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破壊神と呼ばれた私は!  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
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第17話 折角、教えてやってんのに


 あれからすぐにでもグズリアって国に向かうのかと思ったけどそうではなかった。


「準備も策も無しに突撃するわけないだろ、お前はバカなのか?」


 とはマイくんの言葉である。確かに言われた通りなので大人しくすることにした。

 マイくんはバカと言うのが口癖なのだろうか。もうバカバカ言われすぎて呼び名みたいになってる。


 サーシャちゃんのことだけどあれからまた一日中眠っていた。マイくん曰く神子は疲れやすいらしい。神との対話は夢の中で行われるらしいけどそれが思いの外体力も精神力も削られるんだと言っていた。そんなものなのかと納得しておく。

 起きてきたサーシャちゃんにまたマイくん特製のスープを渡して食べてもらう。少しでも体力をつけて欲しいからね!


「サーシャちゃん、そろそろお風呂入る?」


 服は着替えても髪もボサボサで薄汚れた肌。どうみてもボロボロの姿のままは余りにも可哀想なのでお風呂に誘ってみた。まあ、ちょっと、匂うしね。


 ん?中々返事がないなと思ってサーシャちゃんの方を見るとキラキラとした目がこっちを見上げていた。


「お風呂、あるの?」


 おお〜今まで見た事無いくらいすっごく嬉しそう。やっぱりお風呂は気持ちいいもんね。ずっと身体を濡らした布で拭くだけだったし更に気持ちがいいと思うよ。

 そうと決まれば早く行かなきゃ!お湯から上がった後に体を拭く布と少し大きいけどサーシャちゃんも着れるだろう服を持ってお風呂に向かう。そろそろマイくんがお湯を沸かしてくれている時間だ。

 水場に着くとやっぱりお湯が沸いていて簡易的な衝立の向こうには湯気が立ち上っている。

 いそいそと衝立の向こうに周ると見慣れない物を見つけて驚いてしまった。いつも荷物置きにしている岩の上のカゴの中に真新しい肌着と着替えが置いてあった。それもどう見ても子供用。 

 マイくんだろうか、マイくんだろうな〜、マイくんしかいないし。本当に素直じゃないなぁ〜

 そんな私を見て真横にいたサーシャちゃんがゆっくりと離れて行った。え?ニヤニヤはしてたと思うけどそんなに気持ち悪い顔してた?

 サーシャちゃんの顔がかなり引き攣っているので気持ち悪い顔だったらしい。


 とりあえずサーシャちゃんに岩の上にあった着替えを渡す。こちらを伺う目をしていたのでなんとなく了承の意味合いで頷いておいた。とにかく身体洗おうか。


 さっさと自分の服を脱いで先に身体を流しに入る。先に入れば後に続いて来るかなと思っていたのだけれどいつまで経ってもサーシャちゃんが来ない。

 様子を伺うとまだ着替えを受け取ったままの様子で立っていた。まさかお風呂の入り方分かんなかったかな?

 出来る限りやんわり聞くとどうやら他人と一緒にお風呂に入る習慣がないらしい。ふむふむ。確かこういうのって裸の付き合いってやつだよね!それならばと、サーシャちゃんの服を脱がせようとして両側の裾を掴んだら、


破れた。


 数秒時が止まった後ありえないものを見る目をされてしゃがんでしまったので少し離れつつ流れるような土下座を決め込む。

「すいません!!!!!」

 本当ごめん。涙目なのが居た堪れません。わざとじゃ無いんです良かれと思ったんです。本当申し訳ございません。

 ま、まあ新しい服もあるし許して欲しい。すいません調子乗りましたごめんなさい。


 とりあえずオドオドしているサーシャちゃんをこのままお風呂に誘導しよう。

 手に卵を握ったままだったので着替えの隣に置いてあった布が貼られた手のひらサイズの小さなカゴを差し出す。

 多分これ卵置くようだと思う。サイズ的にも卵がほとんど動かないくらいぴったりだし布の下には何を入れたのかわかんないけどクッションみたいになってるし。

 マイくんってば気が利きすぎじゃない?さすがマイくん!と自分の手柄じゃ無いけど自慢げにしておいた。

 それでもサーシャちゃんは卵から離れたくなさそうなのでカゴごとお風呂に向かうことにした。それだけ大事なんだろうなと思う。今だに近づくとビクッとされるもん。

 え?私が信頼されてないからとかじゃないよ?絶対ちがう。


 それはさておき、身体は自分で洗えるとのことなので石鹸と桶を渡した。この桶を使ってここの湯船からお湯を汲んでこっちが洗う場所で、ざっくりと説明した後もう一度説明的な意味合いで自分を手早く洗って湯船に入った。ふぁぁぁ…気持ちぃ…気が抜けてスライムみたいになっちゃう。


