第156話 ゴブリンと連戦
「それにしても、千堂は今回ちょっと危なかったな」
初めてのゴブリン戦を終え、簡単に振り返る。
「ああ。まさか木刀を掴まれるとは思ってなかったし、ゴブリンが意外と力が強くてびっくりしたよ」
「剣術部の練習じゃあ、木刀を掴まれた時の対処法なんてやらなかったものね」
千堂の反省の言葉に、紫村がフォローをする。
だが甘やかせばいいという話ではない。
「そうだ。そしてこれが現実の戦闘だ。もし木刀を奪われたらゴブリンに噛みつかれたり、爪でひっかかれたりして血まみれにされる可能性がある。体は小さくても殺し合いになったら恐ろしいほどの力を出してくるんだ」
ちょっと脅かすような言い方だが、事実だ。
俺の話を三人は真剣な表情で聞いている。
「一ノ瀬。君なら木刀を掴まれた時にどう対処する?」
千堂の質問に俺はすぐに答える。
「まず前提として、木刀を掴まれないように戦うかな。そしてもしも掴まれたとしたら、俺ならこうだ」
俺はそう言って、買ったばかりのブーツで前蹴りする。
このブーツにはつま先とかかとに金属片が付いており、蹴りがハンマーで殴ったようなダメージを与えることができるのだ。……歩くには重いけど。
「だが、俺たちは瀧川さんから、蹴りは姿勢を崩すからやらない方がいいと教わっているんだ」
そうなんだ。あんま部活に出てないから知らんかった。でもそれなら、
「じゃあイオリに聞いた方がいいかもな」
「確かにそうだな。今度聞いてみることにするよ」
「それと紫村も千堂もなかなか倒せずに苦戦していたけど、頭を叩いても頭蓋骨が固くて簡単には倒せない。首、鳩尾とかの急所を狙った方がいいぞ」
俺の説明になるほどという表情を浮かべる紫村。
「そうか。ゴブリンも生物だから、強い部位と弱い部位があるんだね。次からそうしてみるよ」
納得してもらえたならよかった。そして赤石だ。
「赤石は、慎重になりすぎだな。一対一ならそれでいいが、ゴブリンが二体以上になったら、長引くほど不利になるぞ」
「確かにそれは分かるが、このメイスっていう武器は、むやみに攻撃をして空振りした時の隙が大きいんだ」
赤石の反論に、俺はさらに反論する。
「じゃあお前は紫村と千堂がピンチになっていた時も、慎重になってすぐには助けに入らないのか?」
「そ、そう言うわけでは……。じゃあどうすればいいんだ?」
困惑する赤石に、俺はニヤリと笑いながら答える。
「ガンガン行けばいいんだよ!」
抽象的な俺のアドバイスに、赤石は少し困った顔を浮かべていた。
「それじゃ、次のゴブリンを探しに行きますか!」
そうして俺たちは先に進んだが、その次はゴブリンが一匹で出現したため、三人で速攻で倒してしまった。
できたら経験を積ませるため、一対一で戦わせたい。
「おまえら強いから、次から一対一で戦おうぜ。ゴブリンが一匹だったら、順番に一人ずつ戦って、仲間の手助けがなくても自分一人でどこまでできるか試してみようぜ」
「なるほど。そうしてみよう」
紫村が了承をすると、残りの二人も異論はないようだ。
こいつらは俺が言うことに素直に従ってくれるので、先導しやすい。
そうして歩いて行くと、今度はゴブリンが二体現れた。
「二体いるね」
「それじゃ赤石と千堂が一匹ずつ倒してみろ。紫村は一回休みね」
俺の指示に従い、赤石と千堂がゴブリンに向かっていった。
赤石は俺のアドバイスに従い、どんどんゴブリンに迫って行った。
赤石の巨体に怯むゴブリンに、逃げる間も与えず素早くメイスを振り下ろす。
その一撃であっけなくゴブリンは倒された。
「いいじゃん!」
対して千堂は、やや慎重にゴブリンに近づいていく。
そしてゴブリンが一気に千堂に飛びかかろうとした瞬間、首筋に向けて袈裟斬りを振り下ろした。
首の骨を折られたゴブリンは、一撃で倒される。
「千堂も一撃じゃん!おまえらすげえな!」
「君が急所を狙えと言っていたからな。頭が丈夫なら、首の骨を折れば倒せるんじゃないかって思ったんだ」
千堂は先ほどの失態を取り返せたようだ。
そして赤石も俺に話しかけてくる。
「一ノ瀬。お前が言っていたことが何となく分かった」
「そうか!でもまあガンガン行き過ぎて怪我しないようにな」
「ああ」
そんな二人の活躍を見た紫村が、うずうずとしていた。
「次は僕の番だね。僕も負けていられないな」
ヤル気のあることは良いことだ。
紫村の獲物を探して進んでいくと、千堂が再びゴブリンの気配を発見する。
「ちょっと数が多いな。5匹いる。どうしよう?迂回するか?」
「いや、数が多いのは経験を積むチャンスだ。行こう!」
俺の号令によって、五匹のゴブリンがいる方へと向かっていった。
そこには千堂が言う通り、ゴブリンが五匹いた。
「じゃあ俺が二匹相手にするから、後はみんな一人一匹な」
そう言って俺は飛び出す。
背の低いゴブリンをジャンプして飛び越え、三匹の後ろにいた二匹を手に持った鉄の剣で思い切りなぎ倒す。
一振りで一気に二匹の息の根を止めた。
「後は任せた!」
突然仲間を二匹殺されたゴブリンは戸惑っている。
そんなゴブリンに、血気盛んな紫村たちが襲い掛かると、あっという間に一人一匹ずつ倒すのだった。
そして紫村がつぶやいた。
「僕たちの剣術は、レベル2でも十分第三階層で通用する」
その言葉に、千堂と赤石が頷く。
実際に戦ってみて、俺の伝えた、レベル+1階層の探索での早いレベルアップ理論にも納得してくれただろう。
そこでふと気づく。
……あれ?今日は俺がレベリングしてやると言っておきながら、紫村たちはほとんど自分たちの力で戦っていた。こいつらこんなに強いと、俺の出番が無いかもしれん。




