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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第十章 光と影 -Heroes-
159/183

第157話 クアドラ・ストリーム

注:残酷描写があります。苦手な人は注意してください。


「はい、どうもー!クアドラ・ストリームです!今日はアンケートで一番人気だった企画を実際にやっていくぜ!」


 第三階層内に、ダンジョンの中とは思えない不謹慎なテンションの男たちの姿があった。

 中央で先ほどの甲高い声で叫んでいたのは、メッシュの髪に耳にピアスが光る細身の男。首筋の安っぽいタトゥーがイキり感を出している。派手なロゴのプリントされた革ジャン、ジャラジャラしたピアスやネックレスなどのアクセサリー、カーゴパンツには長財布やスマホなどがポケットからはみ出していて、明らかに迷宮の雰囲気のはそぐわない服装をしていた。

 彼の足元には手足を縛られ猿轡を噛まされているゴブリンが横たわっていた。


「今日は数字取りにいくぞ!」


 そう言いながら縛られているゴブリンを足蹴にしたのは、なぜかダンジョンの中なのにサングラスをかけている男。

 そこに腕の筋肉を強調するタンクトップ姿の体格の良い男が、同じように手足を縛った別のゴブリンを担いできて、彼らの足元へと投げ捨てた。

 地面に落ちたゴブリンは、声にならないうめき声をあげる。


「二匹目を捕まえてきた……」


「イエーイ!いいね、生贄ちゃん二号ゲットだぜ!」


 そんな三人に向けてスマホを向けているパーカーのフードをかぶった背の低い痩せた男がいた。

 彼はそのスマホで三人を撮影しているのだ。

 そしてスマホの画面を見ながらつぶやく。 


「今、視聴者数22人……」


 その言葉にメッシュ頭が声を大にして答える。


「おいおい、みんな早く来ないと始まっちまうぜ!もうちょっとだけ待ってるぞ!」


 彼はそう言うと足元のゴブリンの頭を、その厚底スニーカーで踏みつけた。


 彼らは動画配信グループ「クアドラ・ストリーム」

 リーダーはメッシュ頭の男「ベンジー」

 サングラスをかけているのは「クロウ」

 体が大きい脳筋男「ゼロ」

 撮影をしているフードをかぶった男「フード」


 四人はレベル4になったが、第三階層主のホブゴブリン戦で苦戦して停滞していた。そこでさらなる強力な装備を手に入れるためのお金を稼ごうと、こうして日夜配信を行っていた。

 だがなかなか視聴者数が増えない彼らが思いついたのは、過激な撮影内容だった。


「どうだ視聴者数?増えねえか?」


「今25人……」


「チッ。しゃーねーなー。それじゃ今日の企画の説明から行くぜ!」


 視聴者数に納得がいかない様子で、ベンジーは渋々説明を始めた。


「前回の配信で、みんなの見てみたい動画をコメントしてもらった中で、もっとも多かったのが残酷動画、死ぬ寸前のゴブリンの限界を見てみたいだったよな。心臓が弱い奴はすぐに視聴を止めてくれ!そして見てみたいやつ、どんどん集まってくれよな!」


「今30人」


「全然増えねえな。まあ動画が面白けりゃ自然と増えてくるか。じゃあまず耳から削いでいきまーす!クロウ押さえとけ」


「おう!」


 サングラス男がゴブリンを上から押さえつけると、ベンジーは腰からサバイバルナイフを抜いた。

 キラリと光る刀身には、何故か悪趣味な金メッキがほどこされていた。

 彼にとってはこれがカッコいいのだ。

 そして彼は片手でゴブリンの耳を掴むと、そのカッコいいナイフを耳の付け根にあてがった。

 フードがスマホのカメラをゴブリンの後頭部をアップに映す。

 モゴモゴとゴブリンが声にならない悲鳴を上げる。

 そして……、


「はーい!このゴブリンの耳、抽選で視聴者にプレゼントでーす!ギャハハハハ!」


 フードが配信のコメント欄を読み上げる。


「『そんなの要らねえw』、『汚ねえw』、『ウケル』、『こんなんすぐBANされるぞ』」


 最後のコメントにベンジーは答える。


「残念でした。真っ赤な血が出たらさすがにアウトかも知れねーけど、ゴブリンの血は緑色だからセーフでーす!ギャハハハハ!」


「51人」


「おっ!盛り上がってきたか?それじゃこれからどこまでやったら死ぬか順番に検証していくから、決定的瞬間は逃すなよ!」


「こんぶ茶さんからスパチャ5,000円、コメント『いいぞ、もっとやれ!』」


「おっ!こんぶ茶さんアザーッス!リクエスト通りもっとやらせてもらいまっす!ギャハハハハ!」


 ――後に伝説となる、彼らの宴が始まった。

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