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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第25話 まさかコイツと会うとはな


 空気が震えて大きな衝撃音が響く直前、強大な気配が本当に突然に町中に現れた。考えるよりも先に体が動いてしまって窓から飛び出すように足が出た。

 ちょっと足をかけた窓枠が壊れたけど…うん、後でマイ君に泣きつこう。


 気を取り直して音のした方に向き直れば何か分からない大きな獣がいた。獣…じゃないや、虫か…な?蜘蛛かな??だ、だって分かんないよこれ!全身毛むくじゃらだし。足なんか多分三十本くらいあって、それも真ん中の山みたいな胴体を囲むように体一周にくっついてる。

 ギラギラした赤い目もこれまた足の付け根部分に胴体を一周するみたいにくっついてるし。山みたいな頭の部分、というか空に突き出してるてっぺんは多分お尻。糸出てるし。

 そんでもって沢山の足の内側にはなんか密集した牙みたいというか…イソギンチャクみたいというか、お口みたいなもの…

 一言で言うと気持ち悪い生き物。


 これ倒していいかな?いいよね?普段は私の身長くらいしか背丈がない蜘蛛しか見てないのに…これは50倍はありそう。100メートルくらい?それは言い過ぎかな。

 とにかくスッゴイ大きい。こんなにでかかったら食べ切るの大変かも…

 そこまで考えてニンマリと自分の頬が緩んだ。そうだよ、こんなに大きかったら


「街の人たち、食べる物当分困らないよね?」


 そうと決まったら早速狩らなきゃね!早くしないといっぱいある家っぽいものが蜘蛛が一歩進むだけで薙ぎ倒されていく。

 そもそもこの場所、崖に囲まれててそんなに見渡しよくないんだから暴れないでよ〜。スプーンを大きくして構えながら蜘蛛の方に大きめのジャンプを…ん?

 蜘蛛が脚を下ろそうとしている先に小さな女の子とそれを庇う男の子が見えた。その瞬間心の中が真っ赤なもので埋め尽くされる。


   ふ ざ け ん な


 地面に凹みかできるかもとかどうでもいい。いつもは足場に気を遣って踏ん張らないように動くけど今は足に力を込めてそこまで全力で飛んだ。蜘蛛がいるのは家が並ぶ場所のど真ん中。だったらそこから離せばいい。

 蜘蛛が降ろしかけた脚を空中で受け止めてそのままぶん投げる。体重比率的に投げられないかと思ったけど何故か空中なのに足場を感じて踏ん張れたので簡単に蜘蛛は宙に浮いた。そのまま吹っ飛べ!!


 うわっ、吹っ飛ばした勢いで強めの風が起こっちゃった。今ので家何個か飛んだかも…ごめん…。

 まあいいか、細かいことは全部後でマイ君に泣きつこう。足元の子供達が助かったなら十分。

 こちらを見て座り込んでしまったさっきの子供2人がマダラ模様のマントを羽織った人に担がれて避難させられていく。それを見送ってから蜘蛛に向き直った。さっさとコイツ倒さなきゃね。

 何故か空中にある足場にそのまま立ってるけどこれ消えたりしないよね?ちょっと不安。

 あ!ちょっと!こんだけ苦労して吹っ飛ばしたのに口から出した沢山の糸をそこらに張り巡らせて簡単な足場を作り出してる!蜘蛛みたいなことしないでよ!蜘蛛だけど!

 ん?その上で私を敵と認識したらしい。涎でベトベトの口を大きく開けて威嚇してくる。あの牙一つで巨人のナイフでも作れそうだ。

 まぁ大きい分動きは遅いし…遅いんだけど真下にはまだ人がいる気配があるんだよね…。

 さっきから高速で移動して避難させてる人が居るけどそれも2、3人だし結構時間かかりそう。どうしたら下に被害が出ないかな。簡単な作りでもみんなには大事なお家達でもあると思うし。


 そんな風に考えてると蜘蛛からの攻撃。口らしき部位からビャッと糸が飛んできた。普通に屈んでかわす。危ないな〜。

 蜘蛛って糸、お尻から出すんじゃないの?あ、お尻からの糸は足場造りに使ってるのね。ん?沢山の足の先からも糸が出てるね。君、凄い便利そうだね〜。…あ!そうだ!

