第146話 バカに正論は逆効果なのだよ
「誰の許可を得てこんなとこで部活してんだよ!」
そんな毒島の前にハッチーが出ていく。
「いい加減にしろ毒島。第二剣術部として校庭使用許可は出してある」
「あ?調子に乗んなよ八戸!」
ハッチーは第一剣術部時代に毒島の先輩だった。なのに毒島はハッチーを先輩扱いしないどころか、攻撃的な言い方をしてきた。
これには俺も驚いた。
「たかが士族の分際で、貴族に逆らうんじゃねえよ!俺がその気になったら、お前なんかどこにも士官できなくしてやることだってできるんだからな?」
「むぐぐ……」
毒島の言葉にハッチーは言葉を失う。
よく分からんが、士族のハッチーより貴族の毒島の方が偉いらしい。
「よさないか!」
そんな二人の喧嘩に、紫村が仲裁に入った。
「毒島君、士族や貴族だというのは学園内では関係がないはずだ。だとしたら二年生の八戸先輩にそんな口の利き方をするなんて失礼だぞ」
ごもっとも。だがそんな正論が毒島に通じるはずはなかった。
「うるせえド庶民が!そもそもてめえが目障りなんだよ!」
「おいおい、何かすげえイライラしてんな、おまえ?何かあったのか?」
これまでチクチクした嫌がらせをしてきたこいつらだったが、今日はやけに強い口調で来ている。気になった俺は思わず口をはさんだ。何をそんなに怒ってるんだか?
すると横にいた沼部がポロリともらした。
「別に昨日部長に怒られたのとは関係がないからな!」
「こら沼部!余計なことを言うな!」
「あっ、ごめん」
昨日怒られた?部長って第一剣術部の部長……磐座のことだよな?
「昨日磐座に怒られたのか?」
「うん、練習に身が入っていないって……」
「沼部!だから余計なことは言うなって言ってるだろ!」
「あっ、ごめん……」
沼部がバカすぎて分かりやすいな。つまり昨日、自分たちが部活中に怒られた腹いせに、俺たちに八つ当たりをしに来ているってことか。
「それは君たちの問題じゃないか。僕たちに苦情を言うのは筋違いだよ」
紫村が正論を言う。
ああ、やめとけって紫村。
バカに正論は逆効果なのだよ。火に油を注ぐだけだ。
「う、う、うるさいっ!とにかく第二剣術部が校庭で練習するのは目障りだから止めろって言ってるんだ!」
ほらね、逆上した。
空気を読まない紫村は説明を続ける。
「そんなことを言われても、僕たち第二剣術部は第一剣術部と違って立派な道場を持っていない。小さな部室の中では練習できないんだから、仕方がないだろう?それにちゃんと学校に届け出をして、校庭の使用許可をもらっているんだよ」
「そんなことは俺たちには関係がないんだよ!男爵子息の俺様が目障りだと言っているんだ。第一のような優秀な生徒が練習しているならともかく、お前たちのようないくら努力しても弱小なやつらが目に入るのが不快なんだよ!どうしてもやめないというなら、俺様から学園にお前たちを廃部にするよう言ってやるからな!」
「それは横暴だよ!」
はいはい出た出た。貴族様っていうやつ。紫村の大嫌いなやつだ。
どうもA組の高位貴族よりも、B組の落ちこぼれの下位貴族の方が選民思想が強い感じがするなあ。
面倒臭い……。
だが、こういうやつらには言葉じゃなく実力で分からせるしかない。
それじゃ、やりますか。
「待て待て、さっきから聞いてりゃ、俺たちがお前たちより弱いみたいじゃねえか」
「その通りだ。その学年首席様はいつまで経ってもレベル1。優秀な俺たちは既にレベル2。圧倒的に俺たちの方が優れているんだよ」
「いやいや、どう見ても毎日真面目に練習してるレベル1の紫村の方が、レベル2のおまえらより強いだろう?」
「どうしてそんな発想になる?お前の目は腐ってるのか?」
本当ムカつくなこいつ。腐ってるのはお前の根性の方だと思うがね……。
「それじゃおまえら、紫村と試合して優秀なところを証明してくれよ。俺たちがお前たちより弱いって証明してくれたら、俺たち校庭での部活を止めるからさ」
「言ったな!言っておくが俺たち貴族はスキルを持っている。俺の『動体視力強化』も沼部の『剛力』も戦闘スキルであり、迷宮の外でも使えるんだぞ!そこの落ちこぼれの雷魔法とかいう役に立たないハズレ魔法なんかとは違うんだぞ!」
「おう、いいぜ。それじゃ自慢のスキルとやらを使ってみせてくれ」
勝手に話を進める俺に、紫村がささやく。
「一ノ瀬君、僕の雷魔法スキルはまだスキルレベル1。昨日せっかく使い方を教えてもらったけど、スキルレベル2にならないと迷宮の外じゃ使えない……」
不安そうにしている紫村に俺は告げる。
「何言ってんだよ紫村、こんなやつら、お前のスキルを使うほどの敵じゃねえよ。普通にいつもやってる練習の成果を見せてやれよ!」
俺の言葉に、紫村が驚いたように目を見開く。
そして——その目に、闘志が灯った。




