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NEXUS×NEXT  作者: HS
第1章 目覚める刃と銀の皇女
6/32

第四話 「楽しい事は大抵長く続かない」

僕、何やってんだろう。

でもそう言った僕は悪くないと思う。何故なら……

「さぁ、見に逝きましょうか?士さん?」

「いや、ちょっと待とうかマリア?」

(僕は男なのに何が悲しくてランジェリーショップに入らないといけないの!?)

これに尽きる。

……あとマリア、行くの字が違う様に思えるのは僕だけかな?確信犯?確信犯ですかそうですか。

「いえいえ士さん?下着売り場としか書いていませんよ?問題なしです」

「違うからね!?幾ら婉曲に表現した所で結局はランジェリーショップだから!問題有り!」

そう言って僕にぐいぐい身体を押し付けてくるから胸が当たってくる。ハイ役得ですありがとうございます。

まぁ裏仕事にはそういった所での仕事も含まれているのでそういう物への耐性はついていると思う。

取り敢えずマリアを押し返す。マリアはわざとらしく「あ〜れ〜」と言う。これがまたあざと可愛い。

「え!?……そ、そんなに褒めても何も出ませんよ?」

どうやら思っていた事を口に出してしまったらしい。マリアはもじもじしながら言葉を紡ぐ。う〜ん、惚れられたな、これ。

模擬戦が終わったあと、僕は身体の制御権を零にいきなり返された。本当にいきなりだった為思わずマリアの身体を落としそうになった位だ。

試合自体は僕の勝ちで終わったけど、わからない事が多すぎて惰性で保健室まで行ってマリアを寝かしてそこで寝てしまったのだが、朝起きたら何故かは知らないがマリアの上で寝ていた。

……襲って無いよ?襲って無いからね?

しかも運の悪い事にマリアの目が覚めてしまった。で第一声が、

「お早う御座います、士さん」

って笑顔で言われたんだよ?その時思い出したけど、マリアってあの時の女の子だったんだね。寝顔がそっくりだった。マリアも思い出していたらしくてそこから猛アピールしてくる様になった。

……以上、回想終了。只それはどうだってよ……いやよくないが、問題はそこではない。問題はクラスの反応だ。マリアめ……授業に復帰した試合六日後の昼休みでマリアはガールズトークの最中に僕がいかに良い人か滔々と語り始めたのだ。

それが集の耳に入り集が僻みやら羨望やら何やらで掻き集めた男共とリアル鬼ごっこをやらされた。僕は神とかは信じないがもし居るのならばこれほど殺したいと思った事は無いだろう。

……いやね?釘バット、チェーンソー、ツルハシ、バール、高枝鋏、鎌、鍬に鋤、挙句の果てに五寸釘と藁人形まで持ち出して追いかけ回されたんだよ?しかも倒しても倒しても立ち上がるし……ゾンビか何かかと真剣に考えた僕は悪くないと思う。

『嫉妬心は時として人類の限界を超越するのですよ』

放っといてくれ、……って言うかラピアいたんだね。

『私とドライバーは霊的パスによって身体感覚レベルで情報を共有していますから』

…………あまりゾッとしない話だった。

結局先生が収拾してこの騒動は終わりを告げ、全校の男子生徒は一日の停学処分になって何故か特別休暇になった。まぁ女子だけでは授業がままならないと判断したんだろう。その休日を利用してマリアは僕をデートに誘った。

……と言うか全部この為の布石だったんじゃ無いか?誘った時のマリアの顔が一瞬だけニコってしたの見たよ?でもその小悪魔スマイルが可愛くてついつい許してしまう。好意を寄せてくれるのは有り難いが、僕に釣り合わないと言うのが正直な感想だ。

昔、と言うか今でもだが、僕は裏仕事をやっていた。護衛、暗殺、殲滅、迎撃等々、いわゆるなんでも屋。マフィアの抗争とかにも顔を出したかな?