 反動をつけて勢いよく崖の方にジャンプする。一回のジャンプで崖まで届いたのは自分でもびっくり。飛んだ反動で見えない空中の足場は崩れた気がしたけど気にしない気にしない。

 崖に手が届いた瞬間にスプーンと手を岩に突き刺してそのままぶら下がる。さっきよりも蜘蛛に近づいたから沢山の赤い目がこちらにギョロリと向く。ちょっと凄く気持ち悪い。

 そのままビュッと糸が飛んでくるのでまた勢いよく向こうの崖に飛びつく。そしてまた糸が飛んでくる。

 これを何回繰り返したか分かんないけど岩壁がボッコボコの穴ぼこになった代わりに絨毯の様に糸が空中に張り巡らされた。よっしコレで完璧!!!思ったより完璧な糸の絨毯ができたので大満足する。こうすれば下に被害がいかないでしょ!


 蜘蛛の目線よりも高い位置の崖にぶら下がる。そんな私に向けて牙を剥き出しに無闇矢鱈に糸をはいて出して投げて…あ、怒らしちゃった感じ?ごめんね〜。

 とりあえず蜘蛛までぶっ飛んでいって一番大きそうな赤い目玉を素早くスプーンでくり抜いてみる。お〜、石みたいに硬くてまん丸。両手で抱えなきゃいけない大きさだけどまぁまぁ綺麗かも。

 蜘蛛の雄叫びが凄くて頭が割れそうだ。仕方ないからとりあえずもう一個取っておこう。

 あれ?なんかさっきとったやつより柔らかいしなんか形がちょっと円錐っぽいけど…うんまあ、綺麗綺麗。 


 目を取られた蜘蛛は雄叫びを上げながら今度は脚をめちゃくちゃに振り回してる。うーん近づきづらい。目を二個とったくらいじゃ死角になんないよね。こんだけ目があるのは面倒くさいな…と思っていたら数え切れない衝撃音と共に目が爆発していく。おーー!!今の一瞬で8個も目が潰れた。猫ちゃん凄い!!

 感動してたら黒い影が通って蜘蛛の足が一本落ちる。犬くんだ。あれ?この2匹案外強い?

 とりあえず今ので怯んだね。その隙間を縫って私も蜘蛛の足を3本立て続けに力任せに引きちぎってスプーンで分断して蹴り上げて外した。蜘蛛の足は簡単に取れるから好きだよ。食べやすいし。

 蜘蛛もそれに負けじと糸を吐いて残った足を振り回して雄叫び?を上げながら応戦する。けどもう勝ち目はないと思うよ。

 

 着々と足を外された蜘蛛はそのまま自分のかけたネットの上でもがいている。あと3本だけ足が残ってるけどもう立てないみたい。その3本も猫ちゃんの銃撃と犬君の攻撃により落ちた。

 白かったのに黒茶色いベトベトで汚れた絨毯の上にはただ雄叫びを上げる気持ち悪い黒い山がいるだけ。

 どうしよう気持ち悪すぎてトドメ刺したくない。でも身体の部分の外骨格が硬すぎて犬くん猫ちゃんじゃトドメ刺せないみたい。水の銃撃も鉤爪も全く入ってない。うーん…上から行くか下から行くか…

 なんて考えてる間に蜘蛛の口の中に大きめの水の塊が入っていった、と思ったら大きな爆発音っぽいのと共にに蜘蛛がびくんと揺れて断末魔を最後に動かなくなった。

 お?爆弾か何か入れたのかな。私が蜘蛛の口の中に入ってトドメを刺さなくて良いみたいで良かった〜。


 とりあえず倒し終わったわけだし犬くん猫ちゃんのところにでも行こうっと。2人の気配のある方に向かっていくとまたギャーギャー喚いているのが聞こえてきた。この2人、喧嘩してないと気が済まないのかな?


「てめぇだってあんとき俺に向かって撃ったじゃねぇか!!!絶ってぇ狙っただろ!!」


「はんっ!イヌッコロにゃら避けれると思ったのに買い被りすぎたかにゃ!あーあーせっかく姫さま直伝の体術にゃのにイヌッコロにゃんかが使うのは勿体に゛ゃっ!!」「だっっ⁈」


 とりあえずうるさかったので2人の頭を叩いた。すんごい手加減したけど反応を見るに痛かったとは思うよ。でもロゼちゃんの蹴りよりマシでしょ?

 おかげで静かになった2人にひとまず手伝ってくれたお礼をした。痛がってあんまり話が頭に入ってなさそうだったけど。


「お、お礼を言うのはネコ達のほうにゃ。ありがとうございますにゃ。流石にあのサイズはネコ達でも難しかったですにゃ。それを1人も死にゃずに倒せたのはあにゃた様のおかげにゃのです。」


 逆に深々と頭を下げられてしまった。えっいやっ、あっ、そんなに大したことしてないしそんな、えっ、どうしたら良いのこれ。


「イヌッコロもお礼を言うのにゃ!姫さまがわざわざ叩き込んでくださった礼儀はこう言う時に使うんだにゃ!」


 腕組みをしてソッポを向いていた犬くんの頭を叩きながら猫ちゃんが叫ぶ。また言い合いが始まるかと思ったけどこれは猫ちゃんが正しいと思ったのか渋々お礼を言ってくれた。

 うんうん、みんな悪い子じゃないね!多分この2人私より年上なんだけどね!


