第200話 所詮、俺は凡人
最近俺は焦りを感じている。
昨日のヒカルの急成長も、その理由の一つだ。
ヒカルは一日でレベル3から5に上がった。それ自体は俺も同じ経験があるからいい。
だが問題は、ヒカルはメイと一緒にレベル5で第六階層主を余裕で倒したことだ。
それも魔力が不足していたため、必殺の火の鳥八連発を使わずに勝ったのだ。
それと比べて俺は、レベルを6に上げてから何とか倒した。
つまり現在俺の方がレベルが一つ高いが、実力ではたぶん万全の状態のヒカルの方が強い。
ヒカルだけじゃない。紫村も雷魔法の有効活用方法を覚えてから成長が早い。
紫村は先日、カズマさんからなんかすげー木剣を譲ってもらっていた。さらに強くなっているに違いない。
イオリに至っては最初から俺より強い。イオリに関してはレベルやスキルを超越した剣技があるのだ。
つまり、学園には、俺より強えやつがたくさんいるっていうことだ。
入学してすぐに運よくレベル2になった俺は、スタートダッシュができたので俺が学年で一番強いんじゃないかと自惚れていた時期がありました。
ですが、だんだん現実を知ってきました。
所詮、俺は凡人。
スキル偽装は他の誰よりも優位に立てるスキルだけれど、大っぴらには使えない。そしてそれを隠したら、俺には特別なところなんて一つも無いんだ……。
……いかん、ネガティブな本性が出てしまった。
そんなわけで、平凡な俺がみんなより強くなるには、圧倒的レベル差しかないと考えるわけです。
だから今日も俺は新宿ダンジョンに来たわけです。
土日連続です。
……我ながらなかなかのダンジョン狂いだ。
だけど来週は公爵の毒消し事業説明会に呼ばれているし、再来週まで待っていたらヒカルや紫村に追い越されてしまう可能性もある。だから今日しかないのだ。
それにしても冷静に考えると、久しぶりのソロ探索だ。俺はちょっと緊張しながら、そしてワクワクしながらポータルをくぐった。
・・・・・・・・
第七階層は、遺跡ステージと呼ばれている。
第一階層から第三階層までは天然の洞窟のようなフィールドだった。
第四階層から第六階層までは森林。
そしてここ第七階層からは、人工の遺跡の中を歩いているようなフィールドとなっている。
ところどころ蔦に覆われた壁。第一階層と違い、まっすぐに続く石畳の通路。
俺のイメージ的には、これぞダンジョンという感じがする。
少し歩いて行くと、前方からカタカタと足音が聞こえてきた。
俺はその足音の主に対して戦闘準備をする。
そして現れたのは、歩く人骨。いわゆるスケルトンだ。
顎をガクガクさせながら、ヨタヨタと歩み寄ってくる。
この階層に出てくるスケルトンは武器を持っておらず、指先による引っかき、掴んでからの噛みつきが主な攻撃手段だ。武器を使ってある程度の距離で戦えばそれほど怖くない。
そうは言ってもスケルトンに通用しない攻撃もある。
弓矢やレイピアなどの刺突武器は骨の隙間に入るだけで、大きなダメージを与えられない。
頭蓋骨に的確に攻撃できれば別だが、刺突武器は向かないと言われている。
また骨が意外と硬いらしく、斬撃にも強いという。イオリくらいの達人になれば骨も簡単に断ち切ると思うが……。
そんなスケルトンに有効な攻撃は、ずばり打撃だ。
ハンマーなどで頭蓋骨を砕いてやれば簡単に倒せるらしい。
他にも火魔法や治癒魔法でも大ダメージを与えることができるらしいく、俺はそのどちらもスキル偽装のコピーによって持っている。
まあ、とりあえずは打撃だな。そして俺の武器であるこの鉄剣は、刃が落とされていてほぼ鉄の棒。打撃武器だ。スケルトンには有効な武器なのだ。
俺は動きの遅いスケルトンに向けて、大きく振りかぶった鉄剣を振り下ろした。
ガツン!
「痛てっ!」
手のひらに強い衝撃が伝わり、俺は思わず剣を手放してしまいそうになる。
手を伸ばしてくるスケルトンから逃げるため、バックステップで距離を取る。
離れて観察すると、スケルトンの頭は無傷だった。
「頭蓋骨固っ……」
誰も教えてくれなかったので、俺がここで宣言しよう。頭蓋骨は固い。
「うおっ」
さらに手を伸ばしてくるスケルトンから、俺はダッシュで後ろに逃げた。
少し距離を取ってスケルトンを観察する。
スケルトンは相変わらずのろのろした動きでこちらに歩み寄ってくる。
鉄剣よりももっと重い武器を持ってくるべきだったのか?
……え?詰んだ?
俺はさらに手を伸ばしてくるスケルトンから、さらにバックステップで後退し、頭をフル回転させる。
考えろ!
頭が固いなら、腕や足ならどうだ?だけど頭を破壊しないと倒せないらしい。
仕方ない、火魔法か治癒魔法を使うか?
でも魔法で倒す前に一体くらい武器で倒しておきたい。
……第六階層でレベル7に上げてから出直した方が良かったのだろうか?
俺は考えながら、一歩、二歩と後ろへ下がっていく。
次の瞬間、後ろからも魔物の気配がした。
気配に気づき振り返ると、新手のスケルトンが、かなり近くまで近寄ってきていた。
「うわあ!」
焦って俺は鉄剣を振り回す。
バキン!
今度は手のひらに、頭蓋骨を割ったほどよい感触があった。
「えっ?」
見ると、新手のスケルトンは側頭部を破壊されて崩れ落ちていった。
その姿を見て俺は瞬時に理解する。
「……そうか、側頭部か!」
おそらくスケルトンの頭蓋骨は、前頭部が固く側頭部がもろいのだ。
俺は最初のスケルトンに向き直る。
スケルトンは相変わらずゆっくりと俺に向かって歩いてくる。
俺は無防備なその頭に向けて、今度は横方向に振りぬくように鉄剣を食らわせた。
グシャ!
頭に攻撃を受けたスケルトンは横方向に吹き飛ぶように転倒する。そしてそのまま消滅した。
「倒したか……」
俺はほっと息をつく。
一応この階層の予備知識を付けてきたつもりだったが、その知識は浅かったようだ。やはり実戦に勝る学習はない。
凡人の俺は泥臭くいくのだ!