その過程で何人も殺した。

何回も殺した。

何通りも殺した。

痛め付けてから殺した。

腕や足を切り取って殺した。

斬殺、刺殺、撲殺、圧殺、縊殺、轢殺、焼殺、射殺、毒殺、絞殺、殴殺。

でも僕は何も感じない人格破綻者だ。なまじ自覚出来ているだけ質が悪い。

そんな異常者と一国の皇女だ。釣り合わないどころかそもそも住む世界が違う人間。誰が見ても傍から見ても解る様な結果だ。

……いや、もしかしたら僕は恐れているのかも知れない。恐れられ、拒絶され、後ろ指をさされるのを。

それでも、もう少し位は、この日々を楽しんでも罰は当たらないだろう。

楽しげに僕の腕を引っ張ってくるマリアの声を聞きながら僕はそう考えた。

しかし、こう言う時に限って楽しい事は続かない。

ウウゥゥゥゥ〜〜!!!

『侵食者の、侵攻準備が、確認されました。よって、非常時警報を、発令します。皆様は、シェルターへの避難を、お願い致します』

低音と高音の混じったサイレンの後、聞き取りやすいように一語づつ区切って話される放送が行われる。

侵食者は馬鹿正直に正面から攻めてくる訳では無い。次元跳躍魔術……所謂テレポートを使って突然現れるが、ご丁寧に必ず次元の歪みが伴って観測される。この一、二分程度のタイムラグを侵攻準備と呼び、この間に人類は防衛体制を整えるのだ。

あれ?マリアが何か始めたなって……

「え?」

マリアの体にファフニールが装着される。

(……えっと?何する気?)

もしかして僕を殺して積年の恨みを晴らしたりするんだろうか。もしそうなら後始末が大変なので滑腔砲で殺して貰いたい。

そんな事を考えて呆然としながらマリアの次の行動を待っていると、マリアは呆れたように話しかけてきた。

「……はぁ、士さん。早くアロンダイトの装着を。私はもうそんなことはしませんよ。貴方になら、私は何だって……って今の無しです!」

本当に、過ぎた女の子だ。僕は苦笑いする。

………来てくれ、ラピア。

『了解しました。……座標指定完了。転移魔術を起動し、緊急装着を実行します』

ラピアの声と共に契約印が輝きながら足元に魔法陣が展開され、そこから溢れ出した光が僕の体を包み、僕の服に接続服についている接続具が出現する。接続服はスーツ部よりも接続具の方が大事で、スーツ部はあくまでも防護の意味合いしか無い。

光は更に肥大し、装甲を形成する。肘から先を自分の手より二回りは大きい機械腕が覆い、それに並行して腿から下に1.5mは有る脚部装甲が装着される。

接続状況良好(コンタクトオーケー)。次の段階へ移行します』

更に胸部プロテクトアーマーが被せられ、接続服の基礎装甲が後ろのウイングスラスターと背部多重関節レールに接続される。続いて基礎装甲の上にショルダーアーマーとウエストサイドスラスターが装着された。

最後にギアウェポンが腕部装甲のアタッチメントに装着され、ギアの展開が終了する。にしても、こんな非常時に何をするのだろう。シェルターへ飛んで行く訳でも有るまいし(と言うか正当な理由以外でのギアの使用は重罪だ)。僕が分からない事を察してくれたのだろう。マリアが溜息をついて説明してくれる。

「ハァ……魔術師には、例え学生であろうとも侵食者の襲撃に対応する義務があるんです」

うん、それは知ってるけど……

「一機だけは無茶だよ?」

侵食者と魔術師の戦力比は凡そ1:4だ。単騎で挑むのは無謀に等しい。

「大丈夫です。これでも単騎での交戦経験はありますから」

そう言って微笑むマリア。確かにハイエンドギアは、エース用に単騎での戦闘に適した調整をされているけど……僕は視界を“あちら”に移す。視た感じ敵は20体以上。幾ら何でも多勢に無勢なんだが、この状況だとそうも言ってられない。僕で何とかするしかない、か。

一応初期魔術は一通り訓練してマスターしてあるので、僕が足手まといになる事は無いだろう。

そうこうしている内に侵食者共が出現してくる。嘗て映像で観たのと何ら変わり無い醜悪で歪なな人形の怪物。生物としての本能が忌避感を発する様な異物が大凡20体程僕等の前に存在していた。……ラピア、今の戦力で切り抜けられる確率はどの位?

