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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十二章 初期衝動-Initial Impulse-
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第192話 闖入者

「あの法案は何だ!貴様何を考えているのだ!」


 俺たちが面会している部屋に怒鳴り込んできた老人は、顔を真っ赤にして激高していた。

 老人を止めようと後を追って入室してきた秘書たちは、どうすることもできずあたふたしている。


「院内総裁!何度も言いますが、私は今接客中です。勝手に入ってこないでください!」


 公爵はその老人を院内総裁と呼んだ。おそらくとても偉い人間だろう。


「接客中?どこの誰だ?おい!おまえたちはどこの家の者だ?」


 突然声を掛けられ俺は戸惑う。

 俺の代わりに須佐さんが立ち上がり名乗ってくれる。


「陸上自衛隊特殊部隊、須佐と申します。こちらは東京ダンジョン学園一年の一ノ瀬です」


「須佐と一ノ瀬?……聞いたことないな。爵位を言ってみろ」


 突然爵位と尋ねられ、須佐さんは困惑しながら答える。


「いえ、私たちは貴族ではありません」


「なんだと!庶民か?ワシの話より大事な庶民との話などあるか!」


 ジジイはとんでもない理屈で九条公爵にクレームを付けた。

 こいつは筋金入りの貴族至上主義者だ。


「総裁、いい加減にしてください! 彼らは私の大切なゲストです。庶民だ貴族だと、今の時代にそのような言い分は通用しません!」


 公爵が毅然と言い放つが、老人は鼻で笑い、応接室のソファにどっかと腰を下ろした。

 えっ?出ていく気ゼロじゃん、このジジイ。


「ふん!そんなことよりも、あの法案はなんだ?貴族年金の段階的廃止だと?庶民の人気取りも大概にしろ!お前たちの法案の事を知った我ら常磐会は今大騒ぎだぞ!」


 ときわかい……って何だ?このジジイの所属する会のことだと思うけど、後で公爵に聞いてみよう。


「まずはあの法案は取り下げろ!話はそれからだ」


「総裁、そんな横暴が通るとお思いですか?法案は我ら黎明会の総意で決定し、提出しているのです。取り下げることはありません」


「ふん!愚かな……。そんなもの絶対に可決させんぞ!」


 俺と須佐さんは、そんな二人のやりとりを黙って見ているしかできなかった。

 するとジジイは、こちらを見て俺たちに向かって言った。


「それで貴様ら、いつまで居座るつもりだ?ここは伝統ある貴族院議員会館だぞ? 貴様らのような泥にまみれた庶民が足を踏み入れていい場所じゃない。ここは『選ばれた者』が国を導く聖域なのだ」


「え?でもちゃんと警備員も受付も通してもらえましたけど?」


 俺はジジイの嫌味が分からず、うっかり普通に受け答えしてしまった。


「ふざけるな!警備員も受付もワシから厳重に注意してやる!さあ、早く帰らないと、警備員を呼ぶぞ!」


 ええ~?このジジイ、どうしても俺らを帰らせたいようだ。

 俺だって公爵に大事な話があるのに。

 すると、公爵も堪忍袋の緒が切れたのか、ジジイに対して怒鳴るように言った。


「総裁!いい加減にしてください!この議員会館に貴族以外が足を踏み入れてはいけないなんてルールはありません!それに先ほども言いましたが、この二人は私のゲストです。特にこの一ノ瀬君は、毒消し薬事業の発案者でもあるんですよ!」


 公爵のその言葉を聞いて、ジジイは俺を値踏みするように見回した。


「こいつが噂の……?ふん!たまたま関わっただけの学生だろうが。なにが発案者だ」


 俺のオーラのなさが災いして、普通の学生にしか見えないのだろう。まあ別にいいけど。

 だが公爵は、その言葉に納得がいかなかったらしくジジイに反論した。


「それは違います。大量の毒消し草を発見したのも一ノ瀬君ですし、毒消し薬作りの山下さんを私に紹介してくれたのも一ノ瀬君です。私の方こそ関わっただけです」


「ふん!誰がそんな話信じるか……」


 公爵がいくら俺の事を褒めても、このジジイには受け入れることができないらしい。

 まあ最初からこのジジイの中では庶民の俺は下だと決まっているのだろう。だからどんな手柄があっても、ジジイにしたらなかったことにされるだけだ。だから俺からは別に弁明するつもりはなかった。

 だが公爵はそうではなかった。


「それに、一ノ瀬君は先日ヒカルに火魔法と治癒魔法のスキルオーブを見つけてくれたのですよ?いくら懸賞金を賭けても手に入らなかったものを」


 その話を聞いたジジイは、眉間に皺を寄せた。


「余計な事をしてくれたな!」


「は?」


 何で俺は怒られているんだ?


「貴様のせいで、またヒカルが道を踏み外してしまうだろうが!せっかくワシが良い縁談を見つけて来てやったというのに、女のくせに探索者になろうなどと言って……」


 ん?その話を聞いて、このジジイの正体に思い当たる節があった。

 ヒカルの縁談を決めてきたのは、ヒカルの祖父だと聞いている。


「あー!あんたがヒカルのじいさんってこと?」


「こら、言葉を慎め一ノ瀬!」


 すぐに須佐さんに言葉遣いを窘められる。


「これだから礼儀知らずの庶民は!そうだ、ワシはヒカルの祖父であり、そこの九条ケイイチの父だ」


「紹介が遅れてすまない、一ノ瀬君。私の父、前公爵の九条一衛イチエだ。貴族院伝統維持派である常磐会の院内総裁をしている」


 ひええ!ヒカルの爺さんって、こんなに嫌なジジイだったの?

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