第33話 三日丸々籠ってたが時間が足りん!
眠ったままのサーシャは女に担いでもらって、手荷物以外は全部マジックボックスに入れる。
何で全部の荷物を入れないのかって?住人じゃない人間が手ぶらでウロウロしてたら怪しいだろうが。
新しく手に入れたネックレスと腕輪、ベルトに指輪に…こんなにギラギラしてんのは全く趣味じゃないんだが、魔力回復補助アイテムを手っ取り早く作成するには安易なこの形にするしかなかった。
チョウのやつ、俺の魔力の流れと適性を読んでから半刻ほどで組み上げられる実力があんなら布に塗布してくれりゃあいいのに、それは面倒臭いだとよ。けっ。
まぁロゼが実力を認めるだけあってこれを身につけてからかなり魔力の回復スピードが上がった。その上、体力回復の弱効果までついてやがる。
あいつも国お抱え技師でもおかしく無い人材であることは確かなんだが…あのコミニュケーション下手じゃ無理だな。クモがいなけりゃ最後まで俺と挨拶すらできなかった可能性が高い。
そのクモは一度だけハッとした顔をしてうんざりそうな顔をしたと思えば渋々と丸一日消えて、その後げっそりした顔で帰ってきた。こいつも何やかんや面倒な身分なんだろうよ。ご苦労さん。
色々あったがまぁ、かなり実りのある数日だったんじゃ無いだろうか。思いも寄らない場所で必要なものも、良い伝手まで手に入れた。
普通なら都合が良すぎるかもしれないが神憑きと神子がいるならこんなもんだ。恐ろしいほどに都合が良くなったりする。
何でもかんでも疑心暗鬼になるのも身が持たんだろうしな。
「ちょっと、貴方なにをぼーっとしてらっしゃるのよ。先を急ぐんではなくて?」
ここ数日の疲労もあってついぼんやりしてしまった。欠伸を噛み殺しつつワクワク顔で準備万端な女の元にのんびりと急ぐ。
「全く、神子様もおられるというのに先が思いやられますわ。アサヒも大変ですわね。」
何故かロゼはこの女のことが気にいったらしく事あるごとに心配を口にする。心配事ならまだしも妙に責められてる気がするが俺がなにをしたって言うんだっての。
「私が同行出来ないのはとても心苦しいのですがこればかりは神の御心です。良いですか?この大陸の至る所には私の手足を送り込んであります。この先で会う可能性の高い『ネズミ』と『キツネ』には貴方達のことは知らせてありますわ。その二人には会えば分かるでしょう。出会った時用にあなた方にも名を差し上げましょう。」
名付け、ね。俺の目の前に来て見上げるように顔を覗き込んでくる。遠く澄んでいたロゼの青い瞳が少しずつ赤く染まった。
「…貴方は『ヘビ』ね。気を抜けばこちらが首を絞められてしまいそうだわ。」
ヘビね。そりゃどーも。こちらもなめして皮にされないように気をつけるさ。
その後ろで鬱陶しいほどに目を輝かせた女が視線を送ってくる。俺は絶対に反応しねえからな。ただロゼはちゃんと反応してやっていた。モノ好きめ。
「…貴方はオオカミね。孤高の美しい貴方は私の手には余ってしまうわ。」
妙に憂いた顔で女の頭を撫でている。ロゼの方が背が低いので少し背伸びしているが女は腹たつほどに嬉しそうだった。
「良い?何かあったらちゃんと私に言うのよ?すぐに蹴り倒しに行くわ。」
嬉しそうにする様子はオオカミどころか犬にしか見えない。気のせいか後ろに千切れんばかりに振る尻尾まで見える気がする。これじゃあロゼんところの駄犬とそっくりだな。
「さて、そろそろお行きなさい。昼間の方が他所からくる人々が多いので紛れ込みやすいですわ。」
へいへい。せっかちだな。ここ二日で何度か使った旧リスタール城地下に続く転送魔法陣の部屋の壁を開ける。
グズリアに直接行くのはかなり難しいと思っていたがリスタールからならまだ安易に侵入できるはずだ。それ用の偽造通行手形も作ってあるし何とかなるだろう、と言うのが俺の見解だ。ロゼには鼻で笑われたが。
「貴方達に、ガイア様のご加護が有りますように。」
そのガイアの神子を連れてる俺らに言うことかよ。とは思ったが一応礼代わりに右手を上げて返事する。
「頼んだ。」
俺の言葉には返事はくれなかったが、ただロゼは微笑んでいた。
俺ら3人は[ガイア最大多様国家、リスタール国]に足を踏み入れる。




