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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十二章 初期衝動-Initial Impulse-
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第212話 二人の思い

 公爵は俺の後から入室したカズマさんと紫村を見て驚く。


「カズマ!どうした……?それに君は……?私が呼んでもらったのは一ノ瀬君だけだぞ?」


「紫村キョウヤと申します。一ノ瀬シロウ君の退学の話を考え直してもらうようお願いしに参りました」


 紫村はそう言って深く頭を下げた。


「父さん、一ノ瀬が退学なんて嘘だろう?父さんの力でお爺様を何とかしてもらえないのかな?」


 カズマさんもそう言って公爵に俺の退学取り下げを申し出てくれる。


「二人とも落ち着きなさい」


 口早に話す二人に対し、一旦落ち着くよう促す公爵。

 そして紫村と向き合う。


「君が紫村君か。カズマやヒカルから名前は聞いているよ」


「あ、ハイ。突然押しかけて申し訳ありません!」


 紫村はもう一度深く頭を下げる。


「まあまあ、三人ともまずは座りなさい。落ち着いて話そうじゃないか」


 公爵は笑顔でそう言った。

 俺たち三人は公爵の対面に並んで座ると、城之内先生がお茶を持って来てくれた。


「それで……まずはカズマ。お前は一ノ瀬君と学年もクラスも違うのに、どうした?」


 公爵にそう言われたカズマさんが、口早に答える。


「父さん、一ノ瀬はヒカルのレベルアップの手助けをしてくれたりスキルを手に入れるのを手伝ってくれたりしたんだ。もう私たちが関係ないで済まされる男じゃないんだよ」


 そんなカズマさんの顔を真剣に見つめる公爵。そして口を開く。


「お前が一生徒にそこまで思い入れを持つなんて思ってもみなかったよ。ああ、お前の言う通りだな。一ノ瀬君は私たちにとって特別な存在だ」


「だったら……」


「まあそう急くな。そして紫村君。君まで付いてきた理由を聞かせてもらえるかい?」


「はい。押しかけてすいません。でも僕は1-Dを代表して公爵閣下にお願いしに参りました。どうか一ノ瀬君の退学を撤回してください!」


 そう言って紫村は深く頭を下げる。


「君も、何でそんなに一ノ瀬君をかばうんだい?この学園は、探索に付いていけなくなった生徒が退学し、一般校に転校していくのはよくあることだ。なのに学年首席の君が一ノ瀬君をかばう理由とは?」


 そう公爵に問われると、紫村は身を乗り出して熱弁をする。


「一ノ瀬君は退学するような人ではありません!彼は非常に優秀で、それでいてクラスの中でも熱意のある生徒のレベルアップの手助けをしてくれているんです!僕だって一ノ瀬君とカズマさんがいなかったら、学園を辞めていたかもしれないくらいです。だから、だから、だから一ノ瀬君は絶対に辞めちゃいけないんです!」


 紫村の熱意に、横にいた俺も気圧される。

 そしてその話を真剣に聞いていた公爵は、口角を上げながら深く頷いた。


「なるほど。君も一ノ瀬君に惚れ込んでいるんだね」


 俺はそんな二人の言葉に気恥ずかしくなる。


「二人がそこまで俺をかばってくれるのは嬉しいんだけど、これは俺の問題で、お嬢……ヒカルさんに学園を辞めさせないための交換条件で俺が代わりに辞めることにしたんだから、仕方がないよ……」


 自分で言ってて悲しくなってきた。何で俺が辞めなきゃいけないんだって。

 それもこれもあのジジイが全部悪いんだ。

 俺の感情の揺れを察したのか、公爵が俺に尋ねた。


「一ノ瀬君は本当にそれでいいのかい?」


 俺は返答に戸惑う。

 公爵は続けて質問してくる。


「納得してるのかい?」


 俺は首を横に振る。


「俺だって、できれば辞めたくないですよ。でも俺は学園を辞めてもどうにでもなる。差し当たっては先日アメリカからやって来た留学生の伝手でアメリカに留学に行こうと思っています。だから……」


「一ノ瀬君だけが身代わりになるなんて不公平だよ!」


「紫村の言う通りだ!一ノ瀬。お前ひとりが犠牲になる必要なんてないんだ!間違っているのはお爺様だ。父さん!何とかしてください!もし父さんが何もできないなら私から進言します。それでもお爺様が譲らないというなら、私は九条家を出ていきます!」


「カズマ……」


 必死で俺をかばう紫村とカズマさん。

 俺のために公爵家を出ていくとまで言ったカズマさんに、公爵も驚きの顔を隠せない。

 俺も二人に何と言えばいいか分からず言葉が出てこなかった。


「三人とも、悪かった。先に結論を伝えるべきだった。落ち着いて聞いてくれ」


 公爵が重い口を開く。


「一ノ瀬君はこの学園を辞める必要はない。前公爵には貴族院議員を辞任してもらったよ」


「え?」


 急転直下の一言に、俺は思わず目を見開いた。


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