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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十二章 初期衝動-Initial Impulse-
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第197話 イノシシは筋肉の塊

 ヒカルとメイはまだレベル3だが、俺たちは第五階層へとやってきた。


「ここは見た目は第四階層と同じだが、出てくる魔物はグレイウルフやビッグボアだ。第四階層の昆虫よりも動きが早く、噛みつきや体当たりなどは大けがをさせられる可能性がある。さすがにここからは慎重に行こう」


「分かったわ」


「ああ」


 俺の説明を聞いた二人は、辺りを警戒しながら先へと進む。

 そして最初に遭遇したのは、いきなり四匹の群れのグレイウルフだった。

 俺が何かを言う前に、ヒカルが四羽の火の鳥を出現させる。

 そして火の鳥はグレイウルフに向かって飛び立った。

 襲ってくる火の鳥から逃げようとしたグレイウルフたちだったが、逃げる方向に向きを変える火の鳥からは逃げることができず、それぞれ被弾。そして四匹とも一撃で倒された。


「こんな離れた場所から当てられるの?しかもホーミングしてるじゃん」


 ヒカルの火魔法の射程距離に呆れる俺。

 まだ二十メートル以上離れている場所にいたグレイウルフを倒してしまった。

 しかもレベル3で第五階層一撃とか、強すぎる。


「あ!今、レベルが上がった気がしますわ」


「私もです」


 今のグレイウルフを倒して二人はレベル4に上がったようだ。

 ヒカルは解析スキルで、二人のレベルが上がったことを確認する。


「ありがとうございますヒカル様」


「私の力じゃないわ、ここまで案内してくれた一ノ瀬さんのおかげよ」


「え?俺?」


 正直に言おう。紫村たちのレベルを上げたのは俺だ。だが今回に関しては俺は何もしていない。だってまだ俺は一匹も魔物を倒していないのだから。

 だから感謝されても困るのだが、そんな黙っている俺に対しメイが感謝の言葉を告げた。


「一ノ瀬……感謝する……」


「メイちゃんがデレた?!」


 その後も第五階層の探索は続き、次に現れたグレイウルフ三匹は、最初の一匹をメイが倒し、残る二匹を再びヒカルが倒した。

 相変わらず俺の出番はない。

 次の獲物を探そうとしていると、離れたところからこちらへ向かってくる物体が視界に入った。


「敵ね」


「あれはビッグボアだ!あいつは全身が筋肉の塊だから、防御力も高い。とにかく突進を喰らわないように避けながら戦え……」


 俺が説明している最中に放ったヒカルの火の鳥がビッグボアに直撃しボン!とすごい音を立てると、ビッグボアはドサァ!という大きな音を立てて思いきり転倒した。


「確かに、防御力が髙そうね」


「え?あの突進を吹き飛ばしちゃうの?」


 俺が驚いている隙にヒカルは二羽の火の鳥を放つ。

 ボン!ボン!と続けて炸裂音が鳴った後、ビッグボアは絶命し消滅していた。


「ふう……」


 ビッグボアですら余裕だったらしい。


「この調子で一人当たり10匹倒せばいいのかしら?」


「いや……、もう階層主行けるんじゃない?」


・・・・・・・・


 そんなわけでやってまいりました。第五階層主の部屋。


「今日一日で第五階層主の部屋まで来るとは思いませんでしたわ」


「私もです。これもカズマ様から習ったと言うヒカル様の火魔法が素晴らしいからですね」


「まあ、メイの戦闘も良かったわよ」


「ありがとうございます」


「はい、そこ。これからボス戦が始まると言うのにイチャイチャしない!」


 無駄話をする二人を注意する俺。

 だがあれほど慎重だった二人も、だんだん余裕が出てきており、俺の言葉に怯むことが無い。


「なんだ一ノ瀬。私とヒカル様の仲の良さがうらやましいのか?残念だったな。私とヒカル様は幼少のころからの仲。貴様などが割り込む余地はない」


「そうじゃなくてダナ……」


 俺たちが無駄話をしている間にも、部屋の中央に巨大な猪が姿を現す。


「一応説明しておくと、第五階層主アーマードボアは鎧のような外骨格に体を守られている。弱点は外骨格の隙間なんだが……」


「なんだが……?」


 俺が言葉の続きを言うべきか迷っていると、ヒカルから問われる。

 仕方なく俺は言葉を続けた。


「……お嬢の魔法なら正面から打っても十分効くんじゃね?」


「なるほど。分かりましたわ」


 ヒカルの掌から、八羽の火の鳥が羽ばたく。

 八羽の火の鳥がそれぞれジグザグと自由に飛び交う。

 そしてヒカルが行けとばかりにアーマードボアを指さすと、八羽の火の鳥は一斉に標的に向けて飛んで行った。

 ドドドド!と連続して炸裂音が響く。アーマードボアの体表が焼けて煙が上がる。その煙が散って消えたかと思うと、そこにアーマードボアの姿はなく、ポツンとジェムが落ちていた。

 静寂の中、パチパチパチとメイの拍手の音だけが聞こえる。

 ヒカルは髪をかき上げ、ふぅと一息つくと、振り返って言った。


「どうかしら?」


「どうかしらも何も、凄すぎて言葉がねえよ……」

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