普通の蛇口だと思ったらお湯とかワインとかみかんジュースが出てくるみたいなやつ
決闘者か…ロマンだな。
あの魔道具も、きっと過去の転生者が作ったものなんだろうな。
細部に製作者のこだわりを感じる。
使っている人もノリノリだし、実に良い感じだ。
しかも「決闘開始」と言った途端、ソフィと男の人だけが結界の様なものに包まれた。
あれはまさしく固有結界だな。
固有結界のスキルやマジックアイテムは稀少だが、全くないわけではない。
過去の歴史書などによると、異世界からの勇者エニクソのユニークスキル“ターン制バトル”又は伝説の剣闘士ザンギャルの“2D対戦格闘”といった固有結界が確認されている。
いずれも、相手も自分も独自の縛りの中に置いて戦闘を行うという難易度の高い結界だ。
故に固有結界使いとの戦闘は、いかにその結界のルールを理解して対処するか、又はそのルールをはね除けるだけの力で押し返すかが鍵になってくる。
召喚されたゴブリンが不釣り合いな剣を振り上げて襲いかかる。
先攻で1ターンキルとか…カードの順番も決めちゃってるんじゃないか?
馬鹿め、次に引くカードが何か分からないからこそこのマジックアイテムの良さは光り輝くというのに…
折角のロマン兵器の一番良い部分が台無しだ。
で、そんなロマンのかけらも無い使い方の奴の攻撃なんてするようなら。
パシッ
ほらな、真剣白刃取りで止められてしまった。
ポキン
更に折られてるし。
まぁ、ソフィだからな。
「ソフィ、ダークニードルを待機状態にしてみな。」
「ん…おお!?カードが出て来た!?」
ソフィの手の中にカードが現れた。中味は多分ダークニードル。
「そうゆう事、頑張りなよ~、おっと。」
目の前を刃の切っ先が掠めていった。
一般的な両刃のものではなく、片刃の日本刀のような刀剣だ。
刀の持ち主は追撃はせずに後ろに下がった。
こっちのカウンター水鉄砲に気づいていたのかな?
「…よそ見をしていた割に、動きが良いな。」
「これでも鍛えてるので。まぁ肩書きはFランク冒険者だけど。」
「Fランクがここまでやれるものか!大方ボスの言うとおり競合相手の刺客だろう。こんな子供まで利用するとは情けない奴らめ。」
これまたどこぞの退魔忍みたいなエキゾチックな格好のお姉さんだ。
これまた溢れんばかりのアレがタプタプ揺れてる。
後はその取り巻きが3人程。
他のメンツは今までの間にトランプカッターでパンツ一丁にしたりアクアショット洗濯verで強制脱衣させて退場。
それをかいくぐれたのがこの目の前に居る4人って事だね。
「子どもの癖に胸ばかり見おって、この変態め。この装束はな、わが一族に伝わる由緒正しい戦闘服だ!」
あんな痴女みたいな格好で平気とか、くっ殺系の家系かな?