『試算を実行中……仮定を僚機撃墜無しとした結果は39%です』

せめてもう一機僚機が欲しいが仕方ない。今ある手札で最大の効果を出すのが戦闘だ。やってみるしかない!

「行くよ。マリア」

「分かりました。士さん」

頼んだよ。ラピア。

『お任せあれ。ドライバー』

僕達は侵食者へ向かって飛翔していく。



「はぁっ!」

マリアの滑腔砲が敵の土手っ腹を貫き、すかさず僕がその敵の首に突きを入れる。

『生命活動停止。敵の撃墜を確認しました』

これで3体目か。

「やりますね、士さん。……次!行きましょう!」

「分かった」

ラピア、オーバーロード、モードブーストの発動準備を。

『了解。充填開始。充填率10…50…充填完了しました』

オーバーロード、GO!

『オーバーロード、起動!』

敵の攻撃をいなしオーバーロードを起動させると、機体の衝撃波軽減用のエネルギーバリアが形成され、世界が唐突にスローモーションになる。オーバーロードの超加速に対応させる為なんだとか。

その加速で一気に接敵して切り裂く。質量武器の威力は振るう速度に影響されやすい為、かなりの速度で加速したアロンダイトの刃は敵の肩を胸辺りまで切り裂き、血が飛沫く。

「ギュィェァアァッッッ!?」

『オーバーロード、タイプアサルト自動起動。霊力充填開始……完了しました』

ありがとうラピア。オーバーロード、起動!

『オーバーロード、起動します』

ギアウェポンが展開しその隙間から光が吹き出す。出力が格段に上がっているのが見ただけでわかる位のそれを回転した遠心力も合わせて叩き込む。

「ギュェ!……」

首を水平に切り飛ばして事切れた敵の手を掴んでマリアが相手をしている敵に投げ飛ばす。通信等は一切していないのにマリアはぶつかって動きが止まった敵を榴弾の様な魔力弾で始末していた。

これで5体目。しかし、

「ハァ……ハァ……」

マリアの疲労が限界の様だ。でもここまで来たらギアの装着状態を保っていられる事の方が異常。流石はハイエンドギアの乗り手なだけはある。僕は霊力量が普通の魔術師の何倍も有るらしいから特に目立った不調は感じられないが、この状況はかなり不味い。ここまで来たらマリアは見捨てていくべきなんだろうけど、

「マリア、行ける?」

「はい!まだまだです!」

つくづく甘くなった物だ。……いや、惚れた弱みかな?

「ギャァァァァ!!!」

飛びかかってくる敵を見据える。ラピア、オーバーロードを。

『霊力充填開始……完了。オーバーロード、起動!』

ラピアの言葉と共に世界がスローモーションに切り替わる。素早く辺りを見回して敵を確認。僕の方に向かってくる敵の数が多いが、マリアの方へ行く敵の方が早くマリアに辿り着く。

……ラピア、オーバーロード、フルブースト。

『了解しました。オーバーロード、最大出力』

フルブースト。一回の行動しか出来ない代わりに通常のオーバーロードより高い能力値を発揮する技を使いマリアに一番近い敵に突進してショルダータックルを決め、敵がふらついた所にマリアが滑腔砲で敵の眉間を貫いたが、それが限界。敵の鋭い岩のような拳が振り下ろされる。……くっ、シールドは!?

「間に合うか……?」

「……全く、大丈夫か?士」

「…………え?」

敵の拳を受け止めていたのは………





学園の退避シェルターで俺は無力を噛み締めていた。士が戦っているのに俺は何も出来ない。そういった無力感が俺を焦燥させる。

……あぁもう、心配だ。よくて停学。悪けりゃ退学だが仕方ない。

「俺はお人好しなんだからな、恨むなよ。士」

俺はクラスの奴に話しかけトイレに行くと嘘を言いシェルターの外に出る。行くのはトイレ等では無くギアの発進施設だ。人っ子一人いない廊下を走り、地下五階のシェルターから一階のカタパルト前のコントロールルームに到着する。バレないよう隠密技術をフル活用し、疎らだが教師をやり過ごしてドア前に到着。鍵は……