「それにしてもこの蜘蛛?みたいなやつなんなんだろうね。すっごい気持ち悪い。」


 私からしたら当たり前な疑問だったんだけど2匹が顔を見合わせてるから何か変なこと言っちゃったのかも。ごめんねこの世界の常識に疎いものでして…


「てめぇ何も知らねぇでコレ倒したのか?」


 犬くんが死んだ蜘蛛を見る目と同じ目を向けてくる。そんな目をしなくてもいいのに…そんなに呆れることしちゃったかな?


「えっと、あにゃた様はどこまで姫さまに聞きましたのにゃ?」


 えー…どこまでと言っても…カナロムがグズリアとかいう国にやられちゃって、リスタール国とやらが意味わらないことで戦争してた…とかかな?あなた様とか呼ばれるのなんだかくすぐったいからアサヒって呼んでくれる?


「なんも知らねぇじゃねぇか!!」


 いや、そんな言われても…そもそも国の名前とかも知らなかったし…そもそもこの世界に来て初めて国に来たし…そもそもこの世界に来たのも最近だし…


「イヌッコロうるさいのにゃ!」


 またネコちゃんにしばき倒されてる。まぁまぁ落ち着いてよ。じゃないと話が進まないからさ。


「アサヒ様が何を知らにゃいのか分からにゃいので全部説明させていただきますにゃ。そもそもこの土地に住む魔獣のにゃかには稀にマナを吸いすぎてオーバードーズしてしまう魔獣がいましたのにゃ。そうにゃると大きく凶暴ににゃってしまうのけどそれは年に一度あるかにゃいかくらいの頻度しかにゃかったのにゃ。」


「…それがカナロムが崩れたあたりから状況が変わった。少しずつオーバードーズした魔獣の出てくる量が増えて、強さも比べ物になんねぇほどおかしくなった。そんでそいつらがなんでか知らねぇがカナロムが無くなった後はこの場所を狙う様になりやがった。」


「いつどこに来るかわかんにゃいですし理由は分からにゃいけど突然町にゃかに出現することも多くて正直困ってるのですにゃ。普段はスローピーバードとかステューラーとか小型の魔獣ばっかりで1人でもにゃんとかにゃりますが、今日みたいにまさかデーモンまでドーズ化したのが来るとは思わにゃかったですにゃ。本当に助かりましたにゃ。ありがとうございますのにゃ。」


 ふーん、よく分かんなかったけど色々大変なんだね。いっつもそんなのと戦ってるからこの2匹の服が所々ボロボロだったのかな。その上今は蜘蛛の体液でべちょべちょ。私も結構べちょべちょだけどね。

 上を見上げて今だに蜘蛛が乗っている糸の絨毯を見上げる。確かにこんなのがいきなり出てきちゃったら子供達とかどうしようも無いよね。子供に手を出すとか本当にありえない。あんなにかわいいのに!!!


「姫さまってロゼちゃんのことだよね?ロゼちゃんにこの町を守れって言われてるの?」


 ロゼちゃんまだ小さいのに色々やってるのかな〜。凄いしエライよね〜。私なんか自分のことでも精一杯なのに。


「はい!ネコは姫さまの手足ですのにゃ!だから姫さまに言われたことは全部やりますにゃ!姫さまに拾われたあの日から、ネコはネコですにゃ!!!」


 おー、ドヤ顔しながら尻尾を振る猫の幻覚が見える。一瞬猫ちゃんの過去っぽいものが見えたけどこれ触れてもいいのかな。気になるけどあまり人のこういうところって深く聞かない方がいいよね?よし、何も聞かなかったことにしよっと。


「あれは…にゃん年前だったかもう思い出せにゃいけど、ネコがまだ殺し屋をやってた時だったにゃ。」


 おーっと流すつもりだったのに勝手に話が始まった。まぁ気になるし素直に聞いとこ…殺し屋⁈


「元の主人の顔も思い出せにゃいけど、昔のネコには名前がにゃかったにゃ。そして言葉も話せにゃかった。動物は動物らしくにゃき声を上げてろとネコはニャーニャー鳴く事しか許してもらえにゃかったにゃ。そんなゴミだったネコが命令された姫さまの暗殺も失敗して、ネコは死ぬだけだと思ったにゃ。そんなゴミに姫さまは名前も言葉も知識も居場所も、全部全部くれたのにゃ。圧倒的にゃ強さ、凛とすました表情と、清廉にゃ立ち振る舞い。あの晩、月の光に照らされた姫さまは…ああ、姫さま…」