「あ!お前今失礼な事考えただろ!?」
なんと、読心術も使えるのか、やはり忍者侮り難し。
「お前は絶対に生かして帰さん!行くぞ!」
掛け声と同時に、4人はそれぞれ別々に行動し始める。
退魔忍さんが正面から、ほか二人は左右から、そして最後の一人はその場に残って魔法を詠唱。
「“アースシールド”」
4人の体が半透明の薄茶色のベールに包まれた。
「さっきまでの戦闘から見て、貴様は水魔法しか使えんのだろう!?相手を甘くみたな!」
言いながら刀を振りかぶる。
スピードに乗って胸も揺れる。
そこへトランプを投擲、横っ飛びでかわした所に更に2発3発と追撃を加える。
「フッ!…わっ!?」
「まだまだ行くよ?」
「私だけに集中していて良いのかな?お前の相手は」
「「俺達もいるぞ!」」
「“アースエンチャント”」
両脇に回り込んだ2人が挟み撃ちを仕掛けてきた。
更に後衛が地属性を武器に付加。
良いチームワークだ。
「“ミストボム”」
飛びかかってきた2人の足元から、水蒸気爆発を引き起こし、視界を塞ぐ。
一瞬動きが止まった隙に2人の間をすり抜けて距離をとった。
「おのれ、役に立たない魔法を上手く使いおる。」
まぁミストボムとか攻撃力あんまりないからなぁ。
本当は出力を上げれば天国まで連れてってくれる威力になるんだけど一般的にそんな威力にはならないので今回はパス。
そんな感じで水魔法ってのは全体的に地味なイメージがあって、派手で威力重視なこの世界の魔法使い達には不人気なのだ。
「要は使いようなんだと思うけどね、“アクアショット”」
体制を崩した一人に向かって水弾を飛ばす。
「無駄だ!俺にはアースシールドが…え?」
水弾は男には真っすぐ飛ばず、男の周りを球体状に包み込むように回りだした。
「例えば、シールドに直接当てなければ別の使い方もあるし。今その膜の中の空気を抜いてる所なんだけど、息苦しくなったりしない?」
実際には別に何もしてないけど、そうやって脅しをかけていく
「ぐ、こんなものっ!」
水膜に包まれた男は飛んだりダッシュしたりするが、自分の体が水に触れたり、はみ出したりできずにいる。
「(体を動かしてるから)だんだん息苦しくなってきたんじゃないかな?」
焦って動けば余計に体力を消耗する。水膜に囚われた男の表情がだんだん青くなってきた。
動きも鈍くなっていく。
対魔忍のお姉さんがちょっと焦り始めた。
「おい!ストーンバレットか何かであの水を…おいっ?」
そう、もう後方の魔法使いは無力化してある。
魔法使いは目や鼻や口から汁という汁をダラダラ流しながら咳き込んでいる。
もう一人の男も膝をついてしまった。
ガタガタ震えながら「寒い、寒い。」とつぶやいている。
「お前!こいつらに何をした!?」
「すごいねぇお姉さんは、俺の攻撃を躱しながら味方の心配もできちゃうんだから。」
さっきからトランプを投げ続け、対魔忍のお姉さんを休ませないようにしているので、汗だくになっていしまっている。
「でも残念なお知らせなんだけど、そろそろお姉さんも詰みだよ。さっきからどんどん動きが悪くなっている自覚ある?」
「何!?」
対魔忍お姉さんの足元をアクアショットで掬う。
そのまま倒れ込んでしまった所に、お姉さんの体を縫い付けるようにトランプで固定してやる。
「ハァ…ハァ…そんな、馬鹿な…この程度で疲れてしまうような事など…。」
「お姉さん気付いてる?妙に暑いと思わない?」
「は!?」
「お姉さんの周りだけ、少しずつ温度が高くなっていたんだよ。」
寒いって言ってた人はその逆ね。
水蒸気で熱交換を行って、寒い人と暑い人に分けてみた。
魔法使いの方はいわゆる催涙スプレーみたいな辛味成分入りの霧が目とか口とかに入って可哀相な感じになっている。
昔メイドのアンナから、海辺出身の魔法使いは水魔法の水が海水である事が多かったり、北国の寒い地方出身の水魔法は他の地方のものより温度が低いって事を聞いていた。
おそらくは使用者にとって一番身近な水が出てくるんだろうという予想はついたんだけど、これによって水魔法の幅を広げられると気付いたんだ
つまり水魔法の水の成分とか温度とかを弄って水魔法を行使するのはセーフなんじゃないかな、という事。
セーフかどうかなんて自分ルールの中だけの話だけどね。
まぁ一介のメイドがそこまで知ってるなら、それ位の工夫はみんなするよね?
さてさて、あっちもそろそろ佳境かな?