「開いている……?」

何かあったのか?いや、考えても何にもならない。俺は懐からナイフを取り出し逆手に持つ。士とお揃いのチタンータングステンカーバイド硬合金製の逸品で、かなりの切れ味がある。そして扉の向こうの気配を探る。一人か……しかも銃持ちだ。相手の力量を把握せず挑むのは愚の骨頂だが、この際四の五の言ってられない。行くぞ……3、2、1。

「せいっ!」

ドアを蹴り破り敵の銃を蹴り落として合気道の要領で地面に叩きつけ腕の関節を無理矢理圧し折る。

「ぐぅぅ……」

激痛を受けてこれだけの悲鳴しか上げない……いい腕だな。

「お前は……誰だ?この学園の生徒か?」

「生徒っちゃ生徒だ。切鬼の彼方。と言えば解るかな?」

この妙に中二臭い名前が俺の裏社会での通り名だ。

「二人の死神の、片割れだと……!ならば、剣神も此処に。死神が高校に通っていると言う噂は本当だったのか」

剣神、と言うのは士の事だ。

「まぁお生憎さま。ご愁傷さまだ。で、何処の依頼で来た?」

「生憎私にも守秘義務と言う物がある。が、君が一つ。私の言うことを聞いてくれたら話そう」

恐らくこの男は死のうとしている。何かは知らないが自分の死を以て償おうとしているのだろう。

「……いいぜ、分かった」

俺は頷いた。話しを聞くという意味と、殺すという意味を込めて。

「私には年の離れた妹が居てな。もう随分と疎遠になるが…妹は来年この学園に入学する。妹を依頼主の襲撃から守って欲しい」

「それは…契約不履行の際の条件か?」

「そうだ。期間は一年。内容は爆弾テロだ」

「なら依頼主は反魔術師集団か。…受けるぜ、やってやる」

「これを……妹に。香里奈に渡してやってくれ」

簡素な便箋。宛名は……見るのは無粋という奴だろう。

「……じゃあな」

そう言って俺はナイフを横に振るった。これから死ぬという事を理解している癖に、穏やかな死に顔だった。男の亡骸に両手を合わせると素早く死体の所持品を探る。バタフライナイフ、クロロホルム入りのハンカチ、Mk-II破片手榴弾、デザートイーグル自動拳銃、C4、ピッキングツール。C4の信管を切って処理し破片手榴弾を解体する。ついでに死体の処理もしておく。そして格納庫のコンソールを操作。出払っていた理由が分かった。

「二箇所同時侵攻か。…このままじゃジリ貧だな」

当然ながら過去に例などないが、前々から十分に危惧されていた事だ。さてと……士は侵食者との戦闘経験などなく、ギアを使った実戦も初めてだ。どうする?今ある装備じゃ碌に戦えない。ギアは使うには格納庫に設定されたパスワードを解かなければならない。

なら……ハッキングするしかない!

コンソールの上を俺の指が踊る。四層のプロテクトの内一層………二層……クッ!

「三層から急に難しくなった……!?いや、誰かが妨害しているのか?」

明らかに意図的に付け加えられた痕がある。しかし、一体誰が?シェルターからのプロテクト干渉は出来なかった筈。ならサーバーの防壁管理システムが出張ってきたか?……違うな。あそこが気づくのはもう少し先のエリアだ。誰が?どうして?そう考えていると三層の解体に成功する。自慢じゃ無いが電子戦と製薬、解体、話術に関して俺は世界の五指に入ると言われている。どんなに硬い防壁だろうが解体してやるさ!

