バスクの街
「やっと着いた!」
俺とソフィの目の前には隣領であるバスクの街の城壁が見えていた。
ここはロコー領の南西辺りに位置する領だ。
せっかく手に入れた自由な時間だし、一気に向かうのではなく街道を外れてゆったりとキャンプをしながら旅をしていた。
街道を通ると、関所で安くない通行料を取られるし、顔と名前をチェックされてしまう。
俺の顔でバレちゃうかもしれないし、正式に実家で葬式でもやってくれたら大手を振って歩こうというわけ。
そうしたら、そっくりさんで通せるハズ。
というのも、実家とここはあんまり仲が宜しくないのだ。
恐らくは、ロコー家の人間の人相位は出回っていてもおかしくない。
うちは魔族と直接やり合う領地だから、王都との結びつきが強い。
人材も物流も、結構な量が行き来している。
バスク領としてはこれが気に入らない。
だから軍備増強に力を入れていて、ロコー領に度々ちょっかいを掛けてくる。
領地を切り取って魔族と戦えば王都との繋がりも強くなり、領地が潤うとでも思っているんだろう。
何にせよ、だからこそこっちに来たんだ。
ここならロコー領の力が及ばないだろうから。
「それじゃ街に入るかー。」
「おー。」
「ソフィは蜘蛛形態な。」
「えー!?」
「今お金が無いんだよ。我慢してくれ。」
「うー………分かった。」
手の平サイズの蜘蛛に変化して、俺の肩に乗った。
準備完了、とでも言わんばかりにこっちを見ながら前脚を上げてくる。
「よーし、ソフィはしばらく大人しくしててね。」
俺は城門に向かって歩き出した。
城門は割と簡単に通してもらえた。
まぁ関所でお金払ってるのが前提だもんな。
とは言え、魔物や魔族を判別する魔道具も置いてないとは………魔族領と接してないからそうなんかな?
おかげで、いくつも考えた肩乗りソフィの言い訳が全く役に立たなかった。
そんな訳で、早速やって来たのは冒険者ギルド。
ここで冒険者登録を行って、日々の生計を立てるのだ。
勿論目立たず、格好つけず、普通の初心者冒険者として行動していく。
俺は、一旦深呼吸をすると、冒険者ギルドの扉を開けた。
ギルド内部一階は酒場、依頼票を張った掲示板、受付のカウンターなどなど、良く想像するギルドの作りって感じ。
イメージ通りの感じで良かった。
中に入っていくと、酒場のスペースで飲んでいた冒険者達がこちらを見てくる。
恐らくは物珍しいんだろうな。
俺は、お上りさんのようにキョロキョロ辺りを見回しながら『受付』と書かれたカウンターへ向かっていく。
受付には茶髪を後ろにくくった女性が座っていた。
年齢は20位かな?素朴な人好きのする顔立ち。
名札にエミリーと書かれている。
「こんにちは、本日はどのようなご用ですか?」
「えーと、冒険者になりたくて来ました。」
「そうですか………年齢は10才以上という事になっていますけど」
「こんな見た目ですけど、この間10才になりました。」
「ああ、それはすいません。」
まぁね、背が伸びないんだよね。
カルシウムとか積極的にとったほうが良いのか?
「それでは、登録の前に一度テストを受けて頂きます。一番低ランクとなるFランクの依頼を達成して貰います。成功すれば依頼達成のお代もお支払いしますよ。」
「テストってのは実際にお仕事をするって事ですか?てっきり戦闘試験でもやるのかと思いました。」
「この街は冒険者が少ないですからね、一個でも依頼をやって頂きたいのです。」
「分かりました。それじゃあ俺は何をしたら良いのですか?」
「この街を出て、南の草原で薬草を摘んで来て下さい。薬草の見本はこれです。」
そういって受付嬢が見せてくれたのは、10cmくらいのバジルだった。
いや、実際には薬草なのかもしれないけど、どう見てもバジル。
これなら間違える事も無さそうだな。
「この大きさの薬草を最低10本摘んで来て下さい。小さいものはカウントしませんので、ちょっと多めに取ってくると良いですよ。」
「よし、それじゃあ早速………」
出発しようとした所で
「お前みたいなチンチクリンに冒険者ができるわけがねぇだろ!」
ガラの悪い男が声を掛けてきた。
こ、これは………いわゆるテンプレという奴ですか?




