第202話 スケルトンソルジャー
第七階層の階層主はスケルトンソルジャーだ。
フィールドに出てくる手ぶらのスケルトンと違い、スケルトンソルジャーは鎧を身にまとい、剣と盾を持っている。
おそらくコボルドキャプテンの時と同じように、一対一のチャンバラ対決になるだろう。
階層主の部屋に足を踏み入れると同時に俺は隠密を発動させる。
これで先制攻撃が可能だ。
部屋の中央には、スケルトンソルジャーが出現する。
その姿を見て、俺は焦った。
スケルトンソルジャーの頭には、バイキングのような二本の角が生えた兜をかぶっていたからだ。
……弱点の側頭部が隠れてるじゃん。
俺はこいつをどう攻略すればいいか分からず、なかなか手を出せずにいた。
ただし隠密を作動させている限り、スケルトンソルジャーから襲い掛かってくることはない。
だから俺は落ち着いてスケルトンソルジャーを観察することにした。
事前調査では鎧を着ているということだったが、正確に言うと鎖帷子、いわゆるチェーンメイルだ。
頭には角突き兜、足には脛当てを装備しており、なかなかの防御力ではないだろうか。
右手にショートソード、左手にはサークルシールド。
さて、こいつの弱点はどこだ?
焦りと同時にどうやって倒してやろうかというワクワク感がこみ上げてくる。
そうだ、さっき検証した魔法スキルを試す価値があるんじゃないか。
というか検証不足だが、魔力伝導モドキで火魔法とか治癒魔法を使った攻撃とか?
俺の火魔法のスキルレベル1だが、治癒魔法は2だ。だから治癒魔法の方が効くかもしれない。
しかしどこを攻撃する?隠密がある限り最初の一撃は好きなところを攻撃できるのだから、一番弱いところを攻撃したい。
スケルトンソルジャーのどこが一番弱いかをじっくり観察していた俺は、あることを思いつく。
あの兜を取ってやろうと。
双と決めた俺は、ゆっくりとスケルトンソルジャーの背後へと回り込む。
スケルトンソルジャーは俺に気付かずに棒立ちのままだ。
俺はスケルトンソルジャーの兜のツノにそーっと両手を伸ばす。
そして掴んだ!
驚きビクッとするスケルトンソルジャー。俺は間髪を入れず兜を引き剥がした。
「おりゃー!」
急に頭の兜を振り回されたスケルトンソルジャーは、勢いよく転倒する。
そして俺は取り上げた兜を投げ捨てると、剣を持ち倒れているスケルトンソルジャーに襲いかかった。
「死ねやぁー!」
表情のないはずのスケルトンソルジャーが俺を見て怯えているように見えた。そして俺の一撃を盾で防ぐ。
「チッ!」
ガキンという音と共に弾かれた剣を構え直し、俺は追撃をする。
スケルトンソルジャーは、盾をこちらに向けたまま慌てて立ち上がる。
俺の追撃もその盾に阻まれる。
「クソッ!」
立ち上がったスケルトンソルジャーは剣と盾を構え直した。
仕留め損なったが、弱点の側頭部はこれで剥き出しになったぞ。
俺はニヤリとほくそ笑む。
俺は頭を狙って剣を振ると、同時にスケルトンソルジャーも剣を振ってきた。
慌ててバックラーで防御する。
お互いの剣が相手の盾にぶつかり、そして一旦離れる。
なんとかガードできたが、俺の盾の方が小さい。あの剣の一撃を喰らったら結構な怪我をするぞ。
想像して冷や汗が額から流れ落ちる。
武器が互角としても、盾の大きさで俺の方が不利かもしれない。
いや、武器は互角ではない。俺には魔力伝導モドキがある。
俺は次の一撃に、スキルレベル2の治癒魔法を乗せた。
今度はカウンターを狙わずただ盾で受け止めるだけのスケルトンソルジャー。
それまでと同じだと思ったのだろう。そこに治癒魔法の効果が加わる。
剣と盾がぶつかる時のガツンという感触が、さっきまでの弾き返される感触から相手に衝撃を伝えられている感触に変わった。
盾ごと後ろに仰け反り、二歩三歩と後ろに後退するスケルトンソルジャー。
よし!俺の魔力伝導モドキは効いてるぞ。
俺は二撃、三撃と同じ攻撃を繰り返し、どんどんスケルトンソルジャーを押し込んでゆく。奴には反撃する余裕もない。
だが全て盾で受け止められており、有効打は一つもない。どうすれば防御させずに攻撃を当てられるだろうか。
そこでまた一つ奇策を思いつく。
次の一撃は治癒魔法ではなく雷魔法を乗せたのだ。
パチッと、軽く電気が流れた。
弱いとは言え電気ショック。初めて受けた電気にスケルトンソルジャーは驚き、動きが一瞬止まった。
今だ!
俺はスケルトンソルジャーの側頭部へ向けて思い切りフルスイングの一撃を加えた。もちろん治癒魔法の魔力伝導を加えて。
バキン!という破壊音と共に頭蓋骨が破壊され、横方向に転倒するスケルトンソルジャー。
一度立ちあがろうとしたが、そのまま倒れて動かなくなり、そして消滅した。
「ふぅ……。なんとか勝ったな」
俺はスケルトンソルジャーのジェムを拾いながら、今の戦いを振り返る。
昨日の華麗なヒカルの戦い方と比べて、俺の戦い方の泥臭いこと。我ながら恥ずかしくなる。
だか俺は凡人。こうして必死で勝利を勝ち取っていくしかないのだ。
俺はそう自分に言い訳をしながら、出現した第八階層へ続く階段を降りて行くのだった。