(これで……全四層の解体完了。プログラムを掌握出来た筈だ)

使えるギアは……一機か。とりあえず有ればいい。転送開始。シェルターより深い所にある格納庫からのカタパルト上へ陸戦用ノーマルギア≪ランデア≫が転送され出現する。ギアウェポンは……

「……オイオイ、そりゃ無いぜ」

奇跡的なまでに絶望的な無手だった。……違うな。各所に増加スラスターが設置されているからギアウェポンの容量を圧迫しているんだろう。せめてもの救いは大型クローが搭載されている事か。兎に角搭乗する。システムが起動し、ギア特有の駆動音と共に、『Randea Type-Boost-Test Model』の文字が表示される。

俺の感覚だと、何となくランデアが悲しんでいる様に感じられた。そりゃそうだ。こんなピーキーな改造をされたんだ。まともに扱える使い手なんて居なかっただろう。

でもいい。

「俺に力を貸してくれ。俺はあいつの相棒なんだ」

あいつに相応しい相棒になる為にも、ここで立ち止まっている訳にはいかない。だから!頼む!

『ーーーー応えますーーーー』

(今の声は、一体……って何だ!?)

俺が驚いている間にも、ランデアの装甲が変化していく。

(まさか、これは……)

超化(インフレーション)

ギアは装着者と願いが共鳴した際、強力な力を得る。ギアの発見から20年弱が経過した今でも数十人しかいない奇跡に等しい現象。空間から出現したパーツで肩は大型スラスターに、脚部が接地性を高めた形に変化していく。

「これは……」

腕部装甲にパイルバンカーのような装備が追加され、ギアと視界接続した俺の視界正面に、

≪Gladius spada System All Ready≫

の文字が出現する。

(グラディウススパーダ…剣の中の剣)

己が剣と成ることを望んだギア、か。俺の右手に双剣を模した契約印が出現する。

「ちょいと付き合って貰うぜ。グラディウススパーダ」

『All right. 全ては我が主のままに』

何か声が聞こえた気がした。カタパルトは……動かないな。火薬がないのか。だったら…手榴弾から取り出した爆薬をセットする。

「アクティブ。火炎(ファイア)

火炎を作る単純な初等魔術で火薬を発火。文字通り爆発的な加速でカタパルトを発進する。コンソールで確認した方向である南南東へ機体の進路を向ける。カタパルトで加速を得たので45秒程度で到着する筈だ。

(士は……居たけど、敵が近い……なら、一撃で破壊する!)

今まさに士に攻撃を加えようとしている侵食者に向けて俺は拳をぶち当てた。










集だった。だが、その身に纏っている物がおかしい。少なくともギアなのはわかる。ただその形状が従来を大きく逸脱していた。全体的にゴツゴツしたフォルム。アロンダイトのそれより更に大きい機械腕。何より特徴的なのは、その腕に装着されたパイルバンカーの様な装備だ。

「パイル、ストライク!」

集の言葉と共にパイルバンカーが発射され、敵の拳から胴体までを一気に粉砕し撃墜した。

(何だ?あのバ火力は……)

……って言うか、

「集、そのギアは何処で手に入れたの?」

「え?インフレーションだよ」

ギアは所有者と思いが共鳴した際、超化(インフレーション)を起こす事がある。一番最初に習った事だが、まさかあの明らかに煩悩に心を狂わされているチャラ男が至るなんて……

「集、後で一発殴らせてね?」

「ケッ、そういうのは生きて帰ってから言うんだよ」

まぁ、それもそうか。

「じゃあ少し付き合ってよね、相棒」

「ああ。行くぜ?相棒」

「「死神はいつも貴方のすぐ側に」」

その言葉を皮切りに行動を開始する。

『バレットランチャー、十六連展開。詠唱完了。ファイア!』

基礎魔術の一つ、単純に光弾を放つ魔術だが、余計な特殊効果がついていない分強力だ。この魔術は弾に込めた霊力に威力が比例するので、

ドガガガガガガガ!!

