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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十二章 初期衝動-Initial Impulse-
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第204話 エミリーの正体

 だるそうにしている俺に気付いたユノが、心配して俺に声を掛けてくれた。


「どうしたのシロウ?体調悪そうだけど」


「いや、実は昨日の探索で筋肉痛になっちゃってさ」


 俺はそう言って両腕をさすりながら痛い個所をアピールする。


「治癒魔法かけてあげようか?」


「いや、ポーションとか治癒魔法だとかだと超回復を妨げるみたいなんだ。だから自己治癒するのを待つよ」


「そっか。あんまり炎症がひどい場合は冷やした方がいいんだけどどう?」


「うーん……そんなに熱を持ってる感じじゃないなあ」


「そしたら次は血行を良くするのがいいんだよ。あったかいお風呂に入ったりして。あとビタミンとか栄養を取るのも大事だよ」


「なるほど」


「無理のない程度にストレッチして筋肉を伸ばすのもいいよ」


「さすが実家が病院だけあって、詳しいな」


 ユノの家は早坂クリニックという個人病院だ。

 ユノは資格が必要のない範囲で、家の仕事を手伝ったりしていたらしい。そんな中でいろいろと医療の知識も教わってきたのだとか。

 もしかしたらユノの治癒魔法の効果が強いのは、医療や人体の知識があるからなのかもしれない。


「病院じゃなくてクリニックなんだけどね」


「ん?それって違うのか?」


「簡単に言うと、病院と呼べるほどは大きくないってこと」


「そうだったのか……。知らなかった」


 もしかしてクリニックと病院の違いって、一般常識なのか?

 俺ほとんど病院に行ったことないから、本気で知らなかった。


「シロウ、マッサージしてあげようか?」


「え?本気でお願いしたいんだけど」


「私患者さんの肩をもんであげたりしてたから、上手なんだよ」


 そう言ってユノは俺の肩周りをもみ始めてくれた。

 ユノがもんでくれた箇所に、ジワーっと心地よい感触が流れる。


「うおお、血液が循環するぅ!」


「ウフフ」


 俺のリアクションにユノが笑うが、マジで気持ちいい。


「シロウ、おじいちゃんみたいだね」


「いや、ユノマッサージ上手いな!こんな孫が欲しいぜ」


「ウフフ」


 会話しながらもユノはマッサージを続けてくれた。肩から首、そして肩甲骨回りまで。力もそれなりにあるし、マジで上手い。


「オー!二人は仲良しですね」


 そんな時、噂の転校生が話しかけてきた。


「あ、エミリーさん。こんにちは。ホントに日本語上手だね」


「ありがとう。あなたたちの名前は何ですか?」


 コミュニケーションには全く問題はないが、エミリーは微妙にぎこちない日本語でそう聞いてきた。


「私はユノだよ」


 そしてエミリーは俺の方も見る。


「アイムシロウ!」


 俺はかっこつけて英語で答えた。


「おー!ユノとシロね。エミリーです。よろしく!」


「シロじゃねえわ!シロウだわ!犬みたいな名前で呼ぶな」


「よろしくねエミリーさん」


 ユノは俺のツッコミを無視して、俺のマッサージを中断してエミリーと握手を交わした。

 いや、止めないでください……。


「私は治癒魔法スキルを持っています。二人は何かスキルは持っているのですか?」


 エミリーは、ずばり聞いてきた。


「えー!奇遇だね。私も治癒魔法スキルを持ってるんだよ」


「おー!一緒ですね。ユノ、ぜひ私に治癒魔法を指導してください」


「えー?教えるって程でもないよ。治れーって思いながら使うだけだよ」


 何か俺の事を置いておいて二人が話し始めた。

 マッサージ……。


「そうなんですか。でもぜひユノの使う治癒魔法を見てみたいです。私と一緒にパーティーを組んでくれませんか?」


「え?教えるのは良いんだけど、同じパーティーに治癒魔法使いは二人はいらないよね?」


「そんなこと言わずに、ユノと一緒に探索をしたいです」


 なんだかグイグイ来るエミリー。

 そこに俺が横から口をはさんだ。


「治癒魔法なら、鮫島も使えるぜ?鮫島にも教わったらどうだ?」


「いえ、私はぜひユノと一緒がいいです」


「なんで?」


「なんでと言われても……、これは私の直感です」


 何かこいつ変だな……。

 エミリーの態度に俺は違和感を感じた。

 そう言えば転校のタイミングについてもそうだ。何で今なんだ?

 俺はエミリーの顔をじっと見て、隠し事を見抜こうとする。

 エミリーは俺から視線をそらし、その挙動が何かを隠しているように見えた。


「シロウ、エミリーさんをいじめちゃダメだよ」


「いや、そうじゃない。こいつ……」


 俺は一つのことを思い出した。そしてズバリエミリーにその疑惑をぶつけてみることにした。


「お前、UEDのスパイだろう?」


「え?」


 その言葉にユノが驚くが、エミリーはさらに驚いた表情で固まっていた。


「やっぱそうか?あのジョシュって人が送って来たスパイか」


 その名前にユノも思い出す。


「ジョシュって、あの新宿で会ったアメリカ人のかっこいい人?」


「そうだ。スキルスコープでユノのスキルレベルをのぞき見してたやつだ」


 エミリーは何とかごまかそうと、必死で取り繕う。


「ジョシュって誰ですか?私は知りません」


「嘘つけ。そもそもお前の出身校って、UED主催のアカデミーだろ」


「いいえ違います。私は探索者育成交流で来ただけです」


「だからユノの近くに一緒にいて、何とかの聖女みたくスキルレベルが上がるか調査しに来たんだろう?だから一緒にパーティー組みたいって言ったんだろう?」


 俺はエミリーの言い訳を無視して、相手の意図を言い当ててやった。俺が話せば話すほど、エミリーの顔は青白くなっていく。

 そんな時、ユノが俺の話を遮った。


「まあまあシロウ、おちついて」


 ユノはエミリーに向けて、丁寧に説明を始めた。


「エミリーさん。私は聖女ではありません。努力してスキルレベルを2に上げたんだよ。あなたも100人の人に治癒魔法を使ったらスキルレベルは2に上がるよ。でも3以上に上げる方法は私は知らないんだよ」


「え……でも……」


 そしてユノは俺に向き直る。


「シロウ。私は聖女じゃないんだから、別にエミリーさんに探られても何も問題ないよ。だからあまりいじめないであげて」


 エミリーがいくらユノのことを探っても、エミリーの治癒魔法スキルレベルが3以上には上がることはないだろう。

 それを考えたら、別にスパイだろうがどうでもいいか。


「……確かに、ユノの言う通りだ」


「それじゃエミリーさん、これからもクラスメイトとしてよろしくね」


「あ……はい。よろしくおねがいします」


 そんなわけで、俺たちのクラスにアメリカから送られて来たスパイが在籍することになった……。

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