黒ローブと忍者
「紹介するわ、こっちが私の本当の護衛よ。大サービスで名前も教えちゃう、レイよ。貴方の名前は?」
「悪党に名乗る名は無い。」
「礼儀というものを知らないみたいね、後で教育してあげる。」
お姉さんは黒ローブの方を一瞥すると、
「レイ、お仕事よ。ちゃんと出来たらご褒美をあげる。殺してもいいけど、できれば生かして捕まえて。」
「はい。」
ご褒美って言ったときに一瞬、黒ローブがピクっと動いたな。
どうゆう事なんだろ?
「“イビルプラント”」
黒ローブが詠唱すると、地属性の大きな魔法陣が地面に浮かび上がり、発光する。
その魔法陣の真ん中から蕗の葉くらいの双葉が出たと思えば、みるみる茎が伸び天井にまで達した。
成長は止まらずに茎のあちこちから蔓が伸び、大きな肉厚の花をつけた。
真っ赤な6枚の花弁の縁には鋭い牙が覗き、その牙の間からダラダラ涎のようなものが垂れている。
滴った雫が床の石畳に当たってジュウジュウ音を立ててる事を見れば、ろくでもないものなんだろうという予想がつく。
花の数は全部で6、忍者を獲物と認識しているかのように、そちらに花弁を向け、ゆらゆら揺れている。
「ほぉ、花を6つも咲かせるか。」
「降参するなら今の内だぞ?五体満足で居たいのならな。」
「それは、私に一筋でも傷をつけてから言うんだな。」
「あいつの頭と胸以外は食っていいぞ、行け。」
黒ローブの言葉を待ちきれないというかの如く、イビルプラントの花が砲弾の如く襲いかかる。
真っ赤な色はまるで血で染め上げたとでも言わんばかりの鮮やかさだ。
それが合計6つ、それぞれが別々の意思を持っているかのように、しかし絡まる事もなく飛びかかって行く。
対する忍者は、先程と同じ様にその場を動かずイビルプラントを迎撃する。
右手の短刀で斬り払い、左手の鉄甲で打払い、足で踏みつけ、しかしそこから動く事はせずに迎撃し続ける。
「その余裕が命取りだっ!」
いつの間にか忍者の後ろに回り込んだ黒ローブが、ナイフを片手に突っ込んで行く。
さっきのおっさんよりも数倍鋭い動き………最近の魔法使いは意外に動けるんだね。
後ろに目でもついているのか、忍者が真上に飛び上がって回避する。
「そこ!」
黒ローブのほうはそれが狙いと言わんばかりに、空いた手の人差し指を上に向けた。
先程忍者が撃ち落とした木の根が再び猛スピードで空中の忍者に襲いかかる。
空中じゃ動きが取れないもんな、良い一手だ。
しかも、忍者が天井を蹴って飛んでも対応出来る様に、イビルプラントが周りを囲む様に配置されている。
忍者の対応は、
飛び上がってそのまま天井を蹴って飛ぶかと思いきや、そのまま天井に足裏が張り付いたかのように立ち、迫りくる木の根を全て斬り払ってしまった。
「………凡庸な発想だな。」
黒ローブが歯噛みする様子が伝わってくる。
「貴様………」
「さっきから視線や殺気で狙いが見え見えだ。相手の背後を突くというのはな、」「こうゆうのを言うんだ。」
声は黒ローブの頭の後ろから聞こえた。
黒ローブは慌てて体を前に投げ出して前転し、そのまま後ろを確認したが、そこには石の棒が立っているだけだった。
気付いた時には、頭の後ろをコツンと小突かれ、
「一回、死んだぞ。」
黒ローブがナイフを真後ろに振るった時には、忍者は既に間合いを離していた。
「お前が気を取られたのは、ただ声を伝えるだけの伝達魔法だ。お前にも使えるだろう、勉強になったな。」
「馬鹿にしやがって。」
黒ローブは再び、イビルプラントをけしかけようとする。
「次は上級編だ。“ミラージュ”」
部屋のあちこちから、薄い岩が何枚も現れた。
更に辺りに霧が立ち込め、視界が悪くなる。
「本物の私を、見つけられるかな?」
薄い岩全てに、忍者の姿が浮かび上がった。
しかも、それぞれの岩のあちこちから忍者の声が響いて来る。
「こんなものっ!」
黒ローブは周りの岩を片っ端からイビルプラントに破壊させていった。
自らも岩を砕きながら慎重に辺りを見回している。
「………さぁ、分身モドキは全部つぶしてやったぞ?どうするつもりだ?」
「2回目。」コツン
黒ローブは物凄い勢いで振り返るが、忍者はもう離れた場所に立っている。
「どうするも何も、私はただその場で寝転んでいただけだ。お前は岩を砕いて遊ぶのに忙しかったみたいだが、もう少し周りを見回した方が良い。」
「………殺す。」
黒ローブは完全にキレちゃったね、目が血走ってるよ。
まぁあんなに馬鹿にされちゃあねぇ。