かなりの霊力を込めて放ち敵を掃討しようとする、がやはり装甲が硬い。どれも体の一部が吹っ飛んだだけで致命傷には至っていないが、これで良い。

「オオラァァァァ!!!」

集がその隙を突いて殴り掛かる。恐らく身体強化術式の多重発動で強化されたであろう正拳突きが敵のど真ん中に突き刺さり突き抜ける。八体目だ。

「マリアは僕達の後ろに!長くは持たない。急いで!」

「はい!」

『ギアウェポン、モードチェンジ。オーバーロードタイプブラスト起動、エネルギー充填開始……完了』

ラピアの言葉でギアウェポンの刀身が中央から外に開き180°回転し弓を形づくり、

『フレイムエンチャンティング、レディ』

エネルギーで出来た弦と矢に炎が纏われる。

「士、一発ぶちかませ!」

集が退避して前方が開け、

『照準演算開始…完了しました!』

ラピアによって演算された射線が表示される。

『「ファイア!」』

僕とラピアの掛け声で炎の矢が撃ち出され、敵を四体一気に貫いて空へ消えて行った。戦果は…

『撃墜一体、行動不能二体、戦闘継続困難が一体です』

まぁそこそこかな。そこに突進して来る敵を蹴り飛ばすが、こちらの装甲も傷ついた。叢玉鉄鋼(メイルダイト)と言う魔導超高硬度金属製の装甲が少し削れる。やはり敵の体表は相当に硬いらしい。反動でこちらは地上に落下すると敵は口を開いて光を収束し始める……あれ、やばくない?

『高エネルギー反応確認、威力試算完了。この機体の装甲では五発直撃が限度です』

……やばいね。聞いた話だとロストギアの装甲はノーマル、ハイエンドに比べてかなり硬いのだとか。それを五発で破壊できると言うのだから、あのエネルギー弾がどれ程強力なのか理解できるだろう。僕は心の中で冷や汗を垂らす。どうにか回避する方法は……と考えている内にエネルギー弾が発射される。

(ええい!一か八か、賭けるしか無い!)

瞬時にそう判断した僕は、すぐさまラピアに呼びかける。

(ラピア!肩のサイドスラスターにオーバーロードを!)

『無茶です!ドライバー!』

(いいから早く!間に合わない!)

『ッ……了解、オーバーロード、起動!』

(まず右肩!次に左肩、加速掛けて!)

『ブースト!、アクセル!』

僕の指示に従いサイドスラスターから膨大なエネルギーが吐き出され地表面滑走(サーフェイシング)する機体の軌道を無理矢理曲げていく。

(……次!加速、左肩、右肩、左肩、左肩!!)

『アクセル!ブースト!!』

軌道を強引に変更した事による強烈なGが防護術式を抜けて体をミシミシと軋ませる。…ラピア、僕の体の状況は?

『第七肋骨、上腕骨、大腿骨を損傷、上腕三頭筋、大胸筋、僧帽筋に過負荷、一部断裂が発生。すぐに戦闘行動を中止すべきです!』

まぁそうなんだろう。接続服の中和魔術は起動しているが、如何せん僕が未熟なせいで慣性を受け流し切れていないのだ。

でも痛かろうが負けられない。

(戦闘は終わってないんだ。ラピア、痛覚操作をお願い)

『……はい。痛覚緩和術式の起動完了』

痛みがスッと引く。

(……でも、これじゃあ駄目だ。ーーーーーまだ殺し切れない)

≪ったく、苦戦してるじゃねぇか、士。お前らしくもねぇ≫

そこに、声が聞こえた。この状況で福音となりうる声が。コイツの事は半信半疑だが、ここで僕は何も出来ない以上こいつに頼るしかない。

ーーーー前置きはいい。僕に力を貸してくれ、零。

≪いいぜぇ?ちょっくら仕事してやんよ≫

ーーーーでも、二人を傷つける事は許さないよ。

≪オーケイ。ま、やってやるさ。オレとお前は一心同体だから、死んだら元も子もない。イーブンな取引ってやつだ≫

ーーーー頼んだよ。

その言葉で莫大な力に意識を持って行かれた。





意識が入れ替わる特有の感覚と共にオレに攻撃をしようとして来る木偶人形が視界に入る。

「甘ぇんだよ、木偶がッ!」

即座に自己判断で強化術式を行使。人形の脚を蹴り潰し距離を取る。……おい、ラピアだったか?

『……貴方は誰です』

オレか?オレは一条零。士の相棒。コイツの片割れさ。

『そうですか。改めまして、このギア、アロンダイトの管理疑似人格AIのラピアです。先程は失礼しました』

いいぜ、別に気にしてねぇ。オレは士よか少しばかり荒っぽくなるけど、付き合ってくれよ?

