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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十二章 初期衝動-Initial Impulse-
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第193話 ジジイ

「全く、クソガキが……。ケイイチ、貴様もこんなくだらない庶民などと交流を持つな!九条家当主としてもっと自覚を持て!」


 ジジイこと、九条前公爵はそう言って、俺の事を貶し、そんな俺と話す公爵のことも叱った。


「お言葉を返すようですが、この一般人の一ノ瀬君はとても優秀な探索者です。先ほども言ったように数々の発見をし、その利益を私に享受してくれているのです」


「かぁー!ワシに口答えするのか!家督は譲ってやったが、ワシは貴様の父だぞ!」


 ジジイに怒られる公爵を見た俺は、申し訳なく思いすぐに謝罪をする。


「ジ……じゃない、総裁さん。それは俺が悪かったっス。ヒカルさんに頼んで公爵の力を借りて……」


「公爵閣下だ」


 すぐに須佐さんの訂正が入る。

 そうか。公爵っていうのは敬称じゃないのか。


「すいません。公爵閣下の力を貸していただきました。俺一人の力じゃ、毒消し薬事業を守ることも、高ランクポーションを安全に売り捌くことが難しかったんで」


「高ランクポーション?」


 高ランクポーションというワードが引っかかったジジイに、公爵が説明をする。


「そうです。一ノ瀬君はランク3ポーションをいくつも手に入れてきたのです。今もそのことについて話していて……」


「どうやって手に入れた?」


 ジジイは俺に向かってそう言ってきた。

 もちろんこんなジジイに簡単に話すつもりはない。


「それは企業秘密です」


「フン!庶民が欲張りおって。分かった。その情報が本当なら、1000万で買ってやる。貴様のような庶民が一生見ることのない金額だろう。さあ話せ」


 1000万?ずいぶん桁が違うようだが?

 俺が呆れて言葉を失っていると、公爵が仲裁に入る。


「父上、それは明らかに情報の価値を間違えています!そんなはした金で買える情報ではありません!」


「馬鹿者!だからお前はバカだというのだ!情報をワシに話しても、このガキがポーションを取れなくなるわけではない。このガキはほぼノーリスクで1000万を手に入れることができるのだぞ?それにこんなガキに必要以上の金を払う必要はない。1000万はワシの情けだ」


「何を言っているのですか?!一ノ瀬君は既にそれ以上の……」


 そんな二人の会話に俺は割って入る。


「ああ、爺さんには売らないんで大丈夫っすよ。つーか、カズマさんはお嬢のスキルオーブに10億払ってもいいって言ってくれたんですけど、爺さんの方はずいぶん貧乏なんですね」


「何だと貴様!ワシの総資産は、そんな金額とは桁違いじゃ!」


「ああ、すいません。じゃあどケチなだけっすね……」


「貴様!さっきからその口の利き方は何だ!庶民のくせに、許さんぞ!」


 俺とジジイが口喧嘩を始めると、須佐さんが俺の肩を掴んだ。


「一ノ瀬、止めるんだ」


 そう言われ、俺も一旦黙る。だけどジジイがもっとなんか言ってきたらまた言い返すかも?


「ケイイチ!ワシに二度とこのクソガキの顔を見させるな!」


「残念ですが、再来週の晩餐会に一ノ瀬君も呼ぶ予定です」


「はん!じゃあワシはそれは欠席じゃ!」


 ジジィはそう怒鳴った後、扉をバタンと強く閉めて応接室を出て行った。

 俺は言葉を失って見送っていた。


「騒がせてすまなかった……」


 公爵は、いささか疲れた表情でそう言った。

 あんな父親を持って、公爵は苦労してきたんだろうな。

 すると須佐さんが公爵に話しかける。


「閣下。こんな状況ではポーションの話はまた日を改めた方がよさそうですね」


「すまない。せっかく足を運んでもらったと言うのに」


 公爵は申し訳なさそうに言った。

 俺はまあ、須佐さんが急がないなら別に後回しでもいいんだけど。でも須佐さんは任務の事もあるし、早めに高ランクポーション情報について今後どうするか決めたいんじゃないのかな?


「ところで、今も少し話に出たのだが、再来週に毒消し薬事業説明を兼ねた懇親会を開催する。一ノ瀬君も発案者として出席してもらえないか?」


「えっ?俺なんかが行っていいやつですか?」


「もちろんだ。むしろ君が主役だ。日時は再来週の土曜日の夕方なのだが、都合はどうだい?」


「大丈夫ですよ」


 俺は気軽に返事をすると、公爵は安堵の表情を浮かべた。


「そうか。良かった。ではその日に時間を取るので、そこで今の話を聞かせてくれるかい」


「分かりました」


「須佐さんは予定はどうかな?」


「私ですか?予定は空いていますが……」


「では懇親会も一緒に出席してもらえるかな?君たち自衛隊も毒消し薬の顧客となってもらう予定だから」


「招待していただけるのであれば……。ありがとうございます」


 何とか仕切り直しの日程も決まって、公爵は一安心という感じの安堵の表情を浮かべた。


「ところで公爵……閣下」


 危ない、また敬称を忘れるところだったぜ。


「何だい一ノ瀬君?」


「あの爺さん……じゃなくて、総裁って人のことですけど……」


「爺さんでいいよ、あんな男」


 公爵もよほどあの人の事を嫌いなのだろう。俺の言葉遣いの悪さを注意する気配すらない。

 それと一つ気になっていた、ジジイがどれくらい偉い人なのかについて質問してみることにした。


「ハハ……。総裁って言うくらいだから偉い人なんですよね?でも公爵家は閣下が継いでるんだから、隠居しないんですか?結構ご高齢ですよね?」


 まあどんだけ偉くても、気に入らなかったらうっかり噛みついてしまうかもしれないので、なるべく関わらないのが一番なのだが。


「ああ、そうだね。順番に説明をしようか。君の言う通り、父は九条公爵家の前公爵で、公爵位は私が引き継いだ。だから貴族院議員終身議員の資格も私が引継ぎ、父は一度辞職をしているんだ。だが今でも貴族たちへの影響力が強い人でね、国王陛下より勅選議員として任命され貴族院議員として返り咲いたんだ。そして伝統維持派である常磐会の院内総裁を務めるに至っているんだよ」


「伝統維持派……、閣下は違うんですよね?」


「ああ。私は革新派である黎明会に所属している。父とは敵対派閥だ」


 なるほど。伝統派というと保守派ということで、貴族第一主義で一般市民を見下している派閥と考えていいのかな?

 それに対して公爵の革新派というのが、貴族社会を変えていこうとしてるということかな?

 何となく俺なりに理解してみる。こういうのって名前だけじゃ覚えられないんだよな。だからテストも苦手だ。


「理解してもらえたかな?」


「あ、すいません。ありがとうございます!何となく自分の中で消化できました」


 俺の質問が終わると、須佐さんがスッと立ち上がり、公爵に帰宅を告げる。


「それでは閣下。再来週はよろしくお願いします」


「ああ、今日はトラブルに巻き込んでしまって申し訳なかった。招待状は後日送らせてもらうよ」


 そして俺たちは、何の収穫もなかった議員会館探訪を終えて帰路に就くのだった。


 帰り道、須佐さんに今日の俺の態度についてめっちゃ怒られた。

 そんなの、貴族に対するマナーなんて知らんがな……。

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