってきた瞬間に雑魚はお前が抑えろ。俺はあの子爵のキモいおっさんを叩く。サーシャは真っ先に狙われるだろうからこの存在希釈のローブを纏って部屋の隅にいろ。ある程度の攻撃も防げるよう陣も入れてある。」


 あ、私にも役目が回ってきちゃった。んー、抑えろって言われても怪我させちゃいそうだし難しいな。


「この部屋を壊そうが相手にどんな怪我を負わせようがどうにかしてやるからお前は適当にやれ。」


え、いいの?やった!

 ちょっと複雑そうな顔をしてたのがバレたのかマイ君が補足してくれた。

 てかサーシャちゃんをこんな目に合わせた国の人たちだった。あのメイドさんの扱いを見てもろくな人じゃなさそうだし別にそこまで気を使わなくてよかったかも。


「まぁそれまでは多少の時間があるんだから少しくらい休んどけ。せっかくの趣味の悪い豪華絢爛な部屋だぞ。」


 あ、やっぱここ趣味悪かったんだ。そりゃ部屋の隅にさっきのおじさんのミニチュア黄金像があるくらいだもんね。

 なんか顔見てたら腹たったから頭の部分をかる〜く叩いといた。簡単にへっこんだ部分からは金の塗装の剥がれた銅っぽい中身が見えている。

 やばいのでバレないようにひっくり返して置いておこう。そんな私を見てたサーシャちゃんがくすくす笑う。

 えっ、サーシャちゃんが笑ってくれるならこれボッコボコにしようかな。


「おい遊んでないでそろそろ位置につけ。防音壁解くぞ。」


 呆れ顔のマイ君がこっちを向いて寝転んでる。んあー、残念。折角サーシャちゃんが喜んでくれたのに。

 マイ君の隣に行って渋々横になる。そんな私を見てサーシャちゃんも部屋のはじに行ってローブを被る。


「あ、マイ君マイ君。」


「なんだ?」


 防音壁とやらを消そうとしたのか右手を上げたマイ君を静止して声をかける。その前に言っとかなきゃいけないことがあるからね。


「もし本当に寝ちゃったらおじさん達来る前に起こしてくれる?」


 冗談のつもりだったのに強めに頭を叩かれました。痛い…


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