『まあ、ドライバーを死なせたくないのは同感ですし。付き合ってあげます』

クク……面白いねぇ。士に惚れたか?

『な、な…!何を馬鹿な事を!私とドライバーの関係は主従です!その……………たいとか、そんなこと思ってませんからぁ!』

初々しい反応ど〜も。全く、コイツは異様に持てるんだよな。少しはオレに分けてくれたっていいじゃねえか。……なんてバカな考えは置いといて、

「おい彼方!聞こえてるか!?」

「その呼び方と糞生意気な態度は……零か!?」

「士さん?でも何か態度が違うし、その髪色は……?」

……あぁ、そうか。士の髪は白なんだったか。オレは黒なんだよなぁ。

「ま〜あの時以来か。久しぶりだなぁ、お嬢サマ?彼方テメェは後でボコす」

飛び上がり人形の攻撃を避けながら会話する。

「貴方は……まさか二重人格ですか?」

「正解。オレは一条零だ。宜しく頼むぜ、お嬢様」

「お嬢様では有りません。マリアと呼んでください」

「OK。……一発デカイの行くから時間稼ぎ宜しく!」

「了解!」

「分かりました!」

マリアと集は人形を引き付けてくれる。信じてくれて助かるねぇ。



『何をする気ですか?』

これからやるのは何かの片手間にするのが出来ない物だからなぁ。少し時間を稼いで貰うのさ。

「概念統合、術式展開。仮想第五種永久機関、始動。黒永無限(アイン・ソフ)

オレがその言葉を唱えた途端、漆黒を体現したかの様な黒き焔が後から後からオレから溢れ出す。

(いいねぇ。力を感じる!)

オレから溢れる黒い霊力はあっという間にオレの周りを黒一色に侵食した。

『この霊力量は……貴方は何者ですか?!』

オレは一条零。それ以外の何者でも無い。

「さて、フィナーレといこうか!」

オレはギアウェポンを弓に変形させたまま黒い霊力を充填し、

仮想(フィフス・)第五種(ディファインド)永久(パーペチュアル)機関(モーション)逆転側面(アビス・サイド)を抽出……完了。発射(ファイア)

一気にエネルギーを開放し、オレの前方を扇状の漆黒に染め上げた。扇状のエネルギー波が敵に触れた瞬間、

「な……何、だと……!?」

「一体何が起きて……!?」

俺の闇が纏わり付く様にして敵が悶え苦しみ、徐々にその体を黒い粒子に変えていく。

『この現象は……対逆行消滅現象!?確かに、この現象を引き起こすに足る霊力はあった……でも、これはまるで、霊力自体がその現象に最適化されているような……』

ラピアは律儀に解説している。こればっかりは生まれ持った性かねぇ。

(正解だぜ、ラピア。まぁ、オレはその力の担い手じゃねぇんだけどなぁ……)

そうこうしている内にエネルギーの波が前方を総舐めして消え去った。

『敵の殲滅……いえ、消滅を確認しました』

ラピアが震える声で報告する。や〜れやれ。そんなにビビられちゃ悲しいんだけどなぁ。オレは士と一心同体。士が強く思えばオレにもそれが流れんだよ。……え?そりゃ無いぜ士。せっっかくオレがお前の気持ちを代弁してやったんだからさぁ。男なら押し倒してヤッちまえよ。

『な、な、な…何を破廉恥な事を言っているんですか!』

全く、甲斐性無しめ。現時点でも織奈とマリアと蒼香だろ?どんな種馬だよ。とっとと決めろや既成事実作れや阿呆。

『貴方はドライバーとは大違いですね』

そりゃそうだ。オレはオレ。あいつはあいつだ。さて、士。事後処理宜しく〜。

オレはそう心の中で言って意識を手放した。




****




何なんだ……零のアレは………零は一撃で敵を一掃、いや、消滅させた。あれは明らかに霊力と違う、根源的に不吉な物を感じる。一体何だ?……考えても仕方ないか。

「……グラディウススパーダ、展開解除」

取り敢えずグラディウススパーダ…長いからグラディウスで良いか……の展開を解除する。はぁ、いい女に会いたい………なに?!