 そういやこないだ野生のスライムって生き物見つけたんだよね〜。プルプルして手乗りサイズで本当に可愛かった。

 飼っていいかマイくんに聞いたら何言ってんだこいつって目をされたけど。

 悲しかったので元いた場所に返した。でもたまに同じ場所で見かけるからゼリーって名付けて撫でたり果物をあげたりしてる。

 もしかしたら毎回違うスライムなのかもしれないけど同じにしか見えないので同じスライムだと信じている。


 なんとなくサーシャちゃんの方を見る。動きはおぼつかないけどなんとか身体を洗っているようだ。石鹸は泡立ちにくいし、かなり汚れているから大変そうだけど洗えていると思う。

 本当は手伝ってあげたいんだけど確実に怪我させる自信しかないから諦めた。だって見てみて欲しい、あの身体。ほとんど骨と皮、消えかけてるけど沢山のアザに火傷みたいな跡とか切り傷?みたいな跡もある。絶対、力加減間違えて骨折っちゃう。


 そうそう、サーシャちゃんがここに来て1週間も経ってないのに怪我が全部傷跡と呼べるくらいにまで回復しているのはマイくんが魔法をかけたおかげだよ。回復魔法っていうやつだと思う。私のいない間にこっそりやるんだもん。ツンデレさんめ!

 それでも傷跡が全部綺麗になることはないみたい。なんか細胞を活性化させて怪我の治りを早めただけで、なかったことにはならないんだって。世の中そんなに上手くないよね。こっそりみてんじゃねーよって小言もいただいたけどそれはご愛嬌って事で。


 …反吐が出る…かぁ…私が信じてるって言った時、確かにそう呟いたのを聞いた。マイくんは何を背負ってるんだろう。あんな小さな身体で、中身は大人って言ってるけどやっぱりどこか子供っぽい。

 やっぱりマイくんも独りなのかな。私と一緒。1人の独りが2人になるにはまだ時間がかかるようだ。

 マイくんは私のことを信頼してない。そのくらい分かるよ。だからこそ私はマイくんを信じる。信じなきゃいけない。それが今の私にできる最善だ。

 でもマイくんはあんなにも他人を助ける気はないという雰囲気を出しているのに、こうしてサーシャちゃんの怪我を治したり新しい服を渡したり、どこか矛盾した行動を取り続けている。

 きっとそれがひどく不恰好なマイくんの優しさの表現のせいだと私は信じて疑わない。ツンデレさんだからね!


 あーだこーだ考えていると身体を洗い終わったサーシャちゃんが湯船に近づいてきた。恐る恐るといった形で足先から少しずつお湯につけていく。

 10人は遊に入れる広さのお風呂だけどサーシャちゃんが入りやすいように少しずれて場所を作ってあげる。

 ゆっくり浸かっていくサーシャちゃんの手には卵の入ったカゴが握られている。そんなにも大事か〜。

 不死鳥?の卵がどれほどすごいものかあまりピンときてはいないのだけれど、価値がどうのよりも大事なものって言う感じがひしひしと伝わる。いつか触らせて欲しいものだ。それまでに力加減を覚えないとだけどね。


 時間をかけてようやく肩まで浸かったサーシャちゃんがふぅぅ…と息を吐く。卵は背もたれにしている岩の上に置いたようだ。

 子供らしくない張り詰めて強張っていた顔が緊張が解けたのか蕩けた表情になってた。そうだよね、お風呂は気持ちいもんね。

 しばらく2人の吐く深い息の音だけの時間が過ぎて行く。


「…お姉さん。」


 少し緊張した様子でサーシャちゃんが話しかけてきた。どうしたの〜と返してみるけど返事は中々返ってこない。まぁ焦るもんでもないしと先を催促するようなことはしなかった。


「助けてくれて…ありがとうございます。」


 返事を待ってる中にいきなりの言葉で驚いた。…んん?私…何か助けたりしたっけ?奴隷印をどうにかしたのもマイくんだし強いて言うなら身の回りのお世話を少しやっただけなんだけど。

 何のことなのか考えていて無言だった私を見てサーシャちゃんが答える。


「その、あの子に、私がこの子から落っこちた時にお姉さんが受け止めてくれたって、聞いて…」


 この子と言いながら手に持ったのは不死鳥の卵だ。そうか、マイくんから落ちてきた日の話を聞いたのか〜。確かにあれは助けたに入るのかな。いや〜あの時は必死だったから何も考えてなかったや。


「あ、あたし、ここに、来たときのことほとんど覚えてなくて、この子に乗って逃げてきて、そこからよく覚えてないの…」


 サーシャちゃんが自分のことを話すのはここに来て初めてかもしれない。こういう時になんて言えばいいのかわからないので、とにかく無言で頷くことしかできない。


「でも、お姉さんとあの子…マイラス…が助けてくれたのは、分かってるから…ありがとうございます。」


 湯船に顔を付けてしまいそうなほど頭を下げる。いいよいいよ、そんなに気にしないでほしい。本当に大したこと何にもしてないからね!お礼言うならマイくんに言ってあげてよ。


