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東京ダンジョン学園  作者: 叢咲ほのを
第九章 遅咲きの雷 -Late Blooming Thunder-
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第132話 紫村キョウヤ3 追い越される焦り

 今日こそレベルアップしたい。

 僕はそんな強い思いを抱いて今日の探索の授業に挑んだ。

 実のところ僕のスコアは既に100を超えている。前回の探索で100.3。ついにレベルが上がるかと思ったが、スキルボードに表示された文字に変わりはなかった。

 僕が伸び悩んでいる間にクラスメイトが次々とレベルアップしてゆく。

 中にはスコアが100に満たない者までレベル2になっていた。そんなクラスメイトを見ていると、羨ましい気持ちと同時に、先を越されて悔しい気持ちがわいてくる。

 中学までは常にトップだった。それが今は、どれだけ努力しても追いつけない。

 入学試験こそ学年主席を取れたが、それ以降は自信喪失する出来事ばかりだ。

 だからと言って諦めるわけにはいかない。成果は地道に積み上げていった結果でしか得られないのだ。努力は嘘をつかない。

 そんな僕の気持ちを汲んでくれたのか、同じパーティーの千堂マモルがスキル「気配察知」を万全に発揮し、いつもよりも多くのスライムを見つけてくれた。


「これで10匹目だな」


 10個目のマジックジェムを拾いながら、討伐数の確認をする。

 スコアは倒した魔物の数をパーティーメンバーの数で割った数値となる。つまり今日の僕のスコアは3.3プラスされる。


「これで僕たちのスコアは103.6だな。個人差があるといっても、そろそろレベルアップできたんじゃないか」


 マモルが笑顔でそう答えた。

 無口な赤石君もマモルの言葉に頷いて同意を示した。

 そろそろ授業終了の時間だ。早く戻ってスキルボードを確認したい。


 先に戻ったクラスメイトの内、数人がレベルアップしたみたいで、歓喜の声が聞こえる。

 その声に取り乱しそうになるが、何とか気持ちを抑える。僕も今日こそレベルアップしているはずだ。

 立ち止まってそんな生徒たちを眺めていた僕を追い越して、マモルが先にスキルボードの元に辿り着いていた。


「キョウヤ、先に確認するぞ」


「あ、ああ」


 マモルがスキルボードへと手を伸ばした。


 ・・・・・・・・

 千堂衛:LV2

 スキル:気配察知

 パーティメンバー:紫村響哉、赤石哲弥

 ・・・・・・・・


「やった!」


 スキルボードに浮かび上がった文字をみたマモルが、思わずガッツポーズをする。

 マモルのレベルが2に上がっていたからだ。


「僕とずっと同じパーティーでやってきたキョウヤも、きっと上がってるな。赤石君は昨日レベル2になってるから、これで僕たち三人も階層主に挑むことができるな」


 マモルが興奮気味に語る。

 赤石君も言葉に出さないが、表情から少し興奮しているのが伝わってきた。


「まだ僕もレベル2に上がったと決まったわけじゃないよ。今から確認するよ」


 僕はそう言いつつ、内心では上がっていてくれ!と強く願いながら手のひらをスキルボードへとかざした。


 ・・・・・・・・

 紫村響哉:LV1

 スキル:雷魔法LV1

 パーティメンバー:千堂衛、赤石哲弥

 ・・・・・・・・


 そこに表示された数字を見た瞬間、胸の内側が冷たくなった。

 喉がひどく乾く。

 周囲の声が遠のいてゆく。

 ……今日もレベルアップできなかったのだ。


「ま、まだ少し個人差があるようだな。キョウヤはたぶん明日かな」


「あ、明日も頑張ろう」


 僕を気遣いながら話すマモルと、言葉少なに僕を励ましてくれる赤石君。

 しかし僕は目の前が真っ暗になるようなショックを受けていた。

 また今日もレベルアップできなかった。

 クラスメイトにどんどん置いて行かれるような気持ちだ。それまで一番前を走っていたつもりの僕がどんどん追い越されていく恐怖を感じていた。

 こんな気持ちは初めてだ。


 僕がスキルボードの前で言葉を失いながら立ち尽くしていると、これから探索の授業が始まるB組の生徒たちが続々と集まってきた。

 そんな集団の中から、僕の姿を見てヤジが飛んできた。


「あれあれあれあれ~?まだレベル1なんですかぁ~学年主席さ~ん?」


「ブフフフ……」


 僕は慌てててスキルボードから離れると、スキルボードの文字が消えた。


「おいおい隠さなくてもいいじゃないか。もう見ちゃったから。レベル1っていう数字をね」


「放っておいてくれ」


 そんなB組生徒の顔を見て思い出す。この二人は灰島君と一緒に僕に襲い掛かってきた仲間だ。

 思わず二人の事をにらみつける。


「僕らはとっくにレベル2になってるけど、まだレベル1なんだ」


「おいおい沼部、本人は気にしてるんだからあんまり言ってやるな」


 背の低い釣り目の生徒は、自分の事を棚に上げて白々しく言う。

 僕は思わず言い訳をしてしまう。


「レベルアップは人によって個人差があるんだから仕方ないだろう。僕だってそのうちレベル2になるよ」


「ハハハ!その間に俺たちはレベル3になっちゃいそうだけどな」


 何を言っても僕の事をバカにした言葉で返してくる。

 そんな二人の相手をする僕にしびれを切らしたマモルが声を掛けてきた、


「行こうキョウヤ」


「あ、ああ……」


 僕たちがその場を去ると、他の生徒がそのB組の二人組を呼ぶ声が聞こえた。


「毒島、沼部。道草してんなよ!行くぞ!」


「ああ、悪い悪い!」


 毒島君と沼部君というのか……。二人の名前は覚えたけれど、もう二度と顔も見たくないと思った。

 確かに僕のレベルアップは遅れている。けれど、今日の悔しさを抱えたまま終わるつもりはない。

 明日こそ取り戻してみせる。

 バカにされた悔しさが、ゆっくりと胸の奥で熱に変わっていくのを感じた。

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