「何だコレ!?光ってる!?」

グラディウスが唐突に光だすと、女の子がグラディウスのいた所に倒れていた。……えぇ〜?

(確かに女の子と会いたいとは願ったけど……)

そんな事を考えている内に女の子がむくりと起き上がる。

「……初めまして、マイマスター。私はグラディウススパーダの管制人格です。名前は無いのでご自由に名付け下さい」

な……なん、だと……!!

………………………………名前なんてつけられる訳ないだろォォがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

こちとら生涯非リアだぞド畜生め!!!

っと、途中から声に出してしまったらしい。女の子はビクッと体を震わせる。

「あぁ、悪い。しかし名前か……」

いい名前なんて咄嗟に出てくる筈もない。暫く考えて出した名前が、

「……リリア」

「はい?」

「君の名前はリリア。それでいいか?」

「イエス、マスター。個体名称をリリアで登録します」

ぐぁ……何か物凄い罪悪感が………よし、困った時のド○えもん。士の所に行こう!

「ちょっとついてきてくれ。士の所に行く」

「……士と言うのはあの男の事ですか?」

リリアは丁度士を指差す。

「そうだ。俺の信頼できる相棒さ」

「相棒ですか……もしマスターに値する相棒で無ければその時は……」

おお怖、サラッと殺害宣言出したぞ。

「まぁ、そんな事は無いだろ」

士は俺にとって、最高の相棒だからな。






……うわっ!びっくりしたなぁ。にしても、零のあの力は一体………ま、考えても始まらないか。でも、

………これって後始末をする分余計僕に面倒が増えるんだよね。

「………………………………………」

図ったな、零〜!!

……ああもう。面倒すぎるよ。

あっちで騒いでいる幼女と集は放っておこう。そうしよう。僕は何も聞こえない。ギアの意識体だと言っている幼女の言葉なんか聞こえない。

『ドライバー。残念ながら真実です』

だよね。なんでこう、僕の周りは非常識な事ばかりか起こるのだろうか。ラピア、あのギアは?

『機体識別番号057341。ノーマルギアからハイエンドギアへインフレーションした近接特化ギア、グラディウススパーダです』

集と幼女が近寄ってくる。あ、マリアも来たな。マリアはギアを解除して地面に降り立つ。

「貴方がマスターの言っていた一条士ですか。初めまして。私はグラディウススパーダの管制人格。リリアと言います」

抑揚に乏しい、人形の様な声だ。

「リリアっていうのか。宜しくね。僕は一条士。で、こっちが僕のギアの管制人格の……」

『ラピアと申します。以後お見知りおきを』

「直接お会いするのは初めてですね。ラピア姉様」

「「「………姉様???」」」

「ラピア姉様は全てのギアの中で最も年長。いわば私達の始祖であり、私達にとっての憧れなのです」

「へぇ……以外と凄いんだね。ラピア」

いつもは天然ボケが目立つのに。

『以外とは失礼ですね』

「そういえば、ラピアは人間になれるの?」

『なれますよ?只、人間になれるギア自体が希少ですし、外見は所有者の深層意識に大きく左右されますが』

要するに……

「集…お前ロリコンなんだな」

「いや違ぇよ!これはだな!あの……思春期の暴走とか…そんなもんなんだよ!」

しどろもどろにならないでよ。気持ち悪い。逆に肯定しているような物だ。

「彼方さんとのつきあいを真剣に考えた方がいいのでしょうか……」

「そうだね……」

「ストーップ。ストーップ!ちょっと待ていや待ってください。頼むから」

「「「………ぷっ。あはははは!!」」」

僕とマリア、集で笑う。

「帰ろうか、集、マリア」

アロンダイトを解除する。

「はい。帰りましょう。士さん」

「あーあー、てすてす。何故に俺は呼ばれなかったのでしょうか?」

「ロリコンは黙っててよ」

「お〜う。そりゃ酷いぜ士」

四人で笑いながら帰っていく。

……この後、教師達からこってりと絞られるのを忘れたまま。

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