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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十二章 初期衝動-Initial Impulse-
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第195話 友達の友達

「一ノ瀬……ヒカル様だけでなく、この私にまでレベリングの機会をくれたことを感謝する」


 いつになく殊勝なメイに、俺はちょっと拍子抜けしつつ、笑顔で答える。


「いいよ、気にすんなって。友達だろ?」


 俺のそんなさわやかな返答に、メイは顔をゆがめながら答えた。


「は?……違うが」


「え?何て?」


「だから、私とお前は友達ではないが?」


「えっ?そうなの?」


 あれ?俺また距離感間違えちゃった?


「私はヒカル様の護衛であり、貴様とはただの協力関係だろう。友達という定義には当てはまらない」


「いや、でもさ。お嬢とメイちゃんは友達だろ? で、俺とお嬢も友達。……ってことは、友達の友達なんだから、要するに友達だろ?」


 今は無き有名なお昼の番組で、そう言っていたはずだ。


「何を言っているのだお前は。友達の友達は、飽くまでも『友達の友達』だろう?そんなことを言っていたら世界中友達ということになってしまうだろうが……」


「た、確かにそうだけど、でも前にも一緒にパーティー組んだじゃん?」


「それは友達ではなくて、パーティーメンバーだろう?」


「……あれ?」


 ということは、友達だと思っていたのは俺の方だけだったということなのか?

 はっ!もしかしてお嬢も、俺が一方的に友達だと思っていただけなのか?

 俺は慌ててお嬢の顔を見る。


「……フフ。ごめんなさい、メイが気難しくて。でもメイが私以外の人に、こんなに心を開いているのは珍しいのよ」


「え?」


 これで心を開いている?俺にはそう見えないのだが……。

 メイの方を向き直ると、目をそらされた。

 ぐ……ぐむぅ……、何を考えているのか分からん。


 今日俺たちは、ヒカルのレベル上げのために新宿ダンジョンへとやってきていた。

 ヒカルはこれまで、GWに家族旅行をしながらどこかの避暑地のダンジョンに行ったのと奥多摩ダンジョンに来てもらったことがあるが、新宿ダンジョンは初めてである。

 そしてそれらダンジョンとは桁違いの人の多さに、ヒカルも驚いていた。


「すごい人ね……。さすが日本一探索者数が多いと言われるだけあるわ」


 そう、ここ新宿ダンジョンは探索する人数が、日本で一番多いということで有名だ。

 ここに来るまでも、明らかに探索者だろうと言う恰好の人たちをたくさん見てきた。

 ダンジョンビルの中の探索者の群れに驚く二人を、俺は受付まで案内する。ユノたちや紫村たちを連れてきた時と同じ流れだ。そしていつも通り受付が終わるかと思ったら……。


「九条ヒカルさま……、もしかして九条公爵家ご令嬢の九条ヒカル様でしょうか?」


「ええ、そうですわ……」


 ヒカルが受付に探索者証を兼ねた身分証である学生証を出した時、それを見た受付が驚きの声を上げた。


「し、少々お待ちください!」


 そう言って立ち上がり、後ろの方で上司らしき人に何か話していた。

 しばらくして、少し年配の男性がやってくる。


「申し訳ありません。九条様が本日お越しになると知らず、何の準備もしておりませんで……」


「気にしないで頂戴。今日は普通に探索しにきただけだから。他の探索者の皆様と同等に扱ってくれるかしら?」


 そんなヒカルの言葉に、受付のおじさんは額の汗を拭いながら言葉を続ける。


「そうおっしゃりましても、護衛を準備する都合がございまして……」


「護衛はいりませんわ。今日は後ろにいる二人が付いていますから」


 そう言って紹介された俺たちの事を、受付おじが不思議そうな顔をしながら見る。


「あ、あの……お言葉を返すようですが、お二人とも非常にお若く見えるのですが……」


「若いわよ。私と同い年だから」


「で、でしたら、もう少し経験豊富な方をお一人付けた方が……」


「大丈夫よ。二人ともこう見えてとても優秀なの。それにそんなに危険な階層まで行くつもりはないから」


 なんかVIPだからか、ダンジョン組合の人からすごい心配されている。

 気軽に連れてきてしまって申し訳ない気持ちになる。

 その後、俺たちの時にはほとんど説明のなかった、サインをする書類についての説明を受けていた。

 このダンジョンを探索するための登録するために名前書くだけの書類だと思ったら、後ろで話を聞いていると、ダンジョン内で怪我をした場合に組合に責任を求めないだとか、何やらいろいろと誓約する書類だったみたいだ。

 ヒカルはそんな説明を詳しく聞いた後に、その内容を承諾して名前をサインしていた。


・・・・・・・・


「何か悪かったな。こんなに心配されるとは思わなくて」


 一旦別れて更衣室で探索者服に着替え終わった後、再び合流した俺たちは第一階層へと歩いていた。

 単なる同級生の感覚で連れてきたものの、先ほどの受付の対応を見て、やはり公爵令嬢というのは俺と住む世界が違う人物なのだと実感した。


「気にしないで頂戴。むしろ一般に公開されているダンジョンに潜る機会なんてないと思っていたから、楽しみだわ」


 だが、ヒカルはとても楽しそうだ。

 あの後係員から、危険なのは魔物よりも他の探索者だと言われ、絶対に危険な目に会わせないようにと忠告された。

 気を付けよう。


 そして俺たちはいよいよ、ダンジョンへと足を踏み入れた。

 ヒカルもメイもレベル3だ。いまさらスライムと戦う必要はない。

 ということで、すぐに新宿名物大行列に並び、第一階層主の部屋へと挑戦する。


「私、一人でヒュージスライムと戦ってみたいと思いましたの。危なくなったら助けに入ってほしいけれど、まずは私一人に戦わせてもらえるかしら?」


「まあいいんじゃない?」


 俺がそう答えると、メイも素直に分かりましたと頷いた。

 部屋の中央に、ヒュージスライムが姿を現す。

 ヒカルはすぐに戦闘態勢に入る。右手を上げ、火魔法を発動させる。

 その掌の上には、羽をはばたかせる炎の鳥が。


「え?何それ?」


 初めてそれを見た俺は目を疑った。ファイヤーボールではなく、明らかに鳥の形をしていたからだ。


「えい!」


 ヒカルの掛け声とともに、火の鳥は猛スピードでヒュージスライムに突撃する。

 火の鳥はヒュージスライムの体の中に突き刺さり、まっすぐに中央の核へと突進した。

 バン!という激しい音と共に、ヒュージスライムの巨大な体は飛び散り、そして核を貫かれた瞬間に消滅していた。

 コロリと転がるヒュージスライムのジェムの上を、先ほどはなった火の鳥が旋回していた。


「あら?攻撃が終わったのに消えなかったのね」


 ヒカルはそう言って火の鳥を消した。

 えっ?ヒカルの魔法って、強すぎじゃね……?

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