 恍惚とした表情で滑らかに回る口と隣の犬くんの呆れ返った顔でここまでは猫ちゃんのお決まりの話なんだろうと分かる。猫ちゃんは完全に違う世界にいっちゃった。

 帰ってくる様子がないので猫ちゃんは放置して犬くんと話でもしよっと。


「犬君もそんな感じ?」


 呆れ返った目で猫ちゃんを見ていた犬君に聞いてみたら一瞬で睨まれた。そんなに睨まなくてもいいじゃんか〜。睨みというより獣の威嚇みたいで怖い。


「い゛っ!!!」「に゛ゃっ!!!」


 そんな2人を後ろから大きな拳が襲った。いつの間にかいぬねコンビの真後ろにさっき子供達を避難させてくれてたマダラ模様のマントを着た人が立ってた。…デカいなぁ…2メートルは絶対にあるね。フードで顔はよく見えないけど子供なら泣き出しそうな雰囲気してる。


「ふ、ふくろう、いてぇよ!!」


 犬君が噛みつきにかかったけど大人が子供を相手してるみたいに簡単にいなされてる。この人の名前は梟なんだね。動物園パーティーだ。

 そんなワンニャン達の頭を今度は包むように優しく撫でつつ指で向こうの建物を指す。さっきまで私とマイ君がいた場所だね。そこに行けってことかな?

 梟さんは身振り手振りのみで何も言わない。もしかしたら喋れないのかもしれない。

 あれっ、いぬねコンビが綺麗になってる。あ、私も綺麗になった。梟さんがやってくれたのかな?とりあえずお礼言っとこう。蜘蛛の体液まみれなままなのかなり気持ち悪かったし。


「あー、ふくろう、俺ら先にこの蜘蛛どーにかしねぇといけねぇんだよ。こんなもん上にあったら邪魔だし危ないだろ?つってもどうしていいかわかんねぇけどな。」


 犬君が上を見上げる。んー、たしかに邪魔かも。もし落ちてきたらギリギリ残ってる家も全滅しちゃいそうだしね。この蜘蛛の糸の絨毯、布みたいになってるから色々使えそうだけどなぁ。


「ねぇねぇこの蜘蛛食べるの?」


 普通に素朴な疑問だったけどみんなの顔が険しくなった。あれ?普通の蜘蛛は美味しいけど皆んな普段は食べないの?それともこの蜘蛛が美味しくないのかな?


「…オーバードーズした魔物はたべらんにゃいのにゃ。」


 猫ちゃんが吐き出した言葉は中々に憎々しげだった。


「オーバードーズすると魔獣のにゃかにあるマナの量が狂うのにゃ。人間は肌にマナが触れても生きてられてるように多少のマナャなら大丈夫にゃ。だけどあまりに多すぎるマナを体に入れると自分のオドと反発しあって身体が壊れてしまうのにゃ。」


 待って待って、難しい話は理解にちょっと時間がかかる。えっと…人間の体内にある魔力がオドで、自然に溢れてる魔力がマナでしょ。オドとマナは少し違っていて、人間はマナを作り出すことも魔道具なしで使うこともできないもの…だっけ?

 つまりマナが沢山含まれた物を食べると身体の中の自分の中のオドと混ざれなくて身体壊れちゃうってことなのかな?ふーん、魔力ってなんか便利そうに見えて面倒くさいね。


「…えっ!これ食べられないの⁈」


 コクリと同時に頷く2人にガッカリしすぎて膝から落ちそうになる。せっかく町のみんながお腹いっぱいになれると思ったのに!!


「魔道具でマナを吸い上げれば多少はマシになるが…全部吸う前に魔道具の方がイカれちまうからな。大量の魔石の塊でもあればなんとかなるかもしんねぇがそんなもんどこにもない。無理なもんは無理だ。」


…魔石…


「あ、待って、マイ君なら持ってるかも。」


 目の前の2人が…あれ?フクロウさんどこいったんだろう?まぁいいや。


「マイくんなら色々知ってるし、もしかしたら出来るかもしれない!」


 さっきから2人ともなんでそんな複雑そうな顔なの?


「マイって…俺らを回しまくった…」


「姫様の目に入るの禁止…」


 そういやこの2人マイ君にお仕置きされたんだっけ。まぁいいか大丈夫大丈夫。


「そうと決まればマイ君のところまでレッツゴー!」


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