「えっとそれで…その…聞きたいことがあって…マイラスとお姉さんは何者なの…?」


 なんだかずっともじもじしてるなって思ってたけどこれが聞きたかったからなのかな。さっき私が服を引き裂いた件を引き摺られてると思ってたので本当に良かった…

 あれ?そういうのも神様に聞いてきたんだと思ってた。神様なんだからそのくらい言ってくれればいいのに。むしろ逆に何を言われてここに来たんだろう。


「えっと…ここに来れば助けてくれる人が居るってことと、そこにいる2人は敵じゃ無いってこと…あとどうやって逃げるかも…」


 あら、意外と詳しいことは教えてくれないんだ。必要最低限の話しって感じ?神様ってあんまりおしゃべりじゃないのかな。


「あのね。お母さんの言うことは信じてるから…だから…ここまで来たの。」


 ふんふん、そうかそうかって景気良く頷いていた頭が止まる。…ん?お母さん?神様の話してなかったっけ今。


「あ、えっと…お母さんは夢に出てくるの。頭を撫でてくれたりこうやって色んな事を教えてくれてね、柔らかくて暖かくてとってもぽかぽかするの。」


 少し赤くなったほっぺたと、一生懸命話す様子に思わず微笑む。ようやく年相応に見える喋り方になってきて少し嬉しかった。お母さんのことが本当に大好きなんだろうなってわかる話し方だ。


「…でもね、お母さんとはね。…夢の中でしか会えないの。…だって、お母さん、もう死んじゃってるもん。」


 あ、やばい。温かいお湯の中にいるはずなのに頭の先から冷たいものが降りて行く感覚がする。私これ絶対踏み入れちゃいけないとこに足突っ込んだよね。


「夢の中でしか会えないから…ずっと、眠っていられたらいいのにな…そしたらお姉ちゃんにも会えるし。」


 なんて答えていいかわからなくて無言になってるけどそれでもサーシャちゃんの話は止まらない。やばいどうしよう。他人が迂闊に踏み入れちゃダメなやつだよねこれ。下手なこと言えないし…何言えばいいんだ⁈

あーーー〜〜


「ふぇ⁈」


 私は小さな弱々しい身体を引き寄せるように抱きしめた。力加減がわからないからちゃんと抱きしめられてるかもわかんない。壊してしまうよりも触れるくらいで止めておくのが精一杯だし。


 やっぱり何を言ったらいいかわかんない。だからとりあえず頭を撫でておこう。だって小さな頃は嫌な夢を見た後、ゆり先生がこうやってくれたし、私はこの時間が大好きだったから。


「…お姉さんのこと、怖い人だと思ってたけど、少しだけお母さんに似てる気がする…」


 胸の中で小さなつぶやきが聞こえた。私が包み込めるくらいこの子はまだ小さい。小さくて脆いのに何でこんな思いをしなければいけないんだろう。


「お母さん…」


 私は前だけを見ながら、サーシャちゃんが逆上せそうになるまでずっと優しく頭を撫で続けた。






 暗い部屋で耳をすませるように眼を閉じていた。部屋に張り巡らされるように展開されたホログラムには2人の少女が温泉に浸かっている様子が映し出されている。

 小さな少年は映像を閉じると羊皮紙や何か分からない道具で埋もれかけたベッドらしい何かに倒れ込むように寝そべった。


 夢に出てくる「お母さん」というのはガイアであることは間違いない。ただそれをサーシャ本人は理解できていないのだろうか。…いや、理解したくないのか。あいつは聡い。この国に生まれたのなら寝物語に毎晩聞かされるようなガイアの話を知らないはずがない。


 ごちゃごちゃとうるさい脳みそを少しずつ整理していく。

 〈思考加速〉のスキルを使えば早く考えることができるがサーシャの奴隷印を抑え続けている今はあまり違うスキルを使いたくない。それに今はどれだけ速く考えても有り余っている時間が無駄なだけだ。なので幼い脳みそをフル回転して考えている。


 サーシャの言動の何かが引っかかっている。なのに何が引っかかっているのか見当すら付かない。俺は大事なことを見落としているんじゃないのか?

 寝返りを打とうとすると何かにぶつかってベッドの下に落ちていった。

 広げると昨日読んでいたグズリア国の歴史が簡単に書かれている書物だった。それを再度ベッドの脇に放り投げる。

 ここで1人考えていても何も進まない。考えるだけ時間の無駄だろう。だったらさっさと人里で情報収集するべきか。長旅になる可能性が高いがここ数日で集めた物でいけるだろ。明日、女に出発を伝えるべきだな。


またゴロリと寝転がりながら考える。


あの女はなんなんだ、信用していいのか。


 大きく息を吐いて目を開けた。そろそろあいつらが風呂から上がるはずだ。俺も入ってから眠ろう。

 今日はなんの夢も見ず眠れればいいけど、と我ながらバカみたいな願いを頭の隅に追いやって俺は風呂場に向かった。

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