表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NEXUS×NEXT  作者: HS
第1章 目覚める刃と銀の皇女
8/32

第六話「殲滅戦」

突然だけど、魔術学院というのは案外襲撃が多い。魔術師は侵食者討伐の代価として様々な面での優遇を受けているが、これが気に入らない人が居るらしい。それを国は表に出さない。出したら魔術師との軋轢が、今の政権を立ち行かせないからだ。

世界魔術総合運用協定と言っても各国の利害関係が濃密に絡んでおり、非国家組織、たとえばテロ組織の様な者達には効果は無いに等しい。

魔術師は魔術学院卒業後各地に配属される。その過程で生じた魔術師協会は一国の占領が可能な程度には権力を持っている。国際関係上そんな事は出来ないけど。そんな話は置いておいて、ここ剣ヶ丘学園では現在進行形で襲撃が行われていた。





(全く。ついていないなぁ)

襲撃犯がいる学園第二棟B1F第四区画にある駐車場の天井に張り付きながら僕は苦笑する。此処剣ヶ丘学園の地下施設は整備を簡略化する為に配管等が剥き出しになっているので、結構簡単に掴まる事が出来た。とは言っても対弾対爆合金の管なので、そう簡単に傷付く事は無いんだけどね。ここに僕がいる理由は唯一つ、侵入者を殲滅しろと学園から依頼されたから。僕は学園との契約で、有事の際は学園お抱えの警備員(暗殺者)となって敵を殺害する事になっているからだ。

集は置いて来た。リリアとマリアを守ってもらう必要があるからね。それにしても、自分の中でマリアは相当大きい存在になっていた様だ。

「配置を確認する。クロウA〜Gは学園メインコントロールルーム。スパロウA〜Fは職員室。オウルA〜Jはシェルター。クロウH〜O、スパロウG〜L、オウルK〜Sは其々第一、第二、第三棟の制圧だ」

第一は寮、第二は校舎、第三は重要設備棟の事だ。

「リーダー、クロウWはどうした?」

「この学園に潜入させていた筈だが…時間になっても来ない。恐らく敵の手に落ちたのだろう」

クロウWというのは、恐らく先日集が始末した人物…長澤亮太のことだ。名前の情報は集曰く、所持品を漁ったら身分証明書が出て来たとの事だ。

「じゃあ、ここも知られてるって事なんじゃ…」

「いや、それは無い。トラップは起動していないからな」

実際、トラップは強力だった。自動歩哨銃にクレイモア地雷、毒液が塗布してあった赤外線探知式のボウガン。相手を足止めするのに最も適した物を適切な配置で置いていたが、幾ら何でも相手が天井を伝ってくるとは思っても見なかったのだろう。天井にまでセンサーが届いておらず、代わりに前方の探知に特化した設計になっていたので、天井でショートカットして後ろに着地し、離れた所からピックで機関部を貫いて破壊した。地雷は解体して信管を蹴り潰し、自動歩哨銃は機関部をバラバラにして、ボウガンも同じ事をやって処理したので、トラップが無力化されている事に侵入者は気付いていない。

「ふむ…ここまで警備隊は無能では無いだろう。…クロウA。トラップ群を確認して来い」

「OK、ボス」

参ったな。これでは侵入者にバレてしまう。武器は…敵から奪えばいいか。いつものタングステンナイフは仕舞ってあるし。これだけでも全員殺せるだろう。

「よっ…と」

天井から飛び降り、爪先から着地して衝撃を吸収する。

「君は…誰かな?見た所我々の仲間ではないようだが…」

「初めまして。僕は通りすがりの……殺し屋ですよ」

そう言うが早いか僕は手近な男に突進して頭を胴体から引き千切った。首から面白い勢いで血液が噴出する。

「ス…スパロウD!クソッ!攻撃しろ!」

ダダダダダダダダッッッ!!!

降り注ぐM16やSG500、H&K G3の弾幕をさっき頭を引き千切った男の肉の壁でやり過ごす。幸い男は防弾チョッキを着ていたようで、僕の方に弾丸を通さない。素早く僕は男の装備を探る。お誂え向きな事に、オートマグⅢがマガジン四つと共に懐に仕舞ってあったので拝借。と同時に弾幕が途切れる。

どうする…?思考は一瞬で決まった。

オートマグの安全装置が解除されている事を確認して男の影から飛び出し銃撃をする。照準は防弾チョッキを着ている胴体では無く頭。ヘッドショットは避けられる可能性が高いが言ってられない。オートマグの銃弾は奇跡的に侵入者達の頭蓋に命中。結果三人の首から上が弾け飛び、血と脳漿をバッと撒き散らして倒れる。射撃の成果を確認せずに僕は新たな掩体…コンクリート柱に飛び込む。そして二度目の弾幕。リロードが完了したようだ。しかも今度の掩体は無機物のため、敵は全く躊躇せずに撃ってくる。コンクリート柱が壊されるのは時間の問題だろう。方法は一つしか無い。僕は意識を集中させる。

元来、魔術というものは精神に付随する概念的な力である霊力の力で神霊界…アストラル…に影響を及ぼし、物体の意味(概念とも言う)や位置、状態を上書きする物で、その為、ギアの補助が無くともある程度は生身での術式行使が可能だ。

今回僕が使用する魔術は、概念強化。最も基礎的な強化魔術の一つで、炎だったら“燃やす”という概念を強化し、鉄ならば“硬い”という概念を強化する。強化魔術と違うのは、強度と持続時間だ。

強化魔術はその物が持つ情報の密度を底上げするのに対し、概念強化は概念のみを強化する為、水を掛けられれば炎は消えるし、脆い所を突かれれば鉄でも砕ける。また、強化魔術は魔力を対象物に流し続け強化を維持するが、概念強化は、術式の行使時に魔力を全て概念強化に使ってしまい、暫くすると世界から修正を受けて強化が解かれていくのだ。

だけど今は、これで良い。概念強化は魔術の痕跡を残さないので、魔術師だとバレずに済むからだ。

(ーーー概念強化ーーー)

僕は概念強化で銃弾の“貫通する”という概念を強化した。そして、

(ーーー存在探知ーーー)

神霊界に存在する霊力は現実との座標に対応している為、敵の霊力の座標を探知し逆算すれば敵の位置を識る事ができる。この技能は僕にしか出来ないらしく、学園の教師達に話したら随分と驚かれた。

僕は存在探知を使用して敵の位置を探り、コンクリート柱を撃ち抜いて男の上半身を消し飛ばした。貫通の概念強化ではやはり威力過多の様だ。

「何っ?!壁を抜いただと!?」

敵の銃撃が動揺で止まった所をダッシュ。そのまま銃を発射して二人を撃ち殺す。

「撃て、撃て!撃ちまくれ!!」

そこで漸く平静を取り戻したのか弾幕が再開されるが、動揺が抜けきっていないらしく照準がブレブレだ。弾道を把握し隙間に体を飛び込ませて躱しタングステンナイフを抜く。

「クソォッ、ク―――」

手近な男の首を刎ね、腕を掴んで投げ飛ばし一時的な掩体兼目隠しを作り出してジャンプ。投げ飛ばした男のさらに向こう、銃撃手達の中央に着地する。

「なっガハッ!」

かなりガタイのいい男の心臓を突き刺し持ち上げ、コンクリート柱の前にいる比較的細身の奴の方に投げ飛ばす。細身の男は男の重量とコンクリート柱でグチャッと音を立てて潰れた。念の為もう一発オートマグの銃弾を撃ち込んでおく。凄まじい量の血がドクドクと溢れているが気にしない。そして呆然としている別の男の腹に貫手を突き込んだ。

「■★⚪•×÷#@%$#^&*@□■△▷〜!!?」

そのまま内臓を掻き回して腸を掴んで引っ張り出す。意味不明な声を上げてのたうち回る男の頭を、

ゴジャッ

蹴り潰した。体がビクビクと痙攣している男の死体は放っておいて次の獲物を見据える。敵は半狂乱で撃ちまくってくるので照準がバラバラだ。一拍で敵との距離を詰めサマーソルトキック。顎に命中して文字通り脳天までめり込んだ。更に力を入れ頚椎を外して足を振り切る。男は天井に激突してカエルの様にへばり付いた。血がピチャピチャと滴り、僕の足元に少なく無い量の血溜まりを作り出す。

「あ、悪魔…いや。魔物め…!!」

誰かがそう怨嗟の呪詛を撒き散らす。

「別に魔物でも良いさ」

もっと酷い言い方だってされた事がある。魔王、死神などなど…でも、それ以上に、

「お前らがこの世から居なくなるんだったらね」

僕は平穏を守りたくて此処に来た。失いかけた物を、もう二度と取り零さないと決めて来たんだ。その為なら、魔物だろうがなってやる。

「クッ…殺せ、殺せぇっ、殺せェェェッッ!!!」

銃弾が発射される。

敵が殴り掛かってくる。

ナイフが振るわれる。

銃口を見て避ける。

捻り上げて関節を折る。

軌道を見て受け止める。

その流れ作業を淡々と何回も繰り返して暫くすると僕の周りに人は無くなり、代わりに人だった物が幾つも横たわっていた。

取り敢えず警備(と言っても警備とは名ばかりの日本政府御用達の暗殺家業を生業とする一族だ)を呼ぶ。確か彼処の当主は世襲制で、ほんの少し前に当主を交代したばかりの筈だ。新しい当主はまだ17の娘で、殺しも満足に出来ないと聞いているが、本当に大丈夫何だろうか。

ーーーー更科家。

伊賀者、甲賀者と言った乱破・素破に発端を持つ古くから江戸を根城としていた忍者軍団で、江戸幕府を作った徳川家に影で貢献したとも言われている。その後戊辰戦争で江戸幕府側に付き敗北。明治政府より華族待遇を受ける代わりに政敵の暗殺等を請け負い、同様の系譜を持つ者達を集め巨大化。太平洋戦争後、昭和天皇と正式に契約し、名実共に天皇の懐刀。有る意味僕の家系に最も近い立場にいる家だ。最も、僕と織奈は実家を毛嫌いしているので、この事はあまり知られていない。今の僕達の名字である一条は、僕達の本来の家の名を変えた物だから、良く知る人が見たら直ぐに気づかれてしまうだろうけど。

……更科の人達がやって来た。死体を見て吐き気を催しているらしく半数位は口を抑えている。それで良いのかな?戦場では格好の的だ。僕も少し散らかした(殺り過ぎた)とは思うけど集や誠一郎は平然としていられるだろう。大の大人がそれで良いのかとはやはり思うのだが。

「よぉ坊主。随分散らかしたじゃねぇか」

「お久し振りです。雷蔵さん」

更科雷蔵。更科家二十代目の前当主で、僕も少しだけ師事していた事がある。

「相変わらずだなぁ。お前はまだあの娘の事を引き摺っていると見える」

「……自覚してますよ。でも、自覚したってこの生き方はもう変えれない。変えるには、もうこの手は血に汚れ過ぎています」

「儂は別に変えろとは言わん。只お主はお主じゃ。それ以外の何者でも無い。それだけは、良ぉく覚えとけ」

「有り難う御座います、雷蔵さん。僕はこれで失礼します」

そう言ってシェルターの方へ歩き出す。

………僕は、ちゃんと生きれているかな。ーーーー奈々